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#58.それでも切り離せないもの/Halsey - Ego
おはようございます。今日はピザの日だそうです。11月だから「いいピザの日」とはならずに、単なる「ピザの日」というシンプルな名前がいいですね。
ちなみにこの「ピザの日」、どこかのピザチェーンが決めたわけじゃなくて、印刷会社の凸版印刷が制定したもののようです。11月20日なのは、ピッツァ・マルゲリータの名前の由来となったイタリア王妃マルゲリータの誕生日に由来しているから。
ピザというと、宅配から冷凍までいろいろなものがありますね。宅配はごくたまに頼むくらいですが、スーパーやパン屋さんで焼いてるピザを買って食べたり、冷蔵庫で保存できるチルドタイプのピザも食べますよ。
わたしがいちばん食べるピザは、冷蔵庫のチルドタイプのピザ。保存も効くし、何もないときなどに手軽に食べられるから。ただ、商品によっては具材が寂しいなあと思うこともあるので、そのときには自分でフリーダムにいろいろトッピングして焼いてます。
追いチーズをしたり、ケチャップとオリーブオイルをかけたり、ベーコンやハムを乗せたり。そこまでするなら、自分でプレーンなピザ生地を買って、自由に具材を乗せても変わらないんじゃないかという気もするけど。
「エゴ」という言葉には、ほとんどの場合、ネガティブなイメージしかないような気がします。
たとえば「あの人はエゴイストだ」というとき、わたしは「あの人は自分勝手な人だ」と勝手に読み替えて理解するし、「エゴを押し付ける人だなあ」と思うと、「自分の意見を強く押しとおす人だなあ」と解釈します。
芥川龍之介は「人間のエゴイズムを描いた」と言われるけど、言い換えれば自分勝手な欲望に囚われた人間の姿を描いた、ということになりそうです。『羅生門』で死人から髪の毛を奪い取っていった老婆や『蜘蛛の糸』のカンダタみたいな。
つまり「エゴ」は、そういった人間の自分勝手な欲望みたいなものとは切り離せないもの。
その一方でこの「エゴ」には、もともとは「自我」とか「自己」といったような意味がある。つまりは自分が意識して自分を認識しているかどうかという話らしいし、だからこそ人間が自分と他人とを区別して認識するために必要なもの。
だから「他人を押しのけてまで自分の欲望を押し通してはいけない」みたいな話をですね、考えてみれば社会科の倫理あたりで習った気がするけど、その当時からなんとなくややこしいなあという認識を「エゴ」に対して抱いている。
こんなふうに「エゴ」というのはとっつきにくいし、付き合いにくいものでもあります。わたしの認識では、という話だけど。
「エゴ」には、そんな感じのとっつきにくさみたいなものがまとわりついていると言っても過言ではないかもしれない。とっつきにくいからこそ、できれば自分とは関係ないものとして存在してほしい。
けれども、やっぱりそう簡単にはいかないわけですね。
Halseyの"Ego"では、「私は自分のエゴを殺した方がいい」と繰り返します。
Halsey - Ego (Official Video)
上記の公式動画では激しい戦いが繰り広げられています。これは歌詞を反映したものらしい。自分がエゴに殺されるか、エゴが自分に殺されるかという戦い。
この曲の主人公は、「私は自分のエゴを殺した方がいい」と繰り返しますが、なぜならそれは「エゴが自分を殺しにくるから」。つまり、いつまでも子どもじみたような自分の欲望のままに生きていないで、大人になりたいと願っています。
赤ちゃんは自分の欲望のままに生きてますね。お腹が空いたら泣くし、トイレも睡眠も自由気まま。それが年齢を重ねるにつれて、自分の欲望と自分のまわりの社会との折り合いをつけるというか調整みたいなものが必要となってくる。
トイレくらいならしょうがないけど、大人になって仕事中にお腹が空いたからといって、ご飯を炊き始める人もいないだろうし、仕事よりゲームが楽しいと言って、仕事をほったらかしにしてスマホのゲームに夢中になってしまう人はいない(いたら依存症です)。
けど、そこまで極端じゃなくても、10分前、10時間前、10日前、10年前の自分のふるまいを振り返って、「あのとき、自分は他人のことなんか考えずに自分勝手にふるまったなあ」みたいに、過ぎ去った出来事に痛い思いをすることはある。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に出てくるカンダタなんかはまさにそうですね。自分だけが助かろうとして他の人のことなど考えなかった。
そんなふうに、つい自分のことを優先しようとして、知らず知らずのうちに自分勝手なふるまいをしてしまって、まわりの誰かに迷惑をかけ、そして傷をつけていることだってないわけじゃない。結果として、自分もひどい目に遭うことだってある。
だからこそ自分のふるまいを反省し、自分もまた痛い思いを抱えながら、人は大人になっていくわけですが、そのことをわかっていながらも、どうしても知らないうちに自分勝手にふるまってしまい、また反省を繰り返すのも事実。大人にはなかなかなれない。
そういった葛藤というか、自分の愚かさも含めて、Halseyの"Ego"でもまた歌われているような気もします。「自分のエゴを殺したい」と。でも「エゴ」なんて簡単に自分自身と切り離せないものでもあるから、ややこしいわけですね。
ところで、『蜘蛛の糸』のカンダタはけっきょく自分の欲望のせいで糸を切られてしまう。子どもの頃は愚かなやつだなあと思っていたけれど、大人になって考えてみれば、そう簡単に愚かなやつだなあと単純に笑えなくなってしまう。
わたしもまたカンダタのように、実は知らず知らずのうちにつまらないエゴに振りまわされることがたくさんあると知っているから。まさに「エゴが自分を殺しにくる」わけですね。こわい。
※ひつじのはなし|Good Morning! Musicは、水月羊(the Maverick Black Sheep)が大胆不敵にも音楽(主に洋楽)エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。
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