ジュリエット釣り(ショートショート)
彗星です。たらはかにさんの毎週ショートショートに参加させていただきました。
ある所にロミオという少年がいました。彼はイケメンではあったのですが、毒親の制限と自身の女性像の高さにより彼女はいませんでした。
ある日彼のお父さんと釣りをしていると、人魚と呼ばれる人種のとても美しい子供たちがやってきました。
彼はその中でも「ジュリエット」と呼ばれる貴族の娘に恋をしました。
来る日も来る日も会う2人を、ロミオの毒親は制限しました。また、貴族の方でもこれ以上ロミオに会わせるとまずいと思ったらしく制限しました。
2人は制限の中でもわざと「ジュリエット釣り」という企画に参加したりして密会を果たしていました。そこでの会話ーー
「ロミオ、どうしてあなたはロミオなの」ジュリエットはつぶやく。ロミオは聞き逃さない。
「仕方ないよ。人魚になる薬はないのかい。」
「…あっ!今度持ってくるわ」
次の日。
「人魚はね、海から上がりきって、乾燥すると死んでしまう生き物なの。だから、こうして海に半身を浸すしかないの。」
「そうなのか。そういえば、人魚になる薬ってあるかい?」
「あるけど…」
「じゃあ、もらうよ!ちょっと恥ずかしいから離れたところで飲むね!」
「待って!あぁ…あの薬は完全に海の中で飲まないと死んでしまうの。だからリスクが高いことを言おうとしたのに。」
その時。ジュリエット釣りの途中だった船が、ジュリエットを釣り上げた!
「ロミオーー!!!助けてーーー!!」
その声は離れた所に行こうとしたロミオにも伝わった。
「ジュリエット!」
ジュリエットは陸の上で気絶していた。だが、人魚の心臓の動きは人間と違うため、死んでしまっているようにロミオには見えた。
「ジュリエットー!!」
ロミオは人魚になる薬の効果を知っていた。陸で飲んだら死ぬということも知っていた。でも。
「ジュリエットが死んだなら、僕も後を追うよ。」
ロミオは薬を飲み、息だえた。
数分後、漁師達に海水をかけられて起き上がったジュリエットは、ロミオがすぐ近くで息だえているのを見つけた。ジュリエットは悲しみに暮れ、言った。
「ロミオ…!薬は飲んじゃいけなかったのに…!私は、この人だけが好きだったの。もう、後を追うわ。」
そうしてジュリエットは手に隠し持っていたタオルで自分の体を拭いた。すると、彼女は息だえた。
漁師達がその様子を見にきた。ロミオのお父さんも、そこにいた。
「ロミオ!お前は、そんなにジュリエットが好きだったのか。すまない、父さんの不注意で…」
悲しみながらいう船長に、船員達は頭を垂れるしかなかった。
「パレードの始まり〜!」
そこから、人魚を食べる習慣は無くなった。
ロミオとジュリエットのおかげで、人間と人魚の間で条約が結ばれたのだ。今では、至る所に人魚と人間のカップルが見られるようになりました。 おしまい