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【博士ノート】「カンニング竹山単独LIVE放送禁止2015』に寄せて。BY水道橋博士
「今から、ここでウンコします!」
往年のカンニングは、このワンフレーズでブレークした。
もちろん「やりそうでやらない」ヒール芸の極みだ。
その竹山くんが、ワンフレーズを2時間の長舌へ、大便をキレキレの話芸に代弁し、満を持して年に一度、お披露目する。
談志師匠は常々、こう弟子に檄を飛ばしていたと聞く。
「芸人は来た奴を喜ばせるだけじゃなくて、来なかった奴が悔しがるような事をやり続けろ」──。
その意味では『カンニング竹山単独ライブ放送禁止』は、まさに、その名言通りのシリーズだ。
「放送禁止」と銘打つだけあって、毎回、放送コードを逸脱しながら、自らの人生の恥部を全て惜しげなく晒していく。
回を重ねるごとに〝必見〟の口コミが広がった。
そして、2008年の初回から数えて5回目、2012年に伝説的に語り継がれる頂点を迎えた。
「今年は七回忌。単独を始めた当初から、もし5回続けることができたら、その時には相方の話をしようと決めていた」と、6年前に夭折した中島忠幸の話を解禁。
しかも「相方の死で〝笑い〟をつくろう」と、お涙頂戴を一切禁じたルールを課した。
舞台に設けられた祭壇を前にコンビのくだらない笑い話だけが語られる。
さらに日替わりゲストと「カンニング」の漫才も再現。
ボクの見た千秋楽はHi-Hiの上田浩二郎が登場し即興漫才で爆笑をとったが、その姿を相方の遺影が見守る構図は、笑いと弔いが共存し、LIVEとDEATHが交叉する結界を笑芸が繋ぎ、客席を涙の向こう側まで運んだ。
志半ばで逝った相棒を竹山は、見事に笑仏(成仏)させた。
本人にとっても一世一代、しかも再演の出来ない舞台であろう。
これ以上の大団円、引き際はなかろうかと思われたが、LIVEは続いた。
翌2013年は、1年365日、毎日1万円を人に与え続けたドキュメントだった。
このライブは毎年、自費制作、満員御礼でも250万円の自腹の赤字興行なのに、さらに365万円が追加される計算……。
なんと無意味で過剰なことか!
そして、2014年は「ネタが出来ませんでした」と土下座で始まりながら、最後は、新垣隆作曲のピアノ・ソロを決めてみせた。
芸人は長いキャリア担っていくと、ネタだけではなく生きている「姿勢」が芸に零れ落ちる。
この舞台は竹山の芸人のLIFEがLIVEとして昇華されている。
さて、2015年は何をやるか?
もはや舞台でウンコする以外ないのでは……。
(2015年 LIVEパンフレットに寄稿)
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