巡る。
父「バンツマを知らないのかよ!」
私「知らない」
中学生くらいのころ父親との会話の中での話。
阪東妻三郎
略してバンツマ、
昭和初期のスターで、田村正和のお父さんらしい。
父は呆れていた。
一方、田村正和、古畑任三郎の前からドラマや映画でよく見ていた。キュッと締まった顎に少し大きめの鼻、
変な間でボソボソと喋ったかと思うと、甲高い声で饒舌に喋り出す。
とびっきりの二枚目を演じる時もあれば、その二枚目とのギャップを活かしたコメディもこなす。
出ていたらとりあえず見る。
そんな俳優、それが田村正和。
今なら松田龍平か松田翔太
どういう事かと言えば、
そこで最初の会話に戻る。
父「バンツマがスーパースターだったから田村正和なんかも今、売れてんだよ」
そんな親の七光りみたいな言い方されても、わたしが知る田村正和はもういい中年で、ドラマや映画で口説けない女はいないってくらいのスターだった。
「それでもバンツマ有きだよ」
鼻息荒く譲らない父とは裏腹にわたしはそれほど感慨はなかった。
あれから30年。
わたしの職場にバイトで18歳が来た。
18歳はちょっと前の菅田将暉みたいな頭をしていた。
わたしはいい会話のキッカケだと思った。
「髪、天パー?カッコいいね」
「そうなんですよ、好きじゃないんですよね」
「いいじゃん、松田優作みたいで」
黙る天パー18歳、
もしや…
「松田龍平知ってる?」
「知ってます」
「翔太は?」
「知ってます」
「〜のお父さんは?」
「知りません」
「松田優作を知らないのかよ!」
以下バンツマのくだりと同文。
時代は巡る。
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