カグラバチ 57話「崩壊」 考察
こんにちは。熟 続( つくづく つづく )と申します。
書き物をしたくてアカウントを作りました。
今回は私のジャンプ一押し作品、「カグラバチ」の最新57話についてお話します。
※カグラバチの重大なネタバレが含まれます!!
1.あらすじ
冒頭は”血鶴”に乗せた”飛宗”が伯理の”蔵”の転送により消失したシーンから始まります。昼彦が奪われた”飛宗”に「くそ」と呟めきます。
一方、慚箱「仙沓寺」では”飛宗”を回収した座村が毘灼の野良妖術士を一掃。神奈備の妖術師もそれぞれ驚きを隠せません。”飛宗”による野良妖術士の一掃を目の当たりにした松を操る妖術士は「こりゃ盤面が騒がしくなる。」という意味深な台詞を残して仙沓寺を後にします。
状況が落ち着いた仙沓寺では方陣によって転送された漆羽や伯理が再度現場に集合。伯理は「”酌揺”も転送するよ」と言いますが、鼻血を大きく垂らしながら息も絶え絶え。その様子を見て巻墨の女性が「異常を来してる」と”蔵”の使用を制止します。実際に毘灼の戦力は”雫天石”を大量投入したことで大きく削がれ、あとは伯理の回復を待って”蔵”の転送で妖刀を全て回収すれば任務完了です。
各々が今後の行動を話合う中、座村が浮かない表情で「全員無事なんだろうな」と問いかけます。しかし彼の願いも虚しく、仙沓寺では一人の青年が犠牲になってしまいます。自分を守るために命を落とした青年を見て、座村の頭に一つの言葉が過ります。
「おれたち契約者の命は、特別重いんだ」
漆羽の言葉に歯を噛む座村に巻墨の女性が「彼の死は無駄じゃない、戦いに大きな区切りがついた」と諭しますが、座村はそれを否定します。
「残念だが…ここからだ。」
場面は冒頭に戻り、千鉱と昼彦のシーン。昼彦が「失敗だ…”飛宗”取られた。」と呟き、千鉱は伯理の”蔵”による転送に勘づきます。一方昼彦は”飛び宗”を盗られたにも関わらず、不敵な表情を崩しません。「剣聖を殺し幽が真打を振う。」と毘灼の目的を語る昼彦に「契約者は誰一人死なせない。」ち千鉱は語ります。昼彦はその様子に「幽の言う”青い”はこれか。」と含みのある言い方をします。幽の言葉を逡巡する千鉱に昼彦はこの国における”剣聖”を始めとした妖刀契約者について話します。
公教育では妖刀契約者は六平国重に並ぶ「英雄」として教えられています。千鉱も同様に本から契約者の世論を学んだようですが、父親である国重はそんな「英雄」である剣聖については、”真打”と同じく口を濁していたようです。
昼彦はそんな千鉱に対して「上っ面しか知らないんだろ?」と語り掛けます。千鉱も昼彦の意見と同様に”真打”の力の禍々しさに疑念を抱いていました。長年千鉱は国重が”真打”や”剣聖”について口を濁したのは”真打”の強大な力を封じるためだと推測していましたが、一つの疑念が浮かびます。
”真打”の暴走の最中、京羅の中に感じた別の人間。それが”真打”ではなく”剣聖”による意図的なものだとしたら…
世論とは違う、邪悪な「剣聖」の可能性。
思考がまとまらない千鉱を意に介さず、昼彦は語ります。「少なくとも座村はそう思ってるんだろうな。」「だから3年前に幽と協定を結んだ。」千鉱は散らかる思考を振り払い、「お前たちに妖刀は使わせない。」と強い意志を示します。しかし昼彦は冷静に返します。「もう”こと”は起こってるんだからお前が意気込んでも仕方ない。」「座村は”契約者こそ死ぬべきだ”と言っていた」
ここでようやく昼彦の口から出た”座村”の名前を認識し、動揺を隠せない千鉱。昼彦は千鉱に語ります。
「俺たちはただ殺し合う…だろ?」
途端、”血鶴”によって支えられていた”酌揺”が天井から落ちてきます。それと同時に昼彦は切り落とされた自らの腕を千鉱に投げつけ抵抗。同時に窓から”毘灼”の増援が千鉱を襲いますが冷静に対処。千鉱が昼彦に視線を戻すと、昼彦があの妖刀の名を口にします。
「酌揺」
”血鶴”はただの紙にもどり、新たに遊女のような形をした二対の玄力が昼彦の周りを舞います。
千鉱の脳裏に浮かぶ漆羽の姿。戦況が”崩壊”したその時、転送の玄力反応を見せながら物語が終わります。
2.考察
今回は特に衝撃の回でした。物語のポイントは大きく分けて二つ
①座村の裏切りと目的
②契約者に対する世論と真実
の二つです。順に考察していきます。
2-1.座村の裏切りと目的
「妖刀所有者の中に裏切者がいる。」という話は界隈では早晩囁かれてきた噂ではありますが、その正体が座村であると判明しました。とはいえここ最近の展開を見て座村が裏切り者だと予想できた人はいないのではないでしょうか。
要因は色々ありますが、一番大きいのは座村の仲間想いの人柄でしょう。”妖刀”を持たずとも、仲間を守るために自ら前線に立つその姿を丁寧に描写してきた後のこの展開ですからね。深夜24時付近のTLは進撃の画像で埋まりまくってたような気がします。
しかし、座村は同じ妖刀契約者の漆羽と決定的に違う点が一つありました。
それが、「他者の命の価値観」
妖刀契約者は他者の命よりも重いと論ずる漆羽に対し、座村は自分を含めた他者の命も皆平等だと考えています。(これは座村の信仰する仏教に基づくもの)
しかし座村を除く人間は彼に対して「命の重さの違い」を説いてきました。おそらくそれは18年前の「斉廷戦争」から。その結果、彼は妖刀を「他者を守る力」ではなく「命を奪う呪い」だと感じるようになっていったのでしょう。
それが3年前の”幽との協定”、つまり毘灼への内通に繋がる結果になったと考えられます。
そして3年前といえば「六平国重襲撃事件」そして「刳雲所有者、巳坂暗殺事件」と時期が同じです。おそらくこれらは何かしらの意図を持って設定されていると思いますが、これらについては後の【3.憶測】で詳しく述べていきます。
そして座村の目的は昼彦の言葉にあったように「妖刀契約者の抹殺」に他なりません。
①昼彦と”酌揺”の契約
②”血鶴”の消滅
以上の2つの描写から昼彦と”酌揺”の間に「命滅契約」が成立したことが分かります。仙沓寺メンバーの中で漆羽を殺害できるのは、合理的に考えれば漆羽の師であり妖刀を取り返した”座村”以外に選択肢がありません。(もちろんぽっと出の妖術士の可能性はあるものの、外園先生はそういう展開はしないイメージ)
命滅契約を破棄し妖刀を手に入れたい”毘灼”と、妖刀契約者を殺害したい”座村”との間には、確かに一時的な利害関係が成立すると考えられ、やはり”座村”は裏切者であると考えるのが妥当でしょう。
個人的にも漆羽の戦闘はもっと見たかったのですが、「師匠」という上位互換が作中で出てしまった以上、作品における役割は薄くなってしまったので妥当といえば妥当かもしれません。千鉱の師でもある”座村”を今後どう打ち破っていくのか、注目したいですね。
2-2.契約者に対する世論と真実
今回特に注目したい情報の二つ目、妖刀契約者への”世論”と”真実”です。こういった世界観の掘り下げは、考察者のような重箱の隅をつつくことに快感を覚える人種にはうれしい限りです。
「序章」「対双城編」「楽座市編」でも述べられてきたように、カグラバチ世界では妖刀契約者は”英雄”として崇められてきました。しかし腑に落ちない点が一つ。それが剣聖の扱いについて。
剣聖は神奈備によって名目上保護されていますが、作中の描写では保護というより牢獄への”監禁”に近い形に思えます。扱いとしては”英雄”よりも”罪人”に近いでしょう。
その他妖刀契約者が温泉、寺、神社、すし屋と快適(?)な生活が保障される中、最も勝利に貢献したと思われる剣聖だけが牢獄生活なのは違和感を禁じ得ません。そこで②千鉱は「剣聖や真打には世論とは別の”真実”がある。」と感じたわけです。
またこれまでの神奈備の動向から真打を戦力として用いる気はないことが伺えます。実際、楽座市後に回収された”真打”を再封印する形で動いていることからも明らかです。剣聖の人格的問題、この辺りの謎はやはり斉廷戦争に隠されているのでしょう。
3.憶測(筆者の与太話)
ここからは”考察”とも呼べないような筆者の与太をお話していきます。ご興味があれば是非お付き合いください。
3-1.六平国重襲撃事件に関する与太
今話の鍵になるのはやはり3年前の「六平国重襲撃事件」「刳雲所有者・巳坂暗殺事件」の2つ。
これらの事件は”毘灼”が活動を広げた3年前と合致しており、「六平国重襲撃」については”毘灼”の関与が明確に描かれており、「巳坂暗殺」にもほぼ確実に関与しているものと思われます。
さてここで座村と六平家との関わりを時系列でまとめます。
18年前 …斉廷戦争(飛宗と契約)戦争終結後…国重、山中に隠居。座村視点では行方不明に。国重襲撃前…祭りに出た柴、千鉱と遭遇。国重の生存を知る。
作中の描写から、国重の生存は契約者にも隠匿されていることが分かります。神奈備の最重要機密である”六平国重の居場所”がなぜ”毘灼”に漏れたのか。
この点については「”毘灼”と”神奈備”の間に内通者がいる」と柴が述べていましたが、そもそも”六平国重の生存”を確認できなければいけません。
では”六平国重の生存”を確認したのは誰か。
国重襲撃前に祭りで出会った”座村”に他なりません。(六平をかくまった神奈備幹部の可能性ももちろんありますが、今回は関係ないので除外)
ですが、座村には”六平国重”を殺害する理由がないように思えます。座村は「妖刀契約者こそ死ぬべき存在だ。」と語っており、刀匠である国重は直接的に命を奪う存在ではありません。座村自身も「雑な殺生」には抵抗がある描写がされています。つまり六平国重を殺害しなければならない、座村の”信条”に反する行為を国重がしてしまったと考えられます。
新たなる妖刀「淵天」の製作。
しかし祭りの描写だけでは国重が「淵天」を制作したことは語られておらず、もちろん柴も漏らしていないでしょう。では、座村に淵天の制作ががバレた理由は何か。
座村は盲目である代わりに他の感覚が特別優れていると語られています。
そして”妖刀”には特有の玄力反応があると作中で示されています。この妖刀特有の玄力反応が製作段階で微量でも現れるものだと仮定すると、ほんの微量の玄力反応が千鉱に沁みついている可能性は大いに考えられます。特別他の感覚器官が優れた座村がその玄力反応を察知するのは、おかしなことではないのかもしれません。
3-2.斉廷戦争の与太
今話で言及された作中最大の事件ともいえる斉廷戦争。日本に「敵」が襲来し危機に瀕しますが、六振の妖刀が状況を好転させ、日本を勝利に導いたとされています。その中でも特に”真打”は妖刀の中でも最後に投入されたことが楽座市編の漣京羅の演説から分かります。
これらの情報から戦場に投入された順番としては、座村が先に斉廷戦争に投入され、その後”剣聖”の力を目の当たりにすることになったと考えられます。
さて、”敵”は当然日本を侵略するつもりで襲来したわけですが、最終的にはその目的は達成されずに撤退したものと考えられます。
撤退した要因として考えられるものはただ一つ、侵略するには戦力が足りないと判断したことに他なりません。しかし漣京羅の演説から、妖刀五本が投入されたまでは少なくとも”敵”は撤退していないことが分かります。つまり斉廷戦争の”敵”の戦力は
妖刀五本≧敵
と推測できます。しかし”真打”が投入されたことで戦争が決着。よって
真打+妖刀五本>敵
となるでしょう。
しかし”真打”の力は鞘に納められた状態で、”淵天”と”炎骨”を同時に捌ける力を有しています。
また”真打”の玄力が拡散していき、触れたものを蝕んだのち殺害する描写も見て取れます。
斉廷戦争において脅威となったのはこの”無差別範囲攻撃”と”圧倒的な対人性能”を両立によるものだと考えられます。
では座村は”真打”のこれらの力を見てどう感じるでしょうか。仏教の教えに基づき「雑な殺生」を拒む座村にとって、”真打”の無差別殺害は座村の信条と相反する力と言って差し支えないでしょう。しかしその力を座村個人が対処するには余りに強大すぎる。だからこそ剣聖を殺害するため”幽”と協定を結んだのかもしれません。
4.感想
昼彦が扱う“血鶴”が折り鶴をモチーフにしていたことから、座村が殺されて”飛宗”が奪われると思っていたのですが…まさかの展開でした。
漆羽の生存は絶望的ですが2厘程度の可能性に賭けてみたいですね。
…もっとも、外園先生がそんな甘い展開を描くかと言われればNoなんですが…
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