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【京大吹零会 起業家インタビュー】ケイスクワッド株式会社 小南佑介さん 京都大学理学部 2020年卒

「京大吹零会」とは、京大出身(在学中も含む)の起業家を集めた、起業家コミュニティです。京大には変人が集まると言われるように、京大出身の経営者も変わった人が多いので、周りに理解されず、孤独になってしまうこともあります。そんな「吹き零れ」たちが集まり、経験をシェアして切磋琢磨する、唯一無二の会です。メンバー同士の交流を促すため、また、これから起業したい方に吹零会メンバーを知ってもらうため、隔週で「京大吹零会 起業家インタビュー」をオンラインで放送中。このイベントで収録した起業家たちの講演内容を書き起こし記事としてお送りします



【要チェック!】

公開インタビューのスケジュールや、記事を見て「起業したい!」と思った方のための「京大・起業相談デスク」についてはコチラをご覧下さい。

【京大吹零会 起業家インタビュー】
ケイスクワッド株式会社 小南佑介さん 理学部卒
メインビジネス:ソフトウェア設計のアドバイザリーを始めとした、ソフトウェアエンジニアに関わる全ての領域におけるtoBのITコンサルティング

学生時代のこと。

京都大学を目指したきっかけとしては、中高を通してアメフトをやっていた中で、高校OBの方が京大のアメフト部・GANGSTERSに入っていた関係で合同練習をする機会がありまして。そこで色々話を聞いていると「京大面白そうだな」と思いました。
祖父母が米農家を営んでいるので最初は農学部を考えていたんですけど、受験勉強を進めていく中で自分は数学が得意であることに気付きまして。それで理学部を志望するようになりましたね。でも実は1浪してまして…現役時代は結構派手に失敗したんですけど、2年目では余裕をもって入れたんじゃないかなと思います笑。当時センター試験があまり得意ではなくて7割強だったんですけど、2次で取り返した感じですね。
大学生活を通してサークルには入ってなかったんですよね。大学1年の頃に体育会系の部活に入ろうと思って空手部に入ったものの、想像以上にきつくて夏過ぎに辞めました。でもそのころにはもうサークルの新歓が全部終わっていたのでどこにも入る当てがなくて。そこからはもう大学生活はひたすら勉強とバイトでしたね。
GANGSTERSには入りませんでした笑。というのも、アメフトの防具ってすごくお金がかかるんですよ。ヘルメットだと5~10万はかかるし、肩の防具とかもかなり…ということで資金面の問題があったのと、そもそも中高で4,5回骨折してまして笑。流石にもう怪我はしたくないということで入りませんでした。
部活もサークルも入っていなかったんですけど、とは言うもののバイトは結構特殊なことをやっていまして。京大の産学連携制度で、キャンパス内のイノベーション棟というところに日立製作所の基礎研究所が入っていたんですよ。そこで学生アルバイトが募集されていたのですぐ飛び込んで、それからはずっと機械学習とかAI系の研究開発を学部2回生からやっていました。
元々AIの知識は無かったんですが、大学1回生でMacBookを買ってもらって以来独学でプログラミングを勉強していました。Web制作とかではなくて、数値計算とかアルゴリズムをやっていましたね。あと、ちょうど入学した2016年はディープラーニングが流行り始めたくらいのタイミングだったんですね。なのでその領域関連の書籍を買って独自で勉強してみて、AI系の知識は身に着けていった感じですね。さっきの日立のバイトもこういった経緯で参加しました。きっかけというか、タイミングが良かったなと思いますね。
学部の勉強にも力を入れていたんですけど、AIとは全く関係なくて笑。京大の理学部って数学・物理・生物…といった自然科学を学ぶんですけど、コンピューターサイエンスは工学部の情報で学ぶんですね。だから大学に入ってプログラミング面白いってなったのに、学部では学ばないという笑。プログラミングに関してはずっと独学でやりながら、バイトでも勉強する…みたいな。こんな感じだったので、学部で取り組んだことについては説明しきれない部分が多いですね。
勉強していた当時から猛烈にAIが好きだったかというと別にそうでもなくて。ただAIについて勉強していたら周りがすごいと言ってくれることに調子に乗ったりもして笑。今も好きかどうかを聞かれても微妙なんですけど、でもそれがきっかけで今につながっている感じですね。
大学3年生の時に半年間、スイス連邦工科大学ローザンヌ校というフランスに近いスイスの大学に交換留学もしましたね。交換留学って相手先の学部を指定して行くことが出来るんですよ。で、私自身コンピューターサイエンスをしたいと思っていながらずっと大学では生物を学んでいたので、そこでようやくコンピューターサイエンスの学部に入れたんです笑。やっと胸を張って“コンピューターサイエンスを勉強しているぞ”と言えるようになったという笑。

留学中にユングフラウヨッホへ旅行に行ったとき

元々独学で、世界の大学の学部生が使うような英語書籍の無料版PDFはたくさん読んでいて、通り一遍の知識と実用的なプログラミングはできていたので、意外と授業の内容は難しくなかったですね。
あと私は院進はせずに就活をしまして。しかもTwitterで就活していました。大学生活においてTwitterは切っても切りはなせない感じでしたね笑。当時、Twitterの中でもエンジニアのコミュニティというのがあって。その中で更に学生組と社会人組があったんですね。で、実力のある就活生はどっちにも名前が知られているという構造でして。
当時、ディープラーニングとかAIの最新技術について日本語で発信している人が少なかったんですけど、私はその領域についてインプットするだけでなくてアウトプットする場として、“読んだ論文のアルゴリズムを日本語で3行でまとめる”ブログを書きまくっていたんですよ。そしたら業界の中で、「学生なのにかなりディープラーニングに詳しい人がいる」という認知の獲得ができていたんですね。大学4年生で就活をする頃にはフォロワーが4000人くらいいました。
とはいえ元々は院進する予定だったんです。でもお金の問題とか社会人組の人から色々意見を聞く中で、就職しようかなと思い始めました。TwitterのDMでは新卒800万円でオファーしてくれる企業もありましたね。それをツイートした時は、炎上というか議論が起きましたけど笑。その後も色々動いた中で、結局新卒でソフトバンクに就職することになりました。今だとTwitterで就活・転職するのは一般的になってきましたけど、当時はまだかなり少なかったので割とパイオニア的なポジションだったかもしれないですね笑。

ソフトバンク新卒入社時、新入社員代表でインタビューしてもらった

起業のこと。

ずっと「いつかそのうち起業しよう」とは考えていたんですけど、タイミングをいつにするかとかはそんなに考えていなくて。就職した当時はエンジニアとしてやっていこうと考えていたので、漠然と30歳前後で起業するのかなとか思っていましたね。
新卒でソフトバンクを選んだのは、将来起業するにあたってビジネス方面のつながりというかヒントを得られたら面白いかもな、というフワッとした可能性を感じたのが理由ですね。結局ビジネスとかは全く学べなかったんですけどね笑。
というのも、ソフトバンクは会社の本質としてIT商社のイメージで今でこそAIに投資していますけど、当時は「AIこれから頑張るぞ」みたいな雰囲気で。しかも基本的には社内でソフトウェアを開発しないんですけど、私は珍しく社内で開発する部隊に入ったんですね。だから社外でビジネスに関わることもなく、しかもチームの中で先輩社員から技術的な質問を受けるというよく分からない状況になってきて学ぶものがないと感じたので、2020年の4月に入社してその年の12月に退社しました。
それでも一応収穫はありまして笑。ソフトバンクは新卒で700人くらい採用しているんですけど、私が新入社員代表として孫さんの前で答辞を読んだんですよ。「僕はソフトバンクを世界一のテック企業にします」なんて言って笑。その場には新卒だけじゃなくて、孫さんや有名な取締役がたくさんいまして。その人たちに名前を覚えてもらっていたのが、今ソフトバンクの仕事にも携わっているという意味で収穫でしたね。今でもあの時答辞を読んだのはファインプレーだったなと思っています。
もしかしたら人事部の中で何か働きかけがあったのかもしれないですね。ソフトバンクに新卒で入る人の中では、実際に手を動かすタイプのキレッキレのエンジニアでありかつ、ビジネスにも関心がある人って結構珍しいと思うので。「祭り上げとこう」みたいな動きはあったかもしれないですね笑。
2021年の1月からはSTORES株式会社という、中小企業向けにデジタル化を手伝うサービスの会社に入りました。そこではデータチームに所属してデータエンジニアをしていました。仕事内容としては、分析にあたってデータを整理して、その整理されたデータを集める“データ基盤”というのを0から作るというものでしたね。
それまではエンジニアとしてゴリゴリやっていく意欲もありながら、ビジネスサイドにも興味はあって…でも何をすればいいかが全然分からないような状態だったんです。でもデータチーム内での仕事は、エンジニアとしての仕事をバリバリこなしていきながら「ビジネスにどう今扱っている技術を転換していくか」も模索できるものでした。
具体的には、ABテストをやるにあたってのデータ処理をしたり、マーケティングチームやセールスチームとコミュニケーションを取りながらデータ設計をしたりする中で、技術をビジネスサイドに展開していくことの具体的なやり方だったり面白さを学ぶことが出来て。「これならそのうち起業できるな」と思い始めましたね。
しばらくしたら同僚の1人が「一緒に起業しよう」と誘ってきて。そこでようやくCTOとして会社を起業しました。僕の独立人生はここから始まりましたね笑。創業メンバーは5人で、スマートニュースの一人目のPMだった人、フジテレビの元役員、バズフィードジャパンを立ち上げた人、THE GUILDという有名なフリーランスチームのパートナーをやっている人…すごい人ばかりでしたね。ちなみにフジテレビって最近早期退職制度を始めたんですけど、メンバーの元役員の人はこの制度を作った張本人でしたね笑。
全員最初に誘ってくれた同僚のつながりでしたね。その人は元々フリーランスをやっていて、正社員に戻ってきた人なんですけど、フリーランス時代に色んなメディアのコンサルタントをやっていたんですね。週刊文春オンラインやフジテレビのFNNオンラインといった雑誌・テレビのオンラインメディアの立ち上げが得意だったんですよ。データ分析とか広告の貼り方とかも得意で、メディア業界では超有名人だったので、その仕事のつながりでメンバーに加わったという流れです。
あとスマートニュースの最初のPMでもあったので、色んな記事をキュレーションする中で大手メディアとの様々なつながりができたという経緯みたいですね。このメンツで地方活性化の事業をやろうとしたんですけど、これがまぁ全然上手くいかなくて笑。結局2022年に爆散しましたね笑。
事業内容としては、「中小企業が売り上げを向上させるための集客のデジタル化」でした。今はAirペイ等のデジタルを活用するツールはあるものの、中小企業が真に盛り上がるためには“まず売上が立つこと”が先決である、と。そして売上が立つためには、デジタルのツールを使いこなせることは勿論のこととして、集客できることが最も大切ですよね。お金を払ってくれるお客さんがいないと成立しないわけですから。
そこで、中小の店舗が集客をするためのツールとしてCMはお金がかかって出せないから、「Web広告を使うかSNSをやってみるか」の選択になりまして。さらにそこからSNSを使うという話になった時に、中小企業って数万人とかに来てほしいとは思っていなくて。地元のお客さんが数百人~千人来てくれたらハッピーと思っているところが大半なんです。ただ、いざ集客のためにSNSをしようとしても、フォロワー数万人のインフルエンサー企業とかに押し負けてしまって結局そんなに目立ててない…みたいな。
「ならば位置情報に基づいたメディア・SNSを作れば、おそらく位置情報ありきで集客できるから、問題点も解決するのでは」と考え、サービスを立ち上げて店舗に導入しようとしたら、そもそもデジタルを使いこなせないほどのデジタルリテラシーというか…スマホは持っているけどLINEは入ってない、みたいなレベル感だったんですね。そこで“これは無理なんじゃないか…”という流れになってこのサービスを畳むことになりましたね。
地方活性化ビジネスには失敗したんですけど、実はそのビジネスと並行して今の会社を作っていたんですね。というのも、STORES時代のデータ基盤を0から作った張本人で全部を把握している人がいきなり抜けるのは、いくら他の社員にしっかりと技術を継承しているとしても会社としては困る、ということでフリーランスとしてSTORESと付き合うことにしていたんです。こういう経緯があったので2022年はスタートアップのCTOもやりながら、フリーランスのエンジニアもやっていたんですよ。
あとは“フリーランスで売上がある程度行くと法人化した方が税金上お得”という話もあったので、そのまま流れで法人化して。その会社が今の会社となっていまして、2023年からはこっちに専念している状態です。メインはtoBのITコンサルティングをやっています。
フリーランス時代と変わったこととしては、以前はガッツリ手を動かしていたのと比べて、最近では技術顧問としてのソフトウェア設計のアドバイザリーが多いですね。例えば今だと、アイフル株式会社の技術顧問であり、その子会社の専務になっています。技術顧問としての内容は、「システムを組んだ時にどういうセキュリティの不安があるか」や「エンジニア採用にあたってどの転職媒体にアタックするのがいいのか」までソフトウェアエンジニアに関わるもの全てを担当しています。

起業直後の初期メンバー

これまでエンジニアとして行動してきた中で、経営にあたっての壁もありました。というのも、自分は今までバリバリ行動をするタイプの人間で、自分で直接問題を解決するのが基本スタイルだったんですよ。ただ会社経営をするとなると、やっぱりチームで完成させないといけなくなることが多くなって。そこで大事になってくるのが“タスクの委譲”で、最初は非常に苦労しましたね。自分でやれば100点のクオリティが出せるのに、それを抑えて人に任せないといけない。その結果、どんなに丁寧に教えて仕事を任せても85点くらいになってしまう、みたいな。「結果に対する妥協」と「相手への信頼」について踏ん切りがつけられたのは割と最近でしたね…。こういう点で会社経営は難しいなと感じました。
今の会社規模は全体で15人くらいです。各案件の仕事に合わせてその領域が得意なメンバーで組んで…という感じで、年間売上は1億円くらいとなっています。最近は新卒も採用し始めていて、“技術的に尖っている人”であればいくらでも採用したいですね。学生のアルバイトも採用しています。
現状のITコンサルは、正直私自身のブランドありきで回っている事業なんですよね。やっぱりこのままだと事業運営においてリスクだと思っているので、今後は私に依存しないビジネスモデルを作りたいなと思っています。その中で、ちょうど立ち上げ中なのが“副業マッチングサービス”なんです。

エンジニアやデザイナー向けの副業マッチングサイトはあるんですけど、バックオフィス業務向けの副業マッチングサイトって実は無いんですよ。今私の会社でもバックオフィスをつけて会計・法務業務を副業の人に任せていますが、スタートアップとか中小零細の会社って売上を作るのに必死なので、売上に貢献しないバックオフィスの人は“コストセンター”になってしまうんです。つまり中小零細企業にとっては、バックオフィスの人たちを正社員で雇う余裕が無いんですね。だから「そういう人達を副業で雇えるのっていいよね」というのが実践してみて感じるところとなっています。

しかも、例えばバックオフィスの会計業務には専門知識が必要なんですけど、実際に副業で業務を行う人の中には業務で要する知識を当然のように身に着けている人もいるんです。でも現状では、そういう能力がある人が実際に選ぶ副業がブログでのアフィリエイトとかだったりするのを見ると、非常に勿体ないと思うんですよね。一方では「専門知識がありながらそれを持て余している人材」がいて、またもう一方では「その専門知識を持つ人材を求めている企業」が存在する。…となるとマッチングは必ず成立するし、世の中的には副業解禁の流れも出てきているので、良いチャンスだと考えています。

20代でやるべきこと。

2つあります。1つ目は、とにかくたくさん友達を作ることです。私自身、勉強とバイトだけで大学生活を過ごしてしまって。勉強にコミットした分専門知識はかなり身につきましたし、エンジニアとしてある程度大成したと満足しているんですけど、「友達が少ないな」とやっぱり思うんですよね。今実際自分で会社を経営している中で直面する悩みとかを屈託なく話せる人があまりいないんですよ。なので、手段を問わず友達はたくさん作っておいた方がいいと思います。
2つ目は、とにかくたくさん勉強することです。私自身が実践したことですが、大量に本を読んだ方がいいと思いますし、手を動かせることであれば全て実践した方が良いと思います。プログラミングでもいいし、ブログを書くのでもいいし、変な話ですけど将来営業職でバリバリやっていくなら女の子をナンパしまくるとかでもいいと思います。自分の尖っているハードスキルを確立するのは別に社会人でなくてもできますから、やっておいた方がいいかなと思います。別にやってなくても社会人になってからやればいいものでもありますが、社会人1年目に良いスタートダッシュを切れるという意味ではすごく大事かなと思います。
あと、AIに向き合いたいという人がいたら、「とにかく統計学と線形代数をしっかりと勉強しましょう」と言っておきたいですね笑。線形代数・統計学・確率論・代数学・解析学・数値解析といった学生時代にしっかりと時間をとらないとできないような理論的な勉強をしっかりとやっておくのがいいですね。生成AIだって基礎理論は全て線形代数と統計学なので。
最後に、留学については「行けるなら行っといたら?」という感じです。英語を勉強したいなら留学よりもオンライン英会話の方が伸びると思いますし。文化体験という観点だと、留学よりもバックパッカーの方が強烈な経験でしたね。自分も東南アジアを2ヶ月フラフラしていたことがありましたが良い体験ができました笑。もちろん、海外に行って英語を話せることは良いことですが、それ以上にハードスキルを身に着ける方が重要ですので、やっぱり何か勉強しまくることがとても大切ですよ。


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