『土産』/神門(歌詞)

「これ良かったら貰ってくれんかな?
ちょっと苦手なお菓子やねん」
そう言って出された黄な粉大福
素敵な人やなと思う

苦手なん隠して渡してしまえば
贈り物にできてまうのに
貰ったこちらが礼を言われる
「貰ってくれるん。助かるわありがとう」

最近おすそ分けに悩んでいる
ご近所の方がくれるシュークリーム
10個入り賞味期限2日後とか
夫婦2人には多すぎるのだ

こんなん10個も食べたら太るし
間食なら別に自分たちで買うし
「ありがとうございます」と言って受け取るが
内心では礼を言われたいくらいだ

貰っておきながら生意気な
いや、関係に上下ができるのがおかしい
良かれと思ってやったのに、
その”良かれ”のせいで断りにくく

善意に対し抱く憎しみは
悪意に抱くより複雑で
与えてもらうと思える時しか
与えるべきではないのかもしれない

田舎から届いた大きな大根
5、6本もあり、食べるのに困る
丁度居合わせたお客さんに
「1本いりませんか」と尋ねると

食い気味に「大根はいらない」と言われ
なんかありがとうと思った
清々しい。今後ここの間で
嘘のありがとうはやり取りされないのだ

お土産を渡すときの理想の量
1人に対し六花亭のバターサンド2個
お茶んときに1,2度出るくらいでいい
それ以上は「食べな」とプレッシャーになる

2人暮らしの家に差し入れで
肉まんを一つだけくれた先輩
なかなかできんことやと思う
0が2になる摩訶不思議な割り算

”土産”という字が記している
物を貰うと±が生じる
返さなあかん恩の借金というか
心が宙に浮く気持ちがする

シュークリームのお返しに
ゼリーを二個持っていくと
利息分の回収って感じの礼を言われ
「はい、お待ちかねの」って顔でシュークリームが渡された

休日の昼間に家のことをしてると
冷蔵庫の奥でリンゴが腐ってた
これをくれた人の笑顔と、何より自分の笑顔が蘇る
このリンゴはどんな味がしたんやろう
もう感想を伝えることもできない
「3つ入りなんです!」嬉しそうに話す
あの声が今、直接響く

贈り物をもらいながらも、それを返すことを考える自分は最低だと気づく
贈られた事実だけを受け取ってしまい、肝心の贈り物を直視しない
感想もいらない。お返しもいらない。次会って改めてありがとうもいらない。
貰ったものをおいしく頂く。これが実は難しい一番の礼儀

どちらが先に叩いたかでじゃれ合い
公園のベンチでこつきあうカップル
お土産をめぐるやり取りは
時にこれとよく似た状況に至る


受け取るということが一つのピリオド
返さないってのもお返しだ
返さなって思いに耐えながら
相手の方は”渡した”で終われる

リンゴを捨て、再び家のことをしてると、
掃除機の音に紛れてインターフォン
玄関の前には、今日はサービスとばかり
シュークリームを2パック手にしたご近所さん

スライムの大群に出くわした心境
今にも合体せん勢い
戦う・逃げる・防御・道具
▶防御
「ありがとうございます。」

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『土産』をうたってみた。/水銀くん
https://youtu.be/_Nb6woSQ_ow


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