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京都音楽博覧会2023

大規模な夏フェスや年末のフェスなどアグレッシブなフェスからみると、ゆるりとした雰囲気漂う、くるり主催のフェス。
梅小路公園が良い音楽でいっぱいになる日。そして今年は10月8日と9日の2days開催。
(来年も2日間あるかは今年次第なのかな)

音博会場は京都市水族館のお隣。水族館も元気に営業中なのでイルカショーのお時間は音を止める。演者と演者の転換の時間も無音だ。

この音博の空気感が私にとってのフェスの基準値だ。くるりが出演する他のフェスに行くと、うるさすぎると感じてしまう。
本番の演奏も決して爆音ではないので、お子さんも良質の音楽を楽しめるフェスだと思う。

音博の朝の風景。

1日めは、やはり途中から雨が降ってきた。ここ数年雨で泣かされる音博なのだが今年の雨雲も健在だ。
ただ今年は風もなく雷も来ず豪雨でもないので「去年より楽やー」とポジティブなくるりファンのわたしたちだ。雨フェスの耐性ができている。

槇原敬之さんの歌声は全ての聴衆を釘付けにするパワーがある。その上ヒット曲オンパレード、さすが。サービス精神に溢れたプロの歌い手さんの凄さを見せつけられた。
歌唱法も進化しているに違いない。ロングトーンの音程を細かに変化させて聞き慣れた曲でも飽きさせないところ。パワーのある声質が心に響くところ。
昨年から2年連続での出演だが、2度も見ることができてよかったと思えた。

中村佳穂ちゃんはストレートな歌声のまま京都から東京へ向かい、向こうで洗練されたのだろう。
梅小路に凱旋したような高揚感を、語るような叫ぶような歌声から感じることができた。

2日めのオープン前の入場口。

2日めのsumikaは、若いお客さんと一体となって踊りながらノリながら、歌っていた。楽しそうだった。(変拍子があるので曲を知らん私が迂闊に真似しては危険)
ボーカルの彼が最後に天に向けて投げキッスをした。どれだけの涙を乗り越えてきたんだろう。末永く続いてほしいと思ったバンドだ。

Tigran Hamasyan“StandArt”、ティグラン・ハマシヤンはくるりのラジオ番組でちょいちょいかかる。その影響で私もCDを持っていたりする。
ピアノのティグランと、ウッドベース、ドラムのスリーピース編成のインスト。ジャズの即興のようでいて、綿密な計算があるのだろう。超絶すぎてトランス状態になる演奏だった。
考えれば世界の一流のミュージシャンをこんなに近くで、それも京都で観ることができるのだ。ほんと音楽の万国博覧会だと思う。

角野隼斗さんのファンとくるりファンが混在するスタンディングエリアで角野さん(かてぃん)を初めてみた。
グランドピアノとアップライトピアノがセッティングされた。どんなパフォーマンスなのか想像もつかない。
「ききき貴公子…。上品が歩いている…。」
日本にこんな人がいて眼の前で見られるのは不思議な感覚。ほんと万国博覧会(2度め)。

最初はご挨拶のショパン「英雄ポロネーゼ」。ショパンコンクールで弾いていた人を見ているのだ。贅沢ーーー✨
彼自身の作曲の「胎動」も素敵だった。なんせアルペジオ!帰宅してすぐにYouTubeを見た。流麗な曲だ。
私が度肝を抜かれたのが、アップライトピアノの前面の天板をとっぱらって、ハンマー部分やネジを調節しながら演奏している曲だ。
まるでビートを刻むような、ドラムやベースがいるかのような演奏になった。と、両手とも鍵盤にもどって軽快に弾きだし、と思ったら本体のネジを調整してコードを変えている。
わたしら「あれどないなってんねやろ??」と、そんでもって貴公子に魅了された。

最後の曲でおもむろにマイクスタンドが据えられた。まままさか。
かてぃんさん「先週までウイーンにいたんですけれど、そのウイーンで作られたくるりさんのアルバムから一曲。」
かてぃんファンに押され気味だったくるりファンがどよめく。
岸田さんが出てきた。「ジュビリー」。
1番は歌が引き立つようにそっと奏でられるピアノだ。
徐々にジュビリーの歌詞の喜びと悲しみを際立たせた演奏へと進んでいき、アウトロはどこまでもドラマティック。そしてジャズっぽさもあった。控えめなフェンダーでピアノの音をひきたてる。
そう。お互いのピアノとギターが引き立てあっているのだ。なんとも音博スピリット満載な、なんてきらめきのある「ジュビリー」なんだ。
演奏終わり、どちらのファンも感嘆のため息をもらすのだった。
翌日、カティンさんのチャンネル登録とSpotifyフォロ―をすませたのは言うまでもない。

日が落ちたあとの映像はなんだかせつないんだぜ。

くるり主催なので1日めと2日めのラストは当然くるり。2日めは雨も降らず心の底から楽しむことができた。
雷雨のせいでフェスの最後だけ打ち切られた年もあった。主催者が演奏できないなんて双方ともつらすぎる。ただ大雨の公園のど真ん中で雷がビカビカ光っているのは確かに怖かった。仕方がなかったとはいえ。
去年はレインコートに打ち付ける雨音がうるさいほどの豪雨の中、くるりの演奏を聴いていた。修行というか苦行。
今年はきっと極楽なのだろう。苦行を乗り越えた音博の猛者たちは浮かばれた。

『感覚は道標』という新譜が発売されたばかりなので、もちろんそこからも演奏された。「In Your Life」「California Coconuts」。
特に「California Coconuts」よ。「君の夢叶えるため歌う。一緒に歌おう」というメッセージは何度聴いても泣けるし勇気をもらえる。
本人たちは「一筆書きでできた曲だ」という。音源化されているが「未完成」だという。ここからツアーにかけてどんな変化を見ることができるのか、楽しみができた。

アルバムラストの「aleha」はワルツの拍子でゆったり進行する。まるで音博のコンセプトみたいだなと思いながら聴いていた。
「California Coconuts」で暖かい南の島にいた語り手が「aleha」で更に上空を舞い始めたような、浮遊感と霧散していく意識が切ない歌詞。
「あれは…」と歌ったままアウトロへと流れていく着地しない感じ。たゆたう波の音に胸を掴まれたまま終わる曲なのだ。

「世界はこのまま変わらない」はなんと踊れる曲だった。前の方で狂い踊りしていたのはわたしだ。こちらもライブを重ねるごとに進化、深化しそうな面白い曲だと思う。

『感覚は道標』のツアーは12月だが、その前哨戦としても楽しめたラインナップだった。もちろんくるりが初見の観客のための「ばらの花」もしっかりと歌う。そして2日めのオーラスは「宿はなし」。この曲を聴くと「今年の夏も終わったんだな」と毎年思う。

この大規模なフェスを毎年開催するのはきっと本当に大変なんだとおもう。あっという間に次のブッキングを始める必要があるのだろう。観客は楽しんでおしまいだが、今年は運営側のご苦労を考えながら楽しませていただいた。
来年も梅小路公園で音博が開催できますように。祈っている。

「皆様、来年も梅小路公園でお会いしましょう!」


音博カラーの京都タワー。

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