P.S

解散して18年も経つ、でも大好きだったバンドが『転生』した。
あなたのことを強く強く思い出した。
あなたも『転生』してるかもしれない、と思いながらも。

初めて会った時に好きなアーティストの話になって、同じバンドが好きだと知った。
同じようにリスカ痕があって、
同じように親のことを好きになれなくて、
同じように精神科通いしてて、
同じようにOD繰り返して、
同じように仕事したりしなかったりして、
同じように短気で
同じように気分の上下が激しくて、
でも違ったのは、あなたはもう死んでしまったこと。

もし生きてたら今度のライブ絶対一緒に行ってたと思う。
高速バスの中で合流して、あの曲やるかな、この曲やってくれるかな、グッズ何買おう、なんて話して。
ライブ終わったら大興奮で二人で感想戦やるの。お酒片手に。
あなたはカシオレ、私はハイボールで。
あぁでも面倒臭いから二人ともカシオレかな。
それで、帰りの高速バスの中では酔いも回って疲れ果てて二人して寝ちゃうの。
絶対絶対楽しい。
バンドが転生しても、あなたがそこに居ないなら、どんなに願ってもそれは絶対絶対叶わない夢。

よくカラオケ行ったよね。
私はその頃SHAKALABBITSとかが好きで、他の人と行く時はそればっかりだったんだけど、あなたと行く時は二人でそのバンドばっかり歌ってた。
男性ボーカルだから私たちには低過ぎる、でも二人とも無理して原曲キーで歌ってた。
あなたが好きな曲はbeauties、この曲も転生してるよ。
間奏の時に言う「my dear beauties」はきっと私たちファンのことなんだろうなって勝手に思ってる。

今度のライブでbeauties演ってくれたら多分泣き崩れると思う。
あなたと行きたかったライブで、あなたの好きな曲なんて。
あぁ、でもどの曲でも泣いちゃうな。
あなたと過ごした季節はたった3つ、梅雨前に出会ったあなたと春は迎えられなかったのに。
それでも、今まで生きてきた中であなた以上に私に似た人なんていなかったし、このバンドが好きって言う人もいなかった。
あんなに頻繁に遊んだこともないし、これからも多分ないだろうし。
だけど、だから、こんなにあなたは色濃く私の中に息づいてる。

あなたが人生で一番しんどかった時、伸ばされた手を掴めなかった。
あなたが一番孤独を感じた夜に、かけつけることが出来なかった。声をかけることすら。
……違う。
掴めなかったんじゃない。掴まなかった。
声をかけられなかったんじゃない。声をかけなかった。聞こえないふりをした。
そうしたら、もう二度と会えなくなっていた。
嫌われたって思ったって、後になって共通の友人から聞いた。
嫌いになんてなるはずない。私に似てるのに、私とは全然違って、自分がしんどい思いをしていてもあなたは自分を犠牲にしてまで私に声をかけてくれた。手を握ってくれた。
そういう、優しいひとだった。
けれど私はそれが出来なかった。自分がしんどい時は自分優先、それで大切なものを見落として、それはもう二度と得られない。
誤解を解く手段なんてどこにもない。

だからね。
本当はライブに行くの少し躊躇っていたの。
あなたがいなくなった後、喘息になっちゃって。
今のご時世だから、ちょっと不安で。
まぁでもこれで死んだらあなたに直接「ごめんね」って言えるから、それはそれで、とか思うこともあったけど。
でも私が死んで私と同じ思いをする人がもしかしたらいるかもしれないから。
こんな思い、私と、共通の友人たちだけで充分よ。

でも、あなたのこと沢山沢山後悔して、なるべく後悔しないように生きようって思ったから、泣き崩れようがコロナに感染しようが行くことにしたよ。
転生してたら会場には来れない、転生してなければこっそり一緒に見ようよ。

雨の日のライブは好きじゃない。
でも、隣にあなたがいれば、雨の日もゆきの日もきっと楽しい。
『君が空からゆきを降らす、あの日と同じ様に』

そういえば、ゆき姉、雨女だったね。
私晴れ女なのになんでライブの日雨なんだろう、ほかのライブでもほとんど雨に降られることなかったのにって不思議だったけど、ようやく合点がいったよ。

P.S 君にあいたい

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