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「戉」「戊」「戌」「戍」、詳しく調べてみた④
水切(すいぎり)と申します。
前回、前々回、前々々回に続いて「戉」「戊」「戌」「戍」という4つの漢字について調べていきます。
今回は「戍」です。
※すぐ始まるので、①、②、③を見てからの閲覧をおすすめします。
④戍
まずzdic.netで「戍」を調べてみましょう。
(1) (会意。从人持戈。甲骨文字形,象人负戈守卫边疆。本义:防守边疆)
(2) 同本义 [guard the frontier]
戍,守边也。——《说文》。按,伐者左人右戈,人持戈也。戍者,下人上戈,人何戈也。
武王立重泉之戍。——《管子·地数》
彼其之子,不与我戍申。——《诗·王风·扬之水》
二世元年七月,发闾左适戍 渔阳。——《史记·陈涉世家》
又如:戍人(古代守边军士的通称);戍守(守卫);戍客(离开家乡戍守边境的人);戍逻(守边巡逻);戍役(戍边的军士);戍将(戍守边境的将领)
(3) 驻守 [garrison]
三男邺城戍。—— 杜甫《石壕吏》
僵卧孤村不自哀,尚思为国戍轮台。——宋· 陆游《十一月四日风雨大作》
又如:戍鼓(驻边军士所击的鼓声);戍主(古代驻守一地的长官);戍堡(边防驻军的营垒、城堡);戍御(防守御敌)
DeepL翻訳で日本語に翻訳してみると、
(1) (会衆。 槍を持つ男から。 神託の骨のグリフは、辺境を守るために槍を持つ男のようである。 原意:辺境を守る)
(2)[辺境を守る]と同じ。
守備隊、辺境を守る。 -朔文。 朔文』によれば、韋駄天の左の人は右の人であり、碁を持つ人も右の人である。 守備隊は下の人と上の人であり、碁を持つ人も同じである。
呉王は崇泉の守備隊を設置した。 -- 関子 - 地の数
彼の息子は駐屯地で私と一緒にいない。 --王翦-楊子水
乙卯元年七月、襄陽に駐屯していた陸朔の駐屯地が設置された。 --『大史記』陳涉世家。
他の例:駐屯民(古代の国境警備の兵士);駐屯(警備);駐屯客(国境警備のために家を出る);駐屯哨(国境警備の警備);駐屯兵(駐屯兵士);駐屯将(駐屯将兵)
(3) garrison(駐屯地
越城を守備したのは3人だった。 --杜甫『石壕官吏』。
孤独な村に横たわっていても、国のために蘭亭を守備していることを思い出す。 --11月4日风雨大作』(宋魯余)。
別の例:駐屯太鼓(国境で兵士が打ち鳴らす太鼓の音)、駐屯主人(ある場所の古代の総督)、駐屯砦(国境の駐屯地の兵舎や城)、駐屯防御(敵の防御)
まず、(1)から調べていきましょう。
④-1 甲骨文字
(1) (会意。从人持戈。甲骨文字形,象人负戈守卫边疆。本义:防守边疆)
「会意」とは会意文字のことですね。「槍を持った男」からということです。
甲骨文字はどのようなものかというと、
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・・・本家記事でも言っていましたが、ほぼ「伐」ですね。
④-2 文例
(2) 同本义 [guard the frontier]
「本义」というのは(1)の最後の方に書いてありましたね。「国境を守る」という意味です。
戍,守边也。——《说文》。按,伐者左人右戈,人持戈也。戍者,下人上戈,人何戈也。
武王立重泉之戍。——《管子·地数》
彼其之子,不与我戍申。——《诗·王风·扬之水》
二世元年七月,发闾左适戍 渔阳。——《史记·陈涉世家》
又如:戍人(古代守边军士的通称);戍守(守卫);戍客(离开家乡戍守边境的人);戍逻(守边巡逻);戍役(戍边的军士);戍将(戍守边境的将领)
文例多すぎだろ。文例が本文より長いことある?
・・・1つ1つ調べていきましょう。
④-2-1 説文解字
「说文」とは「説文解字」という最古の漢字字典のことらしいです。「説文解字」内に「戍,守边也。」がないか探してみます。
見つかりました。
戍:守邊也。从人持戈。
漢字字典なので、「戍」に関する説明が書いてあるだけですね。
「按,伐者左人右戈,人持戈也。戍者,下人上戈,人何戈也。」については、引用元とみられるものが見つかりませんでした。おそらくzdic.net独自の文章だと思われます。
④-2-2 管子
「管子」というのは戦国〜漢の時代にかけて書かれた本の名称らしいです。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉はここが由来とのことです。初めて知りました。
では「武王立重泉之戍。」の引用元を調べていきます。
見つかりました。
桓公问于管子曰:“吾欲守国财而毋税于天下,而外因天下,可乎?”管子对曰:“可。夫水激而流渠,令疾而物重。先王理其号令之徐疾,内守国财而外因天下矣。”桓公问于管子曰:“其行事奈何?”管子对曰:“夫昔者武王有巨桥之粟,贵籴之数。”桓公曰:“为之奈何?”管子对曰:“武王立重泉之戍,令曰:‘民自有百鼓之粟者不行。’民举所最粟,以避重泉之戍,而国谷二什倍,巨桥之粟亦二什倍。武王以巨桥之粟二什倍而市缯帛,军五岁毋籍衣于民。以巨桥之粟二什倍而衡黄金百万,终身无籍于民,准衡之数也。”
DeepL翻訳に入れると、(長文注意)
桓公は関子に尋ねた。"私は世間に税金をかけずに国の富を維持したいのですが、世間があるので外に出たいのですが、できますか?" 関子は言った: "はい。 水と流路、注文が速く、重い。 前国王は徐德の命令で、国有財産の内安と外は世のためだ。"と言った。 煥公は関子に尋ねた: "どのように行動するか?" 管は言った: "前王呉はトウモロコシの巨大な橋を持っていた、高価な数を買い占める。" 煥公は言った: "何のために?" 管子曰く、"呉王は重泉の守備隊を設け、"民は百斗のとうもろこしを買い占めることはない "と言った。 民は重泉の守備隊を避けるために最も多くのとうもろこしを上げ、国の穀物は2倍、朱橋のとうもろこしも2倍でした。 呉王は朱橋のトウモロコシを2倍使い、絹と織物を売り出し、軍隊は5年間、民衆に衣服を登録する必要がなかった。 呉王は朱橋のトウモロコシの2倍を使って絹と織物を買い、軍隊は5年間人民に衣服を登録する必要がなかった。
どうやら「戍」は「守備隊」という意味で使われているようです。ちなみに「百斗」とは「200リットル」のことらしいです。
④-2-3 詩経
「诗·王风·扬之水」とは、「詩経」という中国最古の詩集の中にある詩の1つだそうです。全文は、
扬之水,不流束薪。彼其之子,不与我戍申。怀哉怀哉,曷月予还归哉?
扬之水,不流束楚。彼其之子,不与我戍甫。怀哉怀哉,曷月予还归哉?
扬之水,不流束蒲。彼其之子,不与我戍许。怀哉怀哉,曷月予还归哉?
DeepLに入れてみます。
楊の水は燃料の束では流れない。 彼の息子は駐屯地で私と一緒にいない。 私はいつあなたのもとに帰れるのですか?
楊の水は朱に流れず。 彼の息子は駐屯地で私と一緒にいません。 次の月、私はいつ帰りますか?
楊の水は北普に流れず。 彼の息子は徐の駐屯地で私と一緒にいません。 私は何月に帰りますか?
・・・まあ、詩は別の言語に翻訳してしまうと意味は通らなくなりますよね。
これがどういう意味なのか説明してくださる方がいらっしゃったら、コメントに書き残していってもらえるとありがたいです。
④-2-4 史記
「史记」とは漢の時代に作られた「史記」という歴史書のことです。その中の「巻四十八」を「陈涉世家」というそうです。では、その中に文例の文がないか調べてみます。
ありました!
二世元年七月,发闾左適戍渔阳,九百人屯大泽乡。
DeepL翻訳にかけると、
第二王朝元年七月、彼は洛朔を酉陽の守備につかせ、九百人の兵を屯田庄に送った。
・・・歴史書なので、普通に歴史が書いてありますね。
④-2-5 軍
ここでは6つの文例が並べられていますね。一旦1行ずつで並べてみましょう。
戍人(古代守边军士的通称)
戍守(守卫)
戍客(离开家乡戍守边境的人)
戍逻(守边巡逻)
戍役(戍边的军士)
戍将(戍守边境的将领)
これをDeepL翻訳に入れてみます。
駐屯兵(国境を守る古代の兵士の通称)
ギャリソン(衛兵)
駐屯兵(国境警備のために故郷を離れた人々)
ギャリソン・パトロール
ギャリソン(国境を守る兵士たち)
Garrison general(国境を守る将軍)
・・・なぜ中国語から日本語への翻訳で英語が出てくるのでしょうか。
ChatGPTで試してみます。
戍人(古代守辺軍士の通称): 邊境の守り手(古代の防衛兵士の俗称)
戍守(守衛): 防衛(守備)
戍客(離鄉戍守邊境的人): 故郷を離れて辺境で守る者(故郷を離れて防衛任務につく人)
戍逻(守邊巡邏): 防衛巡回(境界の巡回警備)
戍役(戍邊的軍士): 邊境の兵役(防衛任務に従事する軍人)
戍將(戍守邊境的將領): 邊境を守る将軍(境界を守る指導者)
つまり、軍に関係する単語が列挙されている、ということですね。
やっと全ての文例の説明が終わりました。しかしまだ3つ目の意味の説明があります・・・。
④-3 守備隊
(3) 驻守 [garrison]
「garrison」とは「守備隊」「駐屯地」という意味ですが、おそらく今までの意味から推測すると「守備隊」という意味だと思われます。
文例を見てみましょう。
三男邺城戍。—— 杜甫《石壕吏》
僵卧孤村不自哀,尚思为国戍轮台。——宋· 陆游《十一月四日风雨大作》
又如:戍鼓(驻边军士所击的鼓声);戍主(古代驻守一地的长官);戍堡(边防驻军的营垒、城堡);戍御(防守御敌)
「石壕吏」とは、古代中国の詩人杜甫が作った詩の題名です。
暮投石壕村,有吏夜捉人。
老翁逾墙走,老妇出门看。(出门看 一作:出看门)
吏呼一何怒!妇啼一何苦!
听妇前致词:三男邺城戍。
一男附书至,二男新战死。
存者且偷生,死者长已矣!
室中更无人,惟有乳下孙。
有孙母未去,出入无完裙。
老妪力虽衰,请从吏夜归。
急应河阳役,犹得备晨炊。
夜久语声绝,如闻泣幽咽。
天明登前途,独与老翁别。
一応DeepL翻訳に入れてみます。
薄明かりの中、私は獅頭村に行った。そこでは警官が夜間に人々を逮捕していた。
老人は塀を越え、老婆は見に出た。 (外に出て見る)
役人が怒りの声を上げた! 女は苦痛に泣き叫ぶ!
女は叫んだ:「三人の男が越城にいます。
一人目は手紙を持って来て、二人目は戦死しました。
生き残った者はまだ生きていますが、死んだ者はとっくにいなくなっています!
部屋には孫たちの胸元以外には誰もいない。
孫たちの母親はまだ生きていて、孫たちにはスカートがない。
老婆の体力は弱っているが、役人に夜戻ってくるように頼む。
老婆は力が弱っているにもかかわらず、役人に夜に戻るように頼む。
夜、老婆の声はすすり泣くように途絶えた。
夜が明けると、老人に別れを告げ、前方の道路に乗り込んだ。
自分は「筆者はどのような気持ちでこの文章を書いたか。」みたいなことは得意ではないので感想は個人個人に委ねますが、確かに「これこそが詩」みたいな感じですね。
「十一月四日风雨大作」とは、陸游という詩人が作った詩で、西暦1192年11月4日に作られました。
僵臥孤村不自哀,
尚思為國戍輪台。
夜闌臥聽風吹雨,
鐵馬冰河入夢來。
DeepLに入れると、
孤独な村に横たわっていても悲しくはない。
私はまだ倫泰で国のために尽くすことを考えている。
真夜中、私は雨を吹く風に耳を傾けた。
鉄の馬と氷の川が夢に出てくる。
悲壮感が漂っていて、この文章すごく好きです。
又如:戍鼓(驻边军士所击的鼓声);戍主(古代驻守一地的长官);戍堡(边防驻军的营垒、城堡);戍御(防守御敌)
ここでは4つの単語が紹介されていますね。1行ずつで並べてみます。
戍鼓(驻边军士所击的鼓声)
戍主(古代驻守一地的长官)
戍堡(边防驻军的营垒、城堡)
戍御(防守御敌)
DeepL翻訳に入れてみます。
ギャリソン・ドラム(国境で兵士が叩く太鼓)
Garrison master(古代のある場所の総督)
Garrison Castle (国境守備隊の兵舎や城)
ギャリソン・ディフェンス(敵に対する防御)
つまり、
「戍鼓」:国境の兵士が叩く太鼓
「戍主」:古代の軍隊の隊長
「戍堡」:守備隊の兵舎または城
「戍御」:敵からの攻撃に対する防御
といったところでしょうか。
間違っていたら適宜コメントで補足してくださると助かります。
ついに終わりました・・・。④は1/7に投稿しようと思っていたのですが、書く気力が起きなかったので1/8にしました。申し訳ないです。
最後に、このシリーズを書くきっかけとなった記事を書かれたtozaburo(小林都央)さん、ありがとうございました。
次回はいつ作るか、というかそもそも何を作るかすら決めていませんが、気になったことを調べてまとめていこうと思っています。それでは。