果たされない

「俺カメラで食っていく。写真で天下を取るんだ。」

そう宣言した彼は気付いたらサラリーマンになり社会の歯車として日々忙しそうにしている。

それを眺める私は無職になり社会の歯車にすらなれなかったのだけど。

君と私は似ている。偽善者で八方美人で、嘘吐きだ。いつだってヘラヘラして適当な事言って逃げてばかり。真面目に生きなよ。そう言える権利も無いし、君はもう真面目に生きているんだろうな。だって歯車だもん。

根本が似ていても社会に順応できるかの能力には差があったみたいだね。

君が会社でパソコンを叩いているのかそれとも営業で街中走り回っているのかは知らない。君が会社の為に動き回っている間にも私は自室で音楽垂れ流しながら漫画を読んでいる。飽きたら煙草を吸う。何なんだ、この差は。そう言えば君は煙草が嫌いだったね。

私が煙草を吸うと車に乗せる前に消臭スプレーをかけてくる君。それ、他の人にもやってるの?

いつまでも子供のまま歳だけ成人になった私。気付いたら大人みたいになっていた君。どこでどう差が生まれたんだろうね。昔は一緒に仮面ライダーごっことかしてたのに。私は今でも好きだよ。仮面ライダー。

こんな事を考えている間にも君は労働している。

私の歯車は歪だ。社会のではなく、人生の歯車。私の歯車が歪だから、私と関わった人間の歯車も狂わせる。歪ませて上手く回らなくさせる。故意的ではないけどね。君の歯車はどの程度狂ったのかな。

そうこうしているともう夕陽が傾いてきた。夕陽さん、こんな時間まで寝巻きのまま煙草をふかす私はクズですか?

聞くまでもなく底辺です。

君のカギカッコはつまらない。マジでヤバイしか言わないからだ。もっと、何かないのか。今日は花の話をしないか?君の語彙力を鍛えよう。そもそも私に語彙力が無いし君に連絡する元気も無いのだけど。

「夕飯できたわよ」

もう夕飯か。夕陽はとっくに沈んで月が私を見下ろす。えらそうにするな。お前だって自力じゃ輝けないくせに。

今日の夕飯は何だろう。食欲はあまり無い。

明日も今日と同じような日になる。

私を置き去りにして世界は、君は進み続ける。

いいなと思ったら応援しよう!