ちっちゃいおっさんと奇妙な話

随分 昔の話なのだが年下の幼馴染が
『ちっちゃいおっさんを見たことがある』と言い出した。
ベッドで眠って目をさますと、ちっちゃいおっさんが覗いていたのだそうだ。
私は、そっけなく『へー。そうなんだ』
とスルーした。
正直いうとめちゃくちゃ羨ましかった。
私だって見れるものなら、ちっちゃいおっさんを見たかった。
そうして数年たち私も少し大人になって、
『そういえば、ちっちゃいおっさんを見たことあるんだよね。』
とAちゃんに話をふってみた。
そうなのだとAちゃんは頷き
ベッドで眠っていて目をさますと、キッチンの仕切り度の隙間からちっちゃいおっさんの顔が覗いていたのだと言った。
私は、てっきりベッドで目覚めたら近くにちっさいおっさんがいてAちゃんを覗き込んでいると思っていた。
『よくちっさいおっさんに気づいたね。』
しかも寝起きで・・・。
『顔は普通の大きさやねん。』
『???』
ますますわからない。
よくよく聞くとAちゃんの家の仕切り戸は、すりガラスなのだが、中央付近だけは普通のガラスがはめられているらしい。
そこからおっさんの顔が覗いていたのだそうだ。
『じゃあ、それ普通のおっさんが体を屈めて覗いてただけかもしれへんやん!』
『そうやねん。』
『そうなん!』
仰け反った。
全然 羨ましくなかった小さいおっさんの話。

お父さんの話【1】

お父さんの知り合いで植物が好きなおっちゃんがいたのだそうだ。
そのおっちゃんは、
『わしな。毎日 これに水あげとるんや。花は咲かへんけどな。』
そう言ってかかさず水をあげていたそうだ。
けれど父親は気づいたらしい。その植物が造花なことに。さすがに笑いをこらえるのに必死で本人には言えなかったそうだが・・
私はゲラゲラと笑った。
笑ったけれど哀愁も感じた。

もう一つ、お父さんの話。
お父さんの知り合いで変わっているけど気のいい先輩がいた。
ある日、その先輩の家に遊びに行くことになった。
先輩は『ちょっと、今 おかんが寝てるけどな。気にせんといてくれ』といってお父さんを部屋にあげた。
母親の姿は部屋のどこにもなかった。
その代わり仏壇の遺影が横になっていた。
私はこの話もゲラゲラと笑った。
あまりに面白かったので知り合いに話してみたら知り合いは微妙な顔をした。
よくよく考えてみたらこれは面白い話でなく奇妙な話なのかもしれない。


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