シンフォニー

プリミ恥部さんが奈良の明日香村に来るらしい。
SNSでの告知をみて京都在住の私は動揺した。
沖縄在住のプリミさんが関西圏にくる。
近いといえば近いが交通の便を考えると気軽にすぐにという距離でもない。

迷っていたが、まぁでもあれだ。距離をものともせず行きたいとなれば行けばいいし、そうならなければ家にいればいいだけ。とてもシンプルだ。プリミさんもさんもそんなことを言っていた。

それで当日、私は奈良の明日香村にいた。
青い空と澄んだ空気ピンク色に広がったレンゲ畑を飛び交う蝶々にウキウキする。

会場となった飛鳥寺修徳院の広間は結構な人数で埋まっていた。私は端のほうに座る。
プリミさんが見てはいけない舞を踊る。
見てはいけないと言われたら見てみたい。
そうっと目を開けようとしたけれど、プリミさんにすぐにみつかってしまいそうで慌てて頭を下げる。

暫く頭を下げていたら喉がいがらっぽくなって咳がでそうになった。
そうだった。私は喉が弱いんだった。
クフンッ
クフンっと何とかこみあげてくる咳をやり過ごそうとしたけれど駄目だった。
水を手にそそくさと広間をでて、廊下にセッティングされていた椅子に座る。
椅子は木で編まれていて座り心地が抜群に良かった。
ガラス張りの窓からは外の景色がダイレクトに見える。
塔があって桜がある。
その後ろには山がある。
桜は、もう葉桜でチラチラと花びらが舞い落ちている。

歌が始まった。
歌いながらプリミさんはクネクネと踊る。
プリミさんはいい声だった。
YouTubeで聞くよりもずっとずっといい声。


私は窓ガラスごしに外を見ていた。そうしたほうがプリミさんの歌声を素直に受け取れるような気がしたから。
そうしていると不思議なことに気づいた。
プリミさんの歌がサビにかかると花びらが降り注ぐようにおちてくる。
気のせいかと思ったけれど、2曲目も3曲目もそうだった。屋根の上から、光った花びらが噴水のように吹き出したときは、どうなったらそうなるんだと驚いた。蝶が舞いトンボが弧を描くように横切る。

光に満たされた景色の中で花が虫がプリミさんの歌声に呼応して躍動している。
胸がいっぱいになって、その光景を目に焼き付けたくてじっと外を見つめていた。

これはプリミさんの力なのかな?

プリミさんが歌っている。

それは僕のせいさ まさにそうさ
それは僕のせいさ

やはりプリミさんの?

まさにそうさ 僕のせいさ


なんだかよくわからない。白昼夢をみているみたいだ。再びサビに入りプリミさんの声が伸びやかに大きくなる。優しい日差しの下で花びらが降り注ぐ。夢のようなキラキラとした光景に涙がでそうになった。



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