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怖い話・ホラー短編|『売れない画家』
私は、風景画を書いている画家だ。
まだ売れない画家だけど、いずれは大物になりたいという野望がある。
今日は、とある運動公園に来ていた、園児たちがキャッキャと声を上げながら楽しそうに遊んでいたり、犬の散歩をしている夫婦がいたり…平日の昼間だと言うのに公園内は盛り上がっていた。
良い風景を探すのに、両手で人差し指と親指をフレームに見立てて、右目で構図を確認する。
昔の画家がよくやるポーズだ。
無邪気に遊んでいる園児たちと雲ひとつ無い青空に、色とりどりの花。
小さな幸せが積み重なっていると感じ、その絵を描くことに。
完成した絵は、急遽知り合いの画家の個展に置いてもらえることになった。
1週間後の個展当日、私は自分の絵が飾られているのを眺めていると、1人の老婆に声をかけられる。
「この絵、あなたが書いたの?」
「あ、は、はい!私が描きました。」突然声をかけられ動揺した。
「とてもいい絵ね、私に売ってくれない?」
「もちろんです!ありがとうございます!」私は目を輝かせながら答える。
個展に出しても、売れることはなかなか無いため、とても嬉しかった。
その老婆は、私が考えていた値段の倍以上の金額で購入。
絵が老婆の家に届いたらしく、連絡が来た。
「無事に届きました。皆ちゃんと連れて行ってあげるから安心してね。」
それから3日後、××園の園児と先生が保育園バスの事故で全員亡くなったらしい。
私はそのニュースを見て目を見開いた。
それは絵のモデルにした園児と先生…。
落ち着くためになにかの偶然だろうと思い、心にモヤモヤを残したまま絵を描くために外出することに。
今日は、繁華街の絵を描くことにした。
いつも通り構図を決め、筆を動かす。
ネットの販売サイトに絵を載せる。
すぐにコメントがつく…「その絵、購入します。」表示されている名前があの老婆と同じだった。
また、倍以上の金額で購入…嫌な胸騒ぎがするが梱包作業を進め何も無いことを祈る。
絵が老婆の家に届いたらしく、また連絡が来た。「無事に届きました。私ね、最近赤が好きなの。」
それから3日後、その繁華街の店でガス爆発事故が起こった。
絵に描いた店舗全てが全焼し、そのまま閉店することになったらしい。
私は呪いの絵を描いてしまったのか。
それとも、あの老婆の仕業なのか…。
私はそれ以来、絵を描くのをやめた。