【「藝人春秋」書評】「巨星たちの生の物語」 BY吉田豪
『AERA』2012年12月31日号より
ルポライター芸人を自称して、芸能界への潜入取材を続けている浅草キッド・水道橋博士。
その成果については大宅賞レベルの傑作ルポルタージュ『お笑い 男の星座』を読んで欲しいんだが、あの本のパート2が出たのが、もう約10年前。
もともと人に迷惑をかけない犯罪でいかに世間をアッと言わせるかを考え続け、誰もやらない風俗体験取材を繰り返すようなブレーキの壊れた芸人を目指していたのが、変装免許証事件で謹慎し、結婚して子供も3人生まれ、健康本をヒットさせ、この10年で徐々に方向性が変わってきた。
博士自身が「豪ちゃんの好きなスタイルではないと思うけど、褒め生かしておいて」というメッセージを添えて送ってきた今回の本は、生と死がテーマである。
なぜいま10年ほど前に書いた文章をまとめたのかは、稲川淳二の章の追記部分で謎が解けるようになっている。
稲川淳二口調でごまかしてはいるが、間違いなく本音だ。
「『藝人春秋』の単行本化の話ってもともと10年前からあるんですよ。なかなか進まなかったですね」
「ワタシもね、ちょうど50歳になる直前で、男の更年期ってやつですかね。弱ってましてね。ずっと大震災だとか、原発事故なんてこともあってね、自分も“原発芸人”って非難されたりしてね、疲れちゃって、もういいやって。50の区切りで、いっそ、お笑いを『引退』なんてことを考えてましてね、家族で海外移住しようって」
それが、『博士の異常な健康』なんて本を出していたのに大病をして不健康になったこともあってか、50歳を過ぎて何か吹っ切れたように、それまで接点のなかった人たちと飲み歩き、さらなる潜入取材をスタートさせた博士。
この本に出てくるのは10年前に博士が興味を持っていた面々であり、いまならここに町山智浩、樋口毅宏、坂口恭平、岡村靖幸、松尾スズキ、リリー・フランキーといった辺りが加わるはずなので、現在進行形のサブカルスーパースター春秋的な次回作がボクは早く読みたい。
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『藝人春秋①』文庫版
(ボーナストラック)
・『2013年の有吉弘行』
(文庫解説)
・オードリー・若林正恭
押印サイン本をおまけ
(変装免許証ブロマイドor缶バッチor江口寿史シール)
付きです。
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