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想定外の人を殺しても殺人罪なのか?-故意が認められるかの検討
⚠️このnoteはいち受験生が自分の勉強内容をまとめる目的で作成しています。内容が正確でない可能性がありますことをご容赦ください。
故意の有無が問題となる時:認識事実と実現事実が食い違っている
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客観的構成要件該当性、主観的構成要件該当性を満たして初めて罪が成立するところ、故意がない実行行為は主観的構成要件該当性を満たさず、違法性が阻却され罪が不成立となる。(憲法31,刑法38,)
そして故意の有無が実際に問題となるのは、認識事実(こうだ、こうしよう、と思って行動したこと)と実現事実(実際に起ったこと)が食い違っているような場面である。
例1✦
私はお店で調味料を買ったと思っていたら(認識事実)、調味料だと思っていたのは覚醒剤だった(実現事実)
▷覚醒剤を買う行為は本来は覚醒剤取締法第14条第1項違反だが、これを調味料と信じて買っていたのなら、「罪を犯す意思」はなかったことになるため罰されない。これが違法性が阻却され、罪が不成立となる場面である。
上記の例では罪を犯す意思がなかったのは明確である。では、
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例2✦
甲はAを射殺しようと考えた。Aを殺すつもりで撃った銃弾が逸れてBにあたってしまい、Bが死亡した(撃ち間違い)
こうしたときはどうか?認識事実と実現事実は確かに違っており、甲は認識していた「Aを射殺」という事実を実現させることはなかった。しかし、甲が「Aを殺すつもりで撃った」「銃弾が逸れて」Bが死亡している以上、B殺害の故意がないとしてBへの殺人罪が否定されるのだろうか?あるいは重過失致死(211)にでもなるだろうか?
ちなみにこの例2は、上図のうち、具体的錯誤>方法の錯誤 と呼ばれるタイプの錯誤である。
故意認定の処理方法①抽象的法定符号説【王道】
故意認定の処理方法として通説となっているのが、抽象的法定符号説である。これは、
✦ 認識事実と実現事実が食い違った場合、構成要件が抽象的に符合する範囲内において、故意を認める
という考え方によって事実の錯誤における故意の認定問題を処理しようという説である。
そもそも、故意の有無によって違法性を認定するというのは、故意責任という概念が違法性判断のための前提として据えられているためだ。
この故意責任は、規範の問題が与えられていても尚実行行為に及んだこと(やめようと思えばやめられたのに、尚も犯罪行為をしてしまったこと)に対する人道的非難をその趣旨とするものである。そして行為規範の問題は構成要件の形によって規定されている。
そのため、その事例において行為規範の問題が行為者に(甲に)与えられていたといえるならば、構成要件の重なる範囲においては「やめようと思えばやめられたのに、尚も犯罪行為をしてしまったことに対する人道的非難」の故意責任の趣旨から、故意を認定できると解釈する。
というのがこの抽象的法定符号説での処理の考え方となる。
関連判例:抽象的法定符号説
犯罪の故意があるとするには、罪となるべき事実の認識を必要とするものであるが、犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもつて足りるものと解すべきである(大審院昭和六年(れ)第六〇七号同年七月八日判決・刑集一〇巻七号三一二頁、最高裁昭和二四年(れ)第三〇三〇号同二五年七月一一日第三小法廷判決・刑集四巻七号一二六一頁参照)から、人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかつた人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。