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大いなる流れに乗る生き方 全託の祈り

頭の中で強くイメージすればどんな願いも叶う・・・これが自己啓発系やポジティブシンキングで説かれる「教義」の核心部分です。精神世界系の方々の一部もこの教義に賛同していて、「引き寄せの法則」などと言い換えて世界中に拡散されていますね。

でも、この「願いは叶う」という理屈自体が、我々占星術師が主張する「運命の絶対性」と大きく矛盾していることに気がつかれると思います。

心にイメージしただけで自由にできる程度のモノなら「絶対的な運命」とは呼べませんし、運命がどうやっても変わらないなら「夢を持つ意味」がありません。

この「運命なのか、自由意思なのか」は、宗教者の間では長年「頭の痛い問題」として扱われてきました。

実は、私がインド哲学にハマったきっかけも、この根源的な矛盾に論理的決着をつけたかったからなんです。

世界中の神学者を悩ますエピソードの代表と言えば、まずは旧約聖書に出てくる物語です。神が未来を完璧に見通す力を持っているならば、エデンの園でアダムとイブが「神の言いつけを守らずに知恵の実を食べてしまうこと」を事前に予測できていなかったことが説明できなくなりますよね?

もしこの二つの矛盾する価値観に整合性を取ろうとするならば、「アダムが神の命令に逆らって強く何かを願うこと自体も最初から運命によって決められていた」と言うしかありません。

この言い方であれば、「神はアダムとイブが知恵の実を食べることが分かっていて、敢えてその状態を放置した」となります。
ダチョウ俱楽部のコントの「押すなよっ!」と同じで、神の「食べるなよっ!」は「本当は食べていいよ」の前フリになっていた可能性が高いというわけです。

その後に起きた楽園追放(パラダイスロスト)も、すべて「神の計画通り」だと考えれば、一応は物語の筋が通りますし、「全知全能の神」のメンツも保てます。

つまり、神は人間を自立させるために「ワザと」二人にルールを破らせたと考えればスッキリするんですね。

知恵の実を食べてしまうアダムとイブ 中央の蛇はサタン

私自身、長年占星術にかかわっているので断言できますが、この世界には「運命」と呼ぶべき「見えない力の流れ」が間違いなく存在しています。音楽的な才能に優れたホロスコープを持つ人は自然と音楽方面の仕事に就こうとしますし、不倫しやすいホロスコープを持つ人は、非常に高い確率で配偶者以外の異性とお付き合いをしてしまいます。

逆に、不倫傾向の全くないホロスコープを持つ男性が「女性の色香に惑わされる」という例をこれまで一度も見たことがありません。つまり、不倫する度胸があるかどうかすらも一種の「先天的才能」として存在しているわけで、それは本人の「倫理観」とは全く関係がなく、自動的反応として発生してしまうのです。

もちろん、「それがいつ起こるのか?」も数学的に計算できますので、ノーヒントで顧客のホロスコープを見ただけでも「あなた今、妻以外の女性とお付き合いしていますよね?」と分かってしまうほどなんですよ。

つまり「不倫しやすい傾向の人が、不倫しやすい時期を迎えたら、ほぼ確実に不倫する」のです。自由意思による拒否権はありませんので、厳密に言うと彼らは「運命に翻弄された被害者」なわけです。

突然、誰にも話したことのない不倫行為を占い師に指摘された顧客は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして驚きますが、こちらはただ「人生の設計図」を読み取っているだけなので「当たって当然」ぐらいの薄い感想しかありません。

動揺しながら「なぜ知っているんですか?」と聞く顧客に対しては、「ここにそう書いてあるからです」としか答えられませんし、それを非難する気も毛頭ありません。

「不倫する」とプログラムされている人は、それを実行する以外に「道がない」からです。それ以外の選択肢がなかったんだから彼ら倫理観を責めても仕方がないんですね。

誰もが自分の人生は「自分の自由意思で選んでいる」と思っていますが、我々占星術師の目から見れば、それはただ、事前に用意されたシナリオを淡々と演じている「役者」のようにしか見えません。

たとえば今、あなたがこの記事を読んでいること自体も「自分の自由意思で選んだ行為」と思っているかもしれませんが、必ずしもそうではないんですよ。

「何かに導かれた」と言い換えてもいいかもしれませんが、あなたは今、この情報を受け取るべき「必然性」があったからこそ、この記事に500円を払うように「運命によって強制された」のです。

極端なことを言えば、あなたが今日この記事を読むことは「生まれた時から決まっていたこと」であり、「人生に自由な選択肢が存在している」という考え方自体が幻想に過ぎないということです。

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