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ゲーム音楽DJが語る、知られざるナムコアレンジの世界

こんにちは。ゲーム音楽DJのすいそです。

前回に引き続き、「ゲーム音楽のテーマではあまり取り上げられていないような曲や旬な曲を中心に流しつつ、みんなで聴きながらくっちゃべる会」を身内とやった時の再生リストを振り返りながら、ゆるめに曲紹介をしていこうと思います。

今回はナムコアレンジ特集です。ゲーム音楽好きにとっては「ビデオ・ゲーム・グラフィティ」や『太鼓の達人』での各アレンジなんかが有名かと思いますが、今回は敢えてそこを外し、改めてこの場で語りたい6曲をセレクトしました。「こんなのあったんだ」という出会いの一助になればうれしいです。

Pac Man Fever / Buckner & Garcia / Pac Man Fever

『パックマン』の誕生が1980年。この曲は1981年末にリリースされ、全米チャート9位のヒットを記録しています。あの馴染み深いスタートジングルに始まり、ドットイート音やゴーストがイジケた時の音などがサンプリングで使われているディスコロックンロールです。細野晴臣「ビデオ・ゲーム・ミュージック」が1984年なので、それよりもずっと前にアメリカではポピュラーミュージックにナムコのゲーム音が登場していたことになります。タイトル通り『パックマン』に熱狂するプレイヤーの歌ですが、歌詞には敵キャラやアイテムの名前、ルート取りの話まで出てきて、かなりゲームプレイの詳細を歌っているんですよね。なのでなんとなく『パックマン』が流行っている世の中を歌にしているとかではなく、本当に夢中になってプレイしたことのある人物の視点なんです。しかもこの曲がポップスとして大ヒットしたということは、彼らが特別ガチ勢だったというより、『パックマン』プレイヤーが世の中に溢れかえってたということになるわけです。はあ、いい世の中すぎますね。

PAC-MAN NEVA PAX!! / sasakure.UK / JOIN THE PAC - PAC-MAN 40th ANNIVERSARY ALBUM

続いて『パックマン』40周年企画盤から。大枠的なジャンルとしてはエレクトロスウィングになるのでしょうか。ウネウネしたシンセベースや管楽器系の音色も入っていてファンクっぽい味付けも感じます(それにしてはテッキーすぎますが)。『パックマン』らしい音やフレーズが緻密に散りばめられていて、子供騙しゼロのオモチャ箱のような、大人のお子様ランチのような、そんな印象の曲です。ちなみにsasakure.UKさんはこの翌年(2021年)にkousさんと組んで『パックマン』のフィギュアシリーズのプロモーション楽曲も手掛けているのですが、そっちはMVのみの展開なんですよね。いつかどこかで音源がリリースされることを願っています。ところで、このCDには前述の「Pac Man Fever」リミックスも収録されていまして。どうも80年代当時からナムコ公認だったという話は見つからないのですが、どのタイミングで「Pac Man Fever」はナムコ公式(公認)になったんでしょうね。この歴史を追っかけるだけでひと語りできそうなので有識者の方お願いします(丸投げ)。

GO MY WAY!! (『ワンダーモモ』ファミソン8BIT MIX) / 高槻やよい、双海亜美・真美 / ファミソン8BIT☆アイドルマスター 01 高槻やよい & 双海亜美・真美

お次は2008年頃に5pbブランドで展開していた「ファミソン8BIT」シリーズから。ナムコのゲーム音楽を軸にしたトラックに載せて『アイマス』の曲を歌うという、マッシュアップのようなコンセプトの楽曲がメインで収録されています。どの曲も、モチーフとなるゲームの世界観、アイドルたちのキャラクター性、歌われているテーマ、そしてキーとなるフレーズや曲の構成・展開といった音楽的要素まで、これ以外正解がないと思えるほどの高い完成度で調和されていて、このシリーズは本当に名プロデュース名企画の名盤だと思ってます。元ネタとなったナムコゲーと『アイマス』の両方を知っていれば知っているほど楽しめるのはもちろん、両者を繋ぐ架け橋としてもすばらしいコラボ。自分にはかなりぶっ刺さったのですが、ナムコゲーファン、『アイマス』ファンそれぞれにとっては実際どんな風に響いたのかが気になります。というわけで今回は比較的両サイドにとってフックが強めと思しきこの曲を選んでみました。個人的な趣味でいうと真と雪歩の「First Stage (『ゼビウス』ファミソン8BIT MIX)」が最推しです。

Youkai Douchuki / 細江慎治 / テクニクビート サウンドトラック

Sampling Masters MEGAこと元ナムコ・細江さんの『妖怪道中記』アレンジというだけで垂涎モノなんですが、それ以上にジョビジョバなのがこのYMO愛に溢れたアレンジですよ。バッキングがどっからどう聞いても1980年・武道館でのライブアクト版「THE END OF ASIA」のそれです。細江さんといえばOMYというパロディーバンドを組んでいたくらいのYMOフリークなわけで、全力で好きなことやりつつ最大のリスペクトを込めて作っている感じなんですよね。たまらんです。冒頭でも「ビデオ・ゲーム・ミュージック」の名前を出しましたが、YMOとゲーム音楽(とりわけナムコサウンド)をとりまく関係は本当に興味深いです。さて、そんなテーマを振りつつ次の曲へ。

千のナイフと妖怪道中記 / SAKEROCK / ホニャララ

タイトルそのままです。こんなところでもYMOとナムコサウンドの接近がありました。そもそも『妖怪道中記』のサウンドがYMOを意識して作られていたことを実証するひとつの具象として、この流れでメンションしておきたい楽曲ではあったのですが、前述の細江さんアレンジ同様、ユーモアとリスペクト全開で作られているのがもう最高ですよね。星野源さんが趣味というか遊び心で作った曲のようで、ニヤニヤしながらマリンバを叩いている姿を勝手に想像してニヤニヤしてしまいます。今やものすごい影響力のある大スターなので、星野源さんから入ってナムコゲーファンになった方とかもきっといるんじゃないかなあ、いてほしいなあ、なんて思ったりしています。ちょっとさっきから妄想がキモいなという自覚はあります。

ORDYNE ROUND1 : Orland Remix / Orland / HIGH SCORE GIRL Vol.5 Special Limited Edition NAMCO Arranged Music Album

最後はこちら。押切蓮介先生の漫画『ハイスコアガール』の単行本限定版に付属していたアレンジCDから。日本のアーケードゲームシーンを描いたコミックスの特典CDで、スクエニが企画してMijk Van DijkやらHardfloorやらドイツのテクノミュージシャンを集めてド渋いナムコクラシックアレンジをやらせるという、もうこの無茶苦茶な状況だけでクラクラするんですが、それはそれとして、今回スポットを当てたいイチオシはこの『オーダイン』です。Orlandという名古屋出身のシンセバンド(マジでどういう繫がりなのこれ、座組といいサウンドプロデュースといい、徹頭徹尾どうなってんのこのCD)によるアレンジなんですが、まさかのシティポップですよ。あの『オーダイン』のフレーズをこんなアーバンでメロウな味で料理するとか天才すぎませんか。人生のセットリストに入れたいくらい好きな曲です。はー、海外のシティポップファンのディグがこの曲に届いてそこからRedditとかで拡散されてファンコミュニティがデカデカと形成されてフューチャーファンク界隈でサンプリングされまくった挙句みのミュージックとかが取り上げてそれに気づいた敏腕プロデューサーがまた発注してくんねえかなア。


ありがとうございました。次回は「ゲーム音楽 × 2 Step ~ UK Garage」特集を予定しています。よかったらここやTwitterをフォローしていただけるとうれしいです。普段こんな感じのDJもやってます。それでは。

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