■リフティングを成功させる秘訣は
リフティングという言葉をご存じでしょうか。
リフティングとは、一度塗った色を取り去る技法のことで、
「リフトアウト」「拭き取り」などとも呼びます。
塗り過ぎた箇所や 暗くなってしまった箇所の色を取り去り、
ハイライトを作ったり、濃淡のハッキリした画面をつくることができます。
成功させる秘訣は
・木材パルプの紙で描くこと
・リフティングは画面が乾いてから行う方が成功しやすい。
以上の2つです。
この2項目をクリアするとリフティングの
成功率は格段にアップします。
それでは詳細に述べていきます。
🔷 リフティングが出来る紙と出来ない紙がある
水彩紙には大きく分けて2つの種類があります。
コットン製と木材パルプ製の2種類です。
木材パルプ製の紙はリフティングが出来て、
コットン製の紙はリフティングが殆ど出来ません。
コットン製は色の付着が強いので、重ね塗りが上手くできる代わりに、
その色を取り去ることがあまりできません。
つまりリフティングするには、不向きな紙です。
反対に木材パルプ製は重ね塗りがあまり出来ない代わりに、
色を取り去ることができます。
🔷リフティングをするなら木材パルプの紙で
リフティングを成功させるためにまず重要なことは、木材パルプ製の
水彩紙を使うことです。前述の通り 塗った色を容易に取り去る
ことができるからです。
(各銘柄については、このページの下で詳しく書いています)
🔷リフティングには2つの方法がある
一つ目は絵の具が乾く前に取り去る方法ですが、これは多くの作家が
YouTubeやブログ等で紹介しています。「水彩 リフティング」と検索
すると、殆どの記事がこの方法なので、そちらでご覧いただくとして、
今回は割愛させていただきます。
僕が今回ご紹介したいのは、
絵の具が完全に乾いてからリフティングする方法です。
実は僕はこの方法ばかり使っています。
その理由は
・ゆっくりと作業ができる
画面が乾いても、木材パルプの紙を使えば充分リフティングできるので、
慌てることなく落ち着いて作業ができます。つまり無理をして濡れている
時に行う必要がないのです。
・濃淡の微調整ができる
絵の具が濡れていると、水が邪魔をして繊細な濃淡表現ができないことが
ありますが、乾いていれば、取り去る際に急激に取れる心配がないので、
繊細な濃淡表現ができます。
・判断を誤らない
リフティングをするか否かの判断は絵の具が乾いてから、
あるいは完成してからでも決して遅くはありません。
その方が落ち着いて正解を導き出すことができます。
では作品をご覧いただきながら、コツやポイントを述べていきます。
下のクロワッサンの絵をご覧ください。
どこか艶がなく立体感もあまりません。
そこで筆で色を部分的に取り去り、問題を解決してみたいと思います。
まず用意する道具は、やや硬めのナイロン筆とティッシュです。
まず、ナイロン筆にたっぷりの水を含ませ、明るくしたい箇所に
筆をトントンと軽く叩くようにします。
暫くすると色が溶け出してくるので、
そこにティッシュを押し付け、色を取り去ります。
小さな範囲で少しずつこの作業を続けます。
この要領で、リフティングが完了すると、
こんな感じになります。↓
大分明るい感じで、立体感も出てきました。
続いて最後の仕上げです↓
リフティングで色が薄くなり過ぎた箇所や、ぼんやりし過ぎた
箇所に小筆色や線を加え、メリハリがあるようにします。
完成です↓
少し色を取り過ぎた面はありますが、最後のアクセントが加わり。
メリハリのある濃淡になったのではと思います。
では、リフティングに向いている水彩紙を、1銘柄ずつご紹介します。
最も色を取り去りやすい水彩紙と言えば、このワーグマン紙でしょう。
乾いた時は勿論、長い期間が経っても色を簡単に拭き取ったり、
することが出来ます。
数年前に描いた水彩画の一部を 試しに筆で擦ったら簡単に取れたので、
驚きました。この紙がリフティングに向いている紙、第1位だと思います。
紙の表面がかなりザラザラして(荒目)いますが、それが気にならない
方には是非おすすめです。
2つめはヴィファール紙です。荒目・中目・細目と3種あり、どれも
容易に取り去ることが出来ます。重ね塗りをすると少しムラができる
ことがありますが、リフティングを中心に制作したい方にはおすすめです。
価格も国産とあって、かなりお手頃です。画材店の取り扱いはとても多く、ほとんどの画材店で見かけると思います。
※中目がおすすめです。
紙の目は中目1種のみですが、目が比較的小さく、発色も良く、純白の
美しい紙です。描き心地に関しては、描きやすいという方と描きにくいと
いう方で賛否が分かれる紙です。僕自身はかつてこの紙を愛用していました
が、水を大量に使うと紙が反り返ること、色を重ねすぎるとムラになる
という理由で、今は下記の時以外はあまり使わなくなりました。
・リフティングをする時 ・重ね塗りをせずあっさりと描きたい時
初めて僕の教室に訪れた方の殆どがこの紙を持参しているぐらい、最も
ポピュラーな水彩紙です。値段も手ごろで、滲みがキレイにでき、発色も
良いので人気がある理由が分かります。
重ね塗りにやや難点がありますが、その分リフティングが上手くできる
ということでもあります。
木材パルプ紙のご紹介は以上ですが、まだ他にも沢山あります。
安価な水彩紙でも、お試しのつもりで購入されるのも
良いかと思います。
最後になりますが、水彩紙の使い分けについて少し、
重ね塗りを主体に描く場合はコットン、
リフティングをする場言は木材パルプ、
というように、描く絵、あるいは表現方法によって
水彩紙を使い分けるようにしてください。
最低2種類の水彩紙
(例::ワーグマン=木材 / ウォーターフォード=コットン)
をお手元に置くことをおすすめします。
今回のお話は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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