プッチーニのオペラ『トスカ』、ピアノ11分にまとめたった!~制作秘話~

【Symphonic Metamorphosis on Tosca】 作曲:藤川有樹


~2023年3月の藤川有樹さんのインスタグラム・ライブより~

きっかけは2023年3月18日に浜離宮朝日ホールで開催された「Prince Gala~4日遅れのホワイトデー 王子達からの贈り物~」(高島健一郎、堺裕馬、鳥尾匠海/ピアノ:藤川有樹)

けんちゃん(高島健一郎)が「せっかくだから10分くらい何か弾いたら?」って言ってくれて、「じゃ、書くか」ってなって。
ピアノのために書かれた既存の曲もいっぱいあって、それを弾くのもいいんだけど、せっかくの歌のコンサートだから、どうせだったら歌にまつわる新曲を僕が書いた方がプログラムとの相性がいいかなって思って。昔からやろうと思っていたジャンルというか、シリーズでやりたいと思っていたことがあって、それがオペラの編曲。トランスクリプションって言って、ピアノ用に編曲したもの。リストがいっぱい遺しているんだけど、リストが書いたものを僕がやるのもあれなんで・・・。

オペラで有名な作曲家っていうとプッチーニとかね。蝶々夫人とかボエームとかトスカとか結構いっぱいあるんですけど、でもリストが死んじゃった後なんで、リストがピアノ編曲を書きたくても書けなかった曲がいっぱいあって、そこら辺を僕がやるかっていう感じ。

一応今、計画としては、僕は今年31歳になるので、今年始めて全9曲シリーズでオペラ編曲もの9曲を1年1曲で書いていこうかと思って。そうすると40歳になるまでに9曲シリーズの1セットができる。超長期企画。
今年始めるとしてどれがいいかなって思って、プッチーニのトスカやな、と。それをPrince Galaでお披露目させて頂けたらなって。

トスカは初演の時から大人気の悲劇オペラ。悲劇アルアルなんだけど、言っちゃえばみんな死にます。登場人物みんな死んじゃう。まあ大悲劇ですよ。ただまぁ曲が良い。滅茶苦茶いいメロディーに溢れてる。
調べたら、トスカのピアノアレンジを作ってる人がいて、でも難癖をつけたいわけじゃないけど、その人が選んだアリア以外にもいっぱい良い曲あるやんって思って、出来るだけいっぱいアリアを盛り込みたいなっていうアイデアがまず最初にあった。使いたいアリアを全部ピックアップして、それがどうやったら繋がるかなって考えて作りました。ピックアップしたメロディーはほぼ全部入れました。僕、欲張りなんで、全部入れちゃろって思って入れました。

プッチーニが面白いのは、登場人物を表わすメロディーみたいなのがあって、オペラの冒頭はスカルピアを表わす主題から始まる。オペラ全編にわたってこの感じが出てくる。

プッチーニのオペラって、ずっとメロディーがあって、いつのまにかアリアがあって、また音楽があって、ずーっと続いてる。だから、アリアだけ抜き出すっていうのが難しいんだけど、糊代が両側についてる感じで、それを使ってリミックスできるじゃんって思って、そういうところから作ってます。
でも10分くらいの曲ってことだったので、それが大変だった。11個くらいメロデイーをピックアップして、それを10分にまとめなきゃいけない。しかも曲として一つの盛り上がりになってないといけないっていうね。
1幕の最後にスカルピア、警察の奴ね、が歌うテデームっていうアリアが5分くらいあるのかな。このオペラの中では長めのアリアで超カッコイイ。でもこれも大変だったんです。10分の曲なのに原曲のアリアが5分ありますって、もう半分じゃないですか。そのままこの曲を入れちゃうと書く予定の10分の半分を使っちゃうぞ、他のアリアを入れられないじゃないかって思っちゃうでしょ。でね、削らないといけない。どうやって削るかっていろんな削り方があるし、難しかったです。

ピアノで編曲をする時に難しいアリアは長い音で歌ってるようなやつ。ピアノって音を出したらどんどん減っていくから、伸びてる音を膨らますって出来ないから、長くアーッて歌ってるのをどうやって表現しようっていうのが難しいですね。
あと9曲のシリーズは1曲のアリアを編曲するんじゃなくて、10分だとしたら、僕の編曲を聴くだけでそのオペラ全編を見たのと同じくらいの価値が出せないかなって、それ自体でオペラがわかった気になれるようなやつを作りたいんですよね。だから、このアリア良いなっていうのがあるオペラでも、他のアリアが良いアリアがないなっていうオペラだと、やっぱり作りにくい。その点、今回のトスカはずっと良いアリアなんで書きやすかったですね。

僕の編曲を聴いて、オペラに興味を持って見始める人が増えるといいなって感じ。そういうコンセプト。カルメンも書こうと思ってるリストに入ってます。蝶々夫人もいいですね。リストに入ってます。暫定なんで、まだ決まってはないんです。
なんで9曲?って思ってる人もいるかもしれませんが、ミューズってわかりますか。芸術を司る女神は一人じゃないんです。9柱、9人の女神がいるんです。色々司ってるのを全部合わせて9人。ミュージックの語源。それに絡めて9曲できないかなって思って、1年に1曲のペースで書いていきます。一大計画。シリーズものは書いてみたいなって思ってて、これくらい壮大な方が面白い。9年って言ってるけど、もうちょっと巻くかも、早いペースでやるかもしれないけど、あまり時間に追われずにいいものを書きたい。しっかり作ったものをちょっとずつ出していけたらって思ってる。9曲全部うまく書けたらいいでしょうね。セットとして、リストに挑むかって思って。
歳を重ねると編曲したい曲も変わるでしょうね。今は暫定で9曲選んでるけど、変わっていくかもしれない。最後にどの9曲になるのか楽しみです。バトルロワイアルです。いっぱいオペラあるんで、本当は9つじゃ足りないんだけど、まぁとりあえずはその9曲をセットにしてドンッて僕の記念碑的なやつを作りたいなっていうのがありますね。

リストはね、プッチーニの時代にリストが生きていたら絶対書いてただろうって思うんで、リストに出来なかったことなんで、僕がやらしてもらおうかなって思ってます。リストに対して、「いいだろ~、羨ましいかい?」って思ってます。

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「無断で抜粋&編集したった!」なので、この記事がある日消えていたら、あ~、ご本人に見つかって叱られたんだな・・・って思ってくださいね。

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