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明日

子供の頃、オレンジ色のスカーフが好きだった。それはツルツルした肌触りの大きな布で、どんな服にも首からぶら下げたらオシャレに見えた。

ある日隣の部屋から大人達の険悪な会話が聞こえてきて、つまり夫婦喧嘩だった。

私はなんと不幸な子供なのか、と強く感じるセンサーが働いて、堪らなく苦しく、希望も価値も、全くない世界に居るような気がした。

それで、そっと試しにスカーフで自分をきつく締めてみた。咳が出た。つるつるが抵抗した。涙が出てきた。


両親は結局、一生添い遂げた。

毎日、毎日、明日が来る事が辛かったのかもしれない。2人の大人達。あの時は、こうだったね、などと懐かしく笑い話にはなるけど、きょうだい同士ではまだ余裕がない。多分、あの子も自分のスカーフを隠して生きてるはず。

赤々とした夕焼けは明日の天気が荒れ模様を感じさせて不気味で美しくて怖い。

明日も生きていくしかない、と思いださせる。

それでもスカーフのつるつるが私を助けたように、ささやかな生きる喜びがオシャレには生まれたりする。

今でもオレンジ色が好きだ。



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