フルコミ広報の居ないベンチャー企業でもできる、いい感じの社内報の作り方【水星の社内報制作】
こんにちは。
水星プロデュース事業部 / 社内広報の山岡です。
株式会社水星では、ほぼ毎月(最近は隔月に1回のペース)で発行されている社内報「月刊辺境」があり、2021年2月から現在までvol.15まで発刊されています。
社内報って、意気揚々と始めたはいいものの次第に自然消滅し…というのがあるあるかと思うのですが、水星では、フルコミの広報メンバーがいないながらも、手前味噌で恐縮ですがなかなか高めのクオリティで2年近く継続的に発行することができたのではないかと思っています。
今回は、低カロリーでコンテンツリッチな社内報を継続的に制作するための秘訣やこだわりをご紹介します。企業キャラクターによって様々な形がある社内報ですが、スタートアップ企業の社内報事例としてぜひ参考にしていただけると幸いです!!
①社内報の目的を決める
ホテル事業部ひとつとっても、京都・大阪・金沢・川崎と働く拠点がさまざまな株式会社水星。それに加え、プロデュース事業部、プラットフォーム事業部(a.k.a. CHILLNN)、エンタメ事業部とビジネススキームの異なるチームがあることもあり、自分の拠点やチームに居る人以外と関わる機会が少なく、社員全員が顔を合わせるのは年に2回の総会のみ。
それぞれの拠点ではメンバーのつながりを感じられますが、ホテル事業を基盤にしているという業種の特性上、会社としての一体感を感じる機会が限られているのに課題感を感じていました。
上記の課題感を解消しつつ、水星としてのカルチャー浸透や、スターメンバーの育成といった側面も見越して社内報がスタート。この時の、社内報の目的をしっかりと決めておくことが後の意思決定を大きく左右するため、解像度高く言語化しておくことが重要かと思います。
水星の社内報の場合、下記4つの目的を定めてスタートしました。
逆にいうと、採用広報としての役割は期待しないことにしました。
オープン社内報等の形で採用広報上の効果を期待する場合、web上で自然に広がるような良質なコンテンツを高頻度に生産するためのカロリーが必要であるのに加え、ネタ切れに由来する自然消滅のリスクがあるため、私たちの規模ではやや負担が大きいと判断しました。
水星の場合、社内報以外にも発信の媒体が複数あり、また中途半端な内輪ノリを社外に公開することによる企業イメージや自由度の低下、プライバシー等も懸念して、採用広報とは完全に分け、あくまで社内広報のためのツールと割り切って企画を進めました。
イメージとしては、それこそ週刊誌のように、業務の合間や休憩時間にチラチラっと読み、「あ、誰々が出てる」「へえ〜っ」と思っていただけるような、しょうもないライトな読み物としての形を目指しました。
②発行媒体を決める
どのような形式で社内報を発行するかによって、コストや効果なども変わってくるため、発行媒体の選定が非常に重要です。伝統的には雑誌形式や新聞形式が一般的かと思いますが、最近は、noteやslackなどのブログ形式を採用している企業も多い印象です。
水星の場合、WEBにオープン社内報として更新していくことも選択肢としてありましたが、読了率が記事の読み応えに左右されてしまうため(さらにいうと、隙間時間にも気軽に読んでもらえるような、有意義すぎず、退屈すぎない絶妙な匙加減の面白さが求められるため)ライターと編集者の力量に大きく依存するコンテンツ制作体制になり、高カロリーな業務となることが懸念でした。
読み手も文字ばかりだと読まなくなってしまいますし、作り手も文字情報の更新ばかりだと楽しくなくなってしまうので、ビジュアル重視型の雑誌形式でデザインを作り込む方針を採用することにしました。
とはいえ、毎回製本して共有するのは心理的にも稼働的にも重たいので、発刊時には、PDFデータで全社共有し、必要な場合に印刷し冊子として手元で読めるようにしています。
結果としてはこの形式を採用したことが、後述の通り制作の負担を大きく下げることができ、vol.20まで継続して発行ができた秘訣だと思っています。
③トンマナ・タイトルを決める
社内報は、企業のカラーやカルチャーを非言語的に表現するための媒体だと考えているので、「どのようなトンマナにするか?」を初期の段階で握り込むと、後々の企画・制作での迷いが減り、かえってクリエイティブジャンプが生まれやすくなると思います。
この時、ポイントになるのは、ゼロから生み出そうとするのではなく、既存の規格のパロディをすること。もちろん、専属のクリエイティブディレクターをアサインするなどして、がっつり制作体制を組める場合はその限りではないのですが、多岐にわたる業務の片手間で、低カロリーで企画・編集を続けていくには、さまざまなメンバーのリソースをちょっとずつ借りていくことが不可欠になります。その際に、「あ〜、あの感じね!」とノリを分かってもらえると、コミュニケーションコストが大幅に下がり、制作を継続しやすくなります。
水星の場合、Twitterで見かけたこの投稿にインスピレーションを受け、
週刊誌風のデザインを模索するところから始めました。
その中で、ニトリの社内報が毎号表紙に社員のポートレートを持ってきていることを知り、
めちゃ素敵だなと思ったので、いわゆるファッション誌をパロディし、表紙だけでなく連載や中身の構成、広告ページまで模して作れば面白そうでは?と着想しました。週刊誌の猥雑さと、ファッション誌、ライフスタイル誌的な空気感の中間地点というところで、昭和のアイドル誌がイメージに近いのではと考え、『明星』パロディにすることに。
水星のヴィジョンを語る中でよく出てくるキーワードである『辺境』をモチーフにして、『月刊辺境』と命名、ロゴをkimoiさん(リンク:https://www.instagram.com/ki_moi/?hl=ja)にデザインしていただきました。今っぽくもありながら、ちょっとした古臭さもあるデザインでとても気に入っています。
そういう経緯で、『月刊辺境』創刊号の表紙はこんな感じに仕上がりました。往年のアイドル誌さながらで編集チームが興奮に包まれました。
トンマナは、制作を進めていくうちに少しずつ変化していく余白があっていいと思っています。あくまでチームやステイクホルダーの方々との認識統一のためにスタート地点を決めておくのが重要で、その後は組織や事業のあり方や、コンテンツの変化に伴って自然と変わっていくものだと思いますし、その過程自体を見守っていくくらいのゆとりがある方が息切れせずに続けられるのかなと。
実際に、『月刊辺境』もアイドル誌風だったのは初期だけで、少し前は平成のファッション誌っぽい雰囲気、最近は令和のライフスタイル誌っぽい空気感になっています。社内限定コンテンツなので、いい意味で肩の力を抜いて、こだわりすぎんでいいのです。
④企画・構成を考える
せっかく手間暇をかけて社内報を作り込んでも、皆さんに読んでいただけなければ元も子もないので、ユーモアを散りばめた企画を考えることが大事だと思っています。
限られた工数の中で可能な限り面白いコンテンツを作る。その鍵はやはり「パロディ」です。下記でコンテンツを一部紹介していますが、「セブンルール」や「ストリートタイパー」はまさにパロディコンテンツ。フォーマットができることでコンテンツの面白さや読みやすさがライターの文章力に依存せず、またパロディだからこそ読み手に受け入れられやすくなると考えています。
また、興味を持って読んでいただくための工夫として、メンバーに登場していただく機会をたくさん設け、「共犯者を増やす」ことも大事だと思っています。例えば、自身もDJとして活躍するメンバーには、ラジオパーソナリティ役になってもらいながら新入社員を紹介するようなインタビューコンテンツを担当してもらったり、占いが得意なメンバーには、占い師として社内メンバーの運勢を占ってもらうコンテンツを担当してもらったりしています。可能な限りメンバーの持ち味を活かした企画を設計することで、その方のパーソナリティを知っていただいたり、コミュニケーションが生まれたりするきっかけになりますし、共犯関係のメンバーを増やし、全員で社内報を作っているという感覚を生み出せるのではないかと考えています。
〜〜〜 それでは社内報の中身をご紹介します! 〜〜〜
■特集企画
新拠点の開業や、周年イベント、新プロジェクトなど、その月の水星のメインイベントを4Pほどで紹介する企画。いわゆる雑誌の巻頭特集のようなイメージです。毎回編集部の方でがっつりテキストを書くと、インタビューや執筆、編集、校正等の労力がかかるので、関係メンバー数名に400字ずつ程度寄せ書きをもらう形で仕上げることも。
■水星新聞
各事業部の近況や告知のコーナー。新聞のようなレイアウトで、その月の思い出と共にお知らせを掲載しています。売上報告のような真面目な情報共有は別途slackで行うので、どちらかというとほっこりしたしょうもないニュースなどを紹介することが多いです。
■FMイズタ
新入社員インタビューのコーナー。大阪を拠点にDJとして活動しているHOTEL SHE, OSAKAの伊豆田さんをパーソナリティ役として迎え、まるでラジオのように、インタビュアーとインタビュイーの掛け合いを楽しみながら新メンバーたちのバックグラウンドを根掘り葉掘り紹介しています。
実は、この枠は以前は、スナック巡りが趣味の人事の方がママ役となって新入社員の話を聞き、その方のイメージにあった歌謡曲を紹介する『スナック尚美』という人気コーナーでした。残念ながら退職されたため、FMイズタにリブランディングする運びとなりましたが、メンバーの入退社に伴ってコーナー再編が行われてもいいじゃない、という心理的ゆとりが大切だと思っています。
■セブンルール
毎回ピックアップされた社員が、その人の仕事感や大切にしているルールを紹介するコーナー。パフォーマンスの高いメンバーがどのような心掛けをしているかを言語化・共有するために、かつて代表の龍崎を取り上げていただいた関西テレビの人気番組『SEVEN RULES』をパロディ。これまで一緒に働くメンバーの知らない一面などが垣間見える人気コーナーです。
■ストリートタイパー
水星メンバーのタイピング能力を競うゲームコーナー。水星ではタイピングスピードと業務スピードは相関すると考えているので、タイピングのスピードを楽しみながら意識して欲しいという意図もあり、毎回選出された2名で、タイピングゲーム「寿司打」の結果を競います。もちろん、これはストリートファイターのパロディ。試合前の煽り文句もこだわっています。
■レイナ・バーンズの占い館
占いができるメンバーが社内にいた時は、まさに雑誌の後ろの方の白黒ページのようなイメージで、占いコーナーを行っていたことも。
■超潜入!!ホテルスクープ
水星ではSTAY STREET TRAVELというホテル視察の経費を会社が補助する制度があります。その際、提出してもらう体験レポートを社内報企画にリサイクル。
⑤取材、編集、デザインする
企画が立ったら、あとは実際に取材と編集をするだけ。
ここでのポイントは、編集会議をしないということ。連載ベースで作られる月刊辺境は、担当者が出演者を考え、各自でタスクを進めるだけの体制にあえてしています。新連載を立てる際に、企画や世界観を作り込んでいるため、あとは出演者や寄稿者を変えて文章をそれぞれから集めるだけの低コスト運用が実現し、いい意味で作業化ができているのです。
編集会議などの定例ミーティングを行いたくなるのが人の性ですが、参加者全員で「うーん」と悩む時間が増えるだけになってしまう可能性もあり、必ずしも生産性が高いとは思っていません。ミーティングは、必要なタイミングでさくっと相談するくらいにとどめています。
編集部は現在5名体制。ホテルで現場に立つメンバーや日々オフィスで働くメンバーが担当し、社内報の発刊に携わっています。
統括:進行管理、構成、校閲
企画コンテンツ担当(3名):各企画の取材と編集
デザイナー:誌面デザイン
発刊までの流れは5ステップのみ。
その中でも水星の社内報のクオリティに大きく紐づく特徴が、企画の担当者がそれぞれインタビューやライティング依頼を行っていることです。
コンテンツ制作は分業となっており、企画それぞれに担当がついています。
■水星新聞の場合・・・
たとえば毎月の事業部のお知らせ枠「水星新聞」では、制作スタートのタイミングで
各部署の担当者にこのようなメッセージを送ります。
その部署・担当者のキャラクターが伝わることを大切にしているため、上がってきた文章をリライトすることはほぼありません。絵文字を多用する部署や、日記のようにカジュアルな文面で描く部署など、それぞれの特徴がでるようなコンテンツになっています!
■ストリートタイパーの場合・・・
ゲームコーナーも同じく、担当者が独断と偏見で選んだ2名にDMを送ります。
出演者に提出してもらったスクショやテキストをデザイナーへ共有し、誌面を作っています。なので、編集担当の工数もわずか(出演者を決める→依頼する→回収する)で収まります。
このように分業体制にすることで、担当者が日々の業務の合間で気軽に社内報の編集部の業務に取り組むことができるかつ、より社員のキャラクターが伝わるような社内報になっていると感じています。
⑥発刊する
デザイン誌面が上がり、校正が完了したら発刊するだけ。
水星では、毎月slackの社内報チャンネルにPDF形式で投稿しています。
最後に
水星社内報「月刊辺境」の最大のポイントは社内報に関してオーナーシップを持ってくれるメンバーを各部署・拠点につくっていること。
社内報担当ではない人も、毎回のタイミングで自分の施設のことや告知文章・画像選定をおまかせしているため、仕事の一つとして協力してくださっています。会社からの一方的なお知らせの場としてではなく、社員同士が共創できる場として、これからも月刊辺境を発行していければと思っておりますので、ぜひお楽しみに!