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菊とスターチス

最近よく、子どもの頃のことを思い出す。

仕事で関わったとある入学式で、お祝いの花を貰った。
白と紫で統一されたスタンド花は、ばらしてみると、バラ、ユリ、菊、スターチス等で構成されていた。

来賓や学生が持ち帰れるように、新聞紙に包んでいく。

何種類も入れて大きな花束にしたり、数本をまとめた小さい花束だったり、人によって色々個性があった。

私も持ち帰ってよい、とのことで、自分が欲しい花を束にした。

まだつぼみのユリやら、バラやらがいいかなと思っていたが、菊の香りが急に立ち込めて来て、数束手に取った。

朝、がらんがらんと、表の用水路の上にある鉄板を踏む音がしたら、それは祖父が訪れた音だった。、がらんがらんと、表の用水路の上にある鉄板を踏む音がしたら、それは祖父が訪れた音だった。

一輪車で運んできた蜜柑やら葱やらをおいて、ガレージの前に、「100円」と書いた紙を貼っておく。品物は季節ごとに変わる。
その中に、菊とスターチスがあった。

冷たい水に手を浸し、束にして藁で縛っていく。朝の凛とした空気と菊の匂い、がらんがらんの音と、祖父のしわがれた声が、冬の朝だった。

菊の白に、紫はスターチスを合わせることにした。
入学式の花で、スターチスが出てくるなんて珍しいな、と思った。花束の中にまぎれているのも初めて見たかもしれない。

スターチスは、私が初めて自分で調べ覚えた花の名前だった。
初めに見たときは、菊やバラのようにふわっとした花弁がなく、地味な花だなと思った。「スターチス」という語感が聴きなれなくて、ずっと引っかかっていた。
調べると、ドライフラワーに向いている花なのだそうだ。

いつの頃か忘れたが、度々、祖父の家を尋ねると、鉢に植わった菊がずらっと並べられていた。
スターチスも菊同様、藁に縛られてバケツに入れられていた。

「菊もせやけど、前に一番ここのスターチスが綺麗やって言ってもらったわ!」
と自慢げに祖父が話していた景色が思い浮かぶ。

自分から農地を興し、育て上げた自負が、いつも滲み出ているような人だった。

54年経ったら、私もそんな風に言えているだろうか?

持って帰った花束が、生気を漂わせながらデスクトップの横で佇んでいる。
枯れるまで。

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