試作8 異世界転生
ここに烏一匹がいるだろう。もし仮に、彼が異世界転生してきたものとしよう。前世でトラックか何かにより落命し、類稀なる力と使命を持ってこの世に生誕した。前世も烏なら、烏基準での能力を授かったのだろうか。それは何だろうか。烏においての幸福を実現する能力としてもたらされたそれは近所に生ごみが出現しやすくなるものであろうか。いや、そもそも烏にとってトラックによる落命は日常茶飯事だった。それは人間でもそうか。人が一人死ぬたびに知能と意思が薄弱な人々の世界が産出されているのか。これはつまり、走馬灯の互換といえるのか。現代の浄土思想たる異世界転生は、極限状態の脳が見せる厳格なのかもしれない。そう考えると悲しくなってきた。やはり永眠には夢が必要だ。