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汝、隣人を愛せよ。
4月公演『しょんぼりサーベルタイガー学園前』を、観ました!分かってます、草稿だいぶ遅いです。。でも書きたいので書きます。レビューが追いつかないスパンで単独やらないでください、尊敬してます愛してます。
●『シロツメクサの冠』
コレコレ!って感じしましたね〜既視感がありながら新しさもある。これ程までに情景が浮かぶコントってなかなか無いんじゃないかと。柔らかいタッチの絵本のよう。その中に散りばめられた関西弁の愉しさ。ファンとして、原点に立ち戻った感覚がしました。
フォトブラフに陶酔する可憐な少女と、あったか関西弁のお父ちゃん。平井さんの創る女性はいつも本当に可愛くて美しい。それは真っすぐな心が内から出ているからだと思います。でもこれは前から分かっていたこと。加えて今回気付いたことは、そんな女性の隣に立つ彼もまた美しいということ。「ほなな、みぃちゃん」…こんなに優しい音色どうしたら出るのでしょう、蕩けましたよ。「肉親でよかったぁ!」…初めて聴きましたよ、どうしてそんなに嬉しいんでしょう。つんけんしながらも作品計画を教えちゃう&一番に渡すことを決めているみぃちゃん。素敵な関係が生み出す柔らかい空間がここにある。もう、戦争とかやめませんか。
花籠を握りスキップを構える舞台袖のみぃちゃんを見てみたい所存です。。
●『ドア トゥ ドア』
愉快愉快。言葉のオンパレード。コトバのおもしろさを教えてくれる。
男ブラさんのこういう言葉遊び一本で通すネタって、音楽聴いてるような感覚になりませんか?おそらく、韻を踏むリズムが絶妙で、台詞がリリックになってしまっているのです。これが狙っているのか偶然なのか、、いやそんな次元じゃない気もします、、彼の体に音楽が流れていて自然に出ちゃってる、なのか。
友達設定でみられる"ふたり"がすごく好きです。気にかけて気遣って、オコって許して、寄って離れて、歩み寄って突き放して、困って揺らいで、受け容れて呆れて。こうやって友達やるんだよって見せてくれる。もう、道徳の教科書とか取っ払ってコント観ませんか。
次なる政策はGo To コンパで、おパントゥドアはよくない発言だそうです、勉強になります。
〇『景色』
「この星空、かっこに閉じて持って帰りたいね」「….それだと下にダダ漏れだけれども」・・・冒頭のこのターンが好きすぎました。何言っても許されそうな彼を、たった一人許さない彼という構図。この"許さないこと"こそが愛だと解釈します。そして後半の男性ブランコ節。ぐーっと引き寄せてぽんっと投げられたフレーズ。一気に空気が澄んで息をのみました。直後、つっかえが取れた感覚と切なさ。あぁそうか、そうかぁ、、
一番想像が膨らみましたね。ここに誘ったのは、どうしようもない奴の方。車を出させてまで見せたかった景色、いや伝えたかったコト。抑えて抑えて、なんとかどうにか持ってきて、だけどいざ口にしたら、全部全部押し寄せてきて、、堪えて距離をとって、俯く。でも届けなきゃ。「吐くほど諦めるなよ」・・・なんと美しい世界か。なんと丁寧な描写か。忖度なしにすごい。
思い違いだったら申し訳ないのですが、このタイトルだけ鍵かっこが付いていたような。いろんな意味が含まれていそうです。センスが並大抵じゃない。そんでもって志がビッグな奴は、あぁやばそうだな。
〇『入社式』
キターー浦井さんボケ!!いや大きすぎるのよ、パッケージごとボケてるのよ、出オチなのよ。なにアメリカンバイクルックしてんのよ。目の前の友達、すごいナチュラルに固まってたよ。
浦井さんの強キャラの時って、平井さんはぐっと引き下がるんですよね。逆の時は、浦井さんがどんなに普通の人を演じていても対等さを感じるのですが。んで引き下がって何をするかというと、正論を言う、っていう。とんちんかんな発言に対して言葉で返すっていう。しかもその言葉は、浦井さんがよくやる、上辺だけでも相手を気遣うみたいな素振りは一切無い、どストレートの吐き捨ての全否定「なんでだよ」「変だよ」「そんなことないだろ」・・・でも無機質ではなくて、引っかかる所は割り入ってでも言うし、母のように見捨てず寄り添う・・「知らないことって可哀想じゃなくない?」「そんなに辛いことなの?頑張れ頑張れ」。「めんどくせぇ」に込められた愛情は、語るまでもない。
ギッチギチの手袋は、緊張を解す。ふと"ふたり"に戻った瞬間でしたね。
〇『値引きシール』
これは震えましたね。これは、まじですごい。欲を言えばYouTubeに上げて欲しい。何っ回も観たいし、彼らをまだ知らない人にも観て欲しい。とりあえず何かに表彰されて欲しい。
ひと言で言えば"温度差"でしょう。スーパーの店員/値引きシール/パック寿司/ポップな狂気・・・3億円/人間不信/手紙語り/抱えるものの深刻さ。道具としてはこのくらい。
このコントの、凄いを超えて怖いところというのは、物の値下げが人の存在価値にリンクする発想です。ある種、触れてはいけない線じゃないですか。表現の在り方として若干尖っていて危うい領域。人々の心にざわめきを与えて、観ることに責任感を持たせる、自由に笑うことを踏み留まらせる。。
「自分の価値を、そんなもので下げるなぁ!!」
この台詞に救われました。ハッとなって、ほっとしました。セカイに落ちかけたのを引き上げてくれました。そして畳み掛ける。
「自分の価値くらい、自分で決めろや!」
ここまで来たら、大丈夫。これが言いたかったんだもんね。浦井さんが力んで声張って伝えてくれたから、もう大丈夫。よかった。
大金、と聞くと例のラヴィット(引っ越し編)が連想されて、あぁこの人はこんなに忙しい中でも実直に生きてるんだなぁ、、今しか創れないものを作ってはるんやなぁと思ったり、、だとしたらちょっと心配。いや、これはコントか。
●『長い渋滞』
おぉ〜ええやん、ジューター。ジューター???暇つぶしに、とか、ストレス発散に、とかじゃなくて「アイデンティティを得ている」がいかにもですね。真っ向から怒れないじゃん。ありそうで無かったを突いてきますねぇ。
冒頭、チャップリンが生き返ったのかと思いました。杖持った瞬間に思いついてそう。。動きと喋りの絶妙なウザさ。頑なさと人のよさのバランス。心に関する概念的なものを細やかに映し出すのがほんとにお上手ですよね。
そんな彼を動かそうとする誠実な青年。「なにしてんのぉ?」がそれしかなさすぎて笑いました。渋滞作りが趣味とか言ってくる奴をよくも更生しようと思いましたよね。真っ直ぐでなくうっすら角度をつけてアプローチする態度だったり、ふと見せる大人びた雰囲気や達観した思考は、平井さんがそのまま移ったように感じました。「何かしらあるし、誰しも」が、あの静かな声のまま私の中に残りました。彼だからこそジューターに響かせることが出来たのでしょう。
あと、電話口の声が本当に優しくて温かくて。相手を大切にしているのが伝わってきました。どうか幸せになってほしいと、切に願います。。
『化けサーベルタイガー』
ばれないように ばれないように
また山月記からインスピレーション受けてそうですが、あまりにも日常に落とし込んでいるところが、なんとも恐ろしいのです。
*雑感*
設定が友達×日常のコントが多かったですね。この設定でよくあるのは"嫌な奴に翻弄される"で、終わりまで"嫌"のイメージが払拭されることは無いと思います(東京03/ジャルジャル/かまいたちをイメージしてます)。男性ブランコの中には確かに嫌な面倒な奴は出てきますが、そいつのイメージをどこかで"救う"展開ですよね。どんな設定でも軸がブレないのがすごいです。
またしても●関西弁と〇標準語の使い分けが引っ掛かるライブでしたね。関西弁でないと成立しないものもありましたが、言葉の良さ/おもしろさを噛み締めるような、フレーズの綺麗さが際立つものが多かったので、そのままお召し上がりください的な意図から標準語を選んでいるように思いました。でも『景色』なんかは、上京するという展開があるにも関わらず標準語なんですよね、興味深いです。
”節”と表現しましたが、持ち味である”「ゆれ」を作る・温度を変える”技巧を今回たくさん魅せてくださいました。これは個人的に関心が高まっているので、別のところで書こうと考えています。
こんな感じですかね。お付き合い頂きありがとうございました🙇♀️
次は『エドガーラビット』ですね…今日っ?!
皆様の明日が、美しく彩りますように。