未収金を失敗せずに回収していく方法
2018年6月25日著
入る予定の顧客から売掛金の入金がない!!あるいは、個人間で貸したお金の返済日に入金がされてない!!困りますよね?個人の貸し借りでも困りますが、ビジネス取引だと、支払いなどを抱えたままに入金がないと額が大きいほど経営や資金繰りにダメージを与えます。実は、私も恥ずかしながら自営業を長くやっていますので、何度か経験しました。その中で、150万円の未回収金を147万円まで回収したお話をしていきます。とはいえ、私は弁護士ではないので、民間のテクニックという話です。
(1)準備する物と心掛け
まず、入金がない場合は先方に連絡を取るのが基本です。単なる伝票が回っていないミスなどもあります。ここで、解決するなら問題はないのですが、理解不可能な「はぐらかし」などがあった場合は、一気に黄色信号が点滅します。赤信号になる前に
「今から、お伺いします。」
間髪入れない詰め方も大事です。ノソノソしていて良いことはありません。当初からの支払い期日ですから、「入金がない事でこちらもトラブルになっている」と、1vs1の関係でなく、その後ろにも多くの人に迷惑がかかっているというプレッシャーを与えて、即座に動きましょう。ただ心構えは、
決して相手を追い込まない!我々は同じ船にいる!
こういう考え方を対応する全員に浸透させます。(説明は2章)
「えっ」と思う方もいるかも知れません。「相手が払えないなら、ナニワ金融道や闇金ウシジマ君みたいにやらないと、逃げられるのでは?」「逃げられる前に取り押さえろ」と考える人もいるでしょう。
しかし、現実は相手を追い込むと失敗するでしょう。債権者はあなただけでない可能性もあります。
もちろん黙ったままの人より、ヤイヤイ五月蝿い人の方が「黙って欲しい一心」で先に順番が回ることもあります。しかし、相手を追い込むと金の切れ目が縁の切れ目ではないですが、心の関係はなくなり相手の誠意もなくなるでしょう。
(2)冷静な分析と計画を共同制作
とにかく、未払いが起こったら、相手の決裁権のある人と膝を付き合わせて話すしかありません。場合により、先方の社員には未払いが内緒になっているケースだってあるのに相手の会社に乗り込んで社員に聞こえるように督促をするのはよくありません。相手の決裁者と連絡をとり、落ち着いて話が出来るようにセッティングします。
ここで、相手に嘘がないか、どこまで喋ることが出来るか、真贋見極めながら以下を分析していきます。
(A)支払う資金はある 支払い意思がない
(B)支払う資金がない 支払い意思はある
(C)支払う資金がない 支払い意思もない
どれも厄介なケースです。 (^_^;ゞ
まず、(A)のケース、信頼関係があり良好な取引をしていてこういう事は起こりません。何かしらのトラブル、あるいは相手に与えた不快感や問題が起因している可能性があります。先方が大きい会社の場合は、先方の上司、マネジメントなど巻き込んでビジネスライクに話をできますが(力関係の押し込みというのもあるでしょうが)、厄介なのは相手も小規模な場合で決裁者との間で揉めてしまった場合です。
人間は感情の動物ですので、理屈がどう、どちらが正論とかは関係なく
「お前には払いたくないから払わん!」
なんて事になったらどうしようもないです。自社が上司など動員し、担当変更をして、こちらもビジネスライクに話を解決出来るならいいのですが、自社の方も小規模だった場合は、子供の喧嘩みたいな感じから大きなトラブルに発展しているという例も耳にします。
判断は、この相手を失うことで抱えているリスク、揉めている金額、よくない結果になった時の二次被害など冷静に分析して、回収に行くか、諦めるかまず考えます。回収するとなった場合は、喧嘩をするのか、第三者を巻き込んで火消し調停を頼むのか。ただ、喧嘩をして良い事なんてありません、相手を言い負かしても何も残らなく、相手にストレスを与えるだけです。「損して徳を取れ」でないですが、意固地にならず、現実的に妥協できる点は妥協して話をまとめるのが良いでしょう。仮に自分達に全く瑕疵はなく、自社の威厳としても引けないってところでも、相手だって引けないと思っている可能性もあります。トラブルになるケースでどちらかが一方的に悪いって事は少ないです。見解や立場の相違もあるのですから、相手の立場で考えて折れるところは折れるのが交渉です。感情論などになってしまった場合は、難しいのですが、人間というのは沢山の冷静な人の中に混じって一人だけ怒号をあげてカンシャクを起こすのは恥ずかしいと思うものです。(厚顔無恥な人もいますが)。それに、誰だって「自分は辛い思いをしているんだ、間違っていないんだ」と認めて貰いたいものです。あなたがそうなら、相手もそうです。相手の立場もおもんばかって、コミュニケーションミス(ほとんどはこれが起因します)は、丁寧に、冷静に、もつれをほどいて、「握手をすることで矛を収めましょう」という事にするのが大人の人付き合いです。
次に(B)と(C)のケース。「無い袖は振れん」というケースです。(B)の場合は真っ当なモラルを持っていますから、まだ可能性がありますが、(C)になると厄介です。この場合は、
決して相手を追い込まない!
大事なので二度目のフレーズです。例が無いとわかりにくいので、架空の設定で説明していきます。
N社、D社、U社という三つの会社が、NK社という得意先の売掛金が未払いというトラブルに見舞われました。社内では、「とんでもない奴らだ」という非難も飛び交いますが、とにかく相手と話をしない事には始まりません。当初未払いのNK社からは、はぐらかし、理不尽な言いがかりなど攻撃的とも言える態度が見受けられました。
ここで、感情にまかせて喧嘩するのはいけません。調査の結果、どうも資金繰りが悪化して支払い能力が無いという情報は得ました。U社は大きな会社でビジネスライクな社風ですので、「支払えないなら然るべき処置を取る」と高圧的な態度で返答しました。N社も習ってプレッシャーをかけました。「払わないなら、もう商品は卸さない」。まあ、正論です。
当然NK社としては、圧力をかけられて経営も厳しい事になります。NK社の社長は気持ちもイライラが募り、悩みやストレスも蓄積しています。
ここで一つ大事な質問をします。
お金を貸した人と借りた人、強いのはどっちでしょうか?
貸した人の方が権利があって強い立場と思う人もいるでしょう。しかし現実は、
借りた側が強いのです。
「そんなもん知らん!」とやられたら「お願いですから払ってください」と泣きつくのは債権者です。
ここで以前から深い付き合いをしていたD社は、NK社の立場を組んで融和的な提案をしました。
D社は、NK社が潰れられても困る立場でした。それも相まってNK社の苦しい現状の中で
どうすれば、持ちこたえ立て直せるか
を一緒に考えました。NK社の借金の返済計画をリスケジュールし、厳しい資金繰りにプレッシャーをかけないで、なんとか持ちこたえるよう支える意思を示しました。
困った時はお互い様
そういう義理人情の精神で、NK社のストレスを軽減し、
時間を提供しますから、頑張ってください
と猶予を与えました。U社やN社は、「ちょっと甘いのでないか?結局は資金が底をつく前に社長は逃げて取りっぱぐれになるのでは?平気で嘘をつく相手だぞ?」と考えました。少しでも今取れるものは回収していかないと。正論と言えば正論かもですが、かと言って無断で入れた製品を持ち出したら窃盗罪です。
ここで、冷静に鏡を見つめて考えてみてください。
もし、自分が借金まみれで取り立て屋の電話に毎日追い込まれていたら…。そこで何が欲しいですか?
しばしの安息が欲しいのではないですか?相手のことを考えてください。
人間関係は北風と太陽
太陽政策は甘やかして騙されてお金だけ取られたと批判が多いですが、だったら北風だけ浴びせてみんながうまく回ったのでしょうか?
困っている人間にプレッシャーを与えることは、相手に過分な負荷を与えます。窮鼠猫を嚙むです。
もう知らない
と言われたら債権者はお終いです。粘り強く、時に電話を無視され、時に約束を破られ、嘘で誤魔化されても、時間をかけても交渉するのがビジネスなのです。
相手が支払える返済計画を、相手の視点で提案
しなければいけないのです。じれったいですが急がば回れです。
(3)プレッシャーとサポート
時間的な猶予を提案したD社ですが、甘やかしてしまえば、「ごめん、金の工面できなかった」の繰り返しで、何も進展しない事になります。ですのでD社は、こまめにNK社に電話を入れました。「状況はいかがですか?資金繰りはなんとかなりそうですか?お体やお気持ちに無理はないですか?」この細やかな連絡は、意外と効くのですが、ここで「いつ、払うんだ(怒)!」みたいな電話になると、そもそも電話に出て貰えなくなります。大事なのは、債務者と気持ちが繋がり、なんとかお互いにやっていこうという関係を保つ事なのです。
考えてみてください。「払え!払え!」とプレッシャーを与える人と、「一緒に頑張りましょう」という人。「払え!」という人はストレスとプレッシャーしか与えていません。そのプレッシャーを逃れる為に払うという方法もあるのかも知れませんが、逃げてプレッシャーから逃れるという方法もあります。
でも、人間は、手元に残ったわずかなお金で、なんとか迷惑を掛けた人に償いたいと考えた場合、結局は
あなただけにはお支払いします!
となるのは、苦しい気持ちを汲み取って支える姿勢、誠意を見せてくれた同志です。なんとか義理を果たしたいと思うものです。人間不名誉な看板を背負ったまま生きていきたくないです。
しかし、
本当にお金が尽きてしまった!
なんてなると、支えている人も、「ごめんね、良い人だったけど」で終わります。
NK社はD社のコンタクトを受けますが、N社、U社の連絡は無視をしていました。いよいよ、NK社は危険だぞという噂も出てきた時、N社は、動きました。「納品した製品をメンテナンスするので、一旦引き取ります。」ただ、こういう要求は、一方的にできるものではありません。納入した製品を持って行かれるとNK社の事業が立ち行かなくなるなら、大問題です。NK社を地獄に突き落とす要求とも取られます。まあ貸し剝がしみたいなものです。なのでN社もNK社が行き詰まらないように、資産価値の劣る代替え機を納入する事で、価値の高い製品をメンテナンス名目で引き取る許諾を取り付けました。そうやって、トラブルには担保をしっかり確保していく事は大事です。
ただ甘やかすのは失策です。
相手への配慮を持ち、しかし、したたかにリスク軽減する。
そういうバランス感覚が大事です。
いよいよ払えなくなったNK社は、全てをはぐらかして雲隠れしようかという状況になってきました。ビジネスライクなU社は、警告として、「支払いを滞るなら、貴社の得意先のC社、R社の債権に手を回す」と通達しました。 NK社としては、ジリ貧の状況で得意先のC社、R社から三行半を突きつけられるとお終いです。相当なプレッシャーになります。この苦しみから逃れる為になんとかしなければと奔走します。
C社、R社から見捨てられないように画策します。
苦境から逃げる相手にはプレッシャーを与え戻さないといけません。
資金繰に苦労しているNK社もなんとか得意先のC社やR社の支援である程度の資金が確保できました。この資金を五月蝿い取り立て屋のU社やN社に支払いますか?あなたがNK社の社長ならどうしますか?
まず、自社の立て直しですよね。なんとか核になる社員に給与を支払い引き止めて、なんとか自社の強みを活かして売り上げをあげたいと思いますよね?考えてください。ここでN社やU社は苦しんでいるNK社の敵でしょうか?味方でしょうか?
人間最後は自分が可愛いのです。自分が苦しんでも他人に尽くすなんてのは、あんまりないです。だから、その苦しい状況を共にすれば、
裏切るのは忍びない
という感情が起こります。人間は感情の動物なのです。最後に頼るのは誰か?もちろん、自分を貶める債権者ではないですよね?
この人は裏切れない
もちろん、そこまで深い関係なら、苦しむ友に「無理をするな」と言うでしょう。でも、本当に最後わずかなお金になって、再建も厳しいとなった時に、残ったお金を誰に払いますか?
最後は、「仲間」に託すのではないですか?時に妻だったり、息子だったり。「仲間」に違いはないです。
結局は人と人の契約 なのです。甘えさせない圧力も大事ですが、自己利益、身勝手な自社のみのリスク管理に走ると相手にストレスを与え、最終的には、債務者の敵になってしまうのです。
敵にお金を払いますか?
だから、プレッシャーは、相手が逃げている時は、苦境に立ち向かって貰うために必要ではあっても、自社のリスクに頭が一杯で、相手への配慮なくプレッシャーしか与えていないのは良くないです。
私はあなたの敵ではない
と伝えないと、始まらないのです。
最後は、相手の資金繰りになるでしょうが、「共に苦境を乗り越えよう」という債権者に
どうして不義ができますか?
人生は長いのです。ここで支えてくれたなら、いつか、なんとか応えたいと思うのが正常な人間の心理です。会社が沈みかけて社員達は一気に自分の生活の危機感から離散していく中で、「社長、僕は会社を支えます。一緒に頑張りますよっ!」と言ってくれる社員を裏切りたくはないです。孤独に借金と戦うのは厳しいですが、仲間がいてくれれば頑張れるものです。様々な裏事情で、騙したり裏切ったりしなければいけない状況に陥ったとしても、思い悩むものです。支えてくれた友を裏切りたくないと。
最終的には
損して徳をとれ
みたいな話ですが、嘘みたいですが、
親身につくせば返ってきました!
もちろん、実際は腰の引けた相手を甘やかすような事だけにはならなかったです。 逃げる相手にプレッシャーを与えないといけないシーンもありました。
なぜ、私が、甘っちょろい性善説の友情物語などを長々と書き綴ったかと言いますと、
未払いの事件が起こると人は自分のリスクで一杯になる
目の前の入ってこないお金に苛立ち、不安になり、焦り、その精神状態が、不本意だったとしても
相手の立て直しを忘れ、厳しく当たってしまいがちになるのです。
ドライに取り立て屋に債権を流して、決算書の帳尻を合わせるのも方法です。でも、相手だっていろんな中で考えて、生き延びようとしているんです。
だから、そこに手を差し伸べる事で、共存もできるし、一度破産しても返り咲く時に頼りになるかもしれません。
相手の事を考え、決して集金マシーンにならない!
しかし、
油断せず、逃げる相手を甘やかさず、連絡は絶やさない!
それが結論です。
偉そうに論議をぶってますが、そんな私も実のところはアホウでして
こちらの本を読んで開眼したまでです。
もっと詳しく知りたい人は、本を読んでください。