こわいひと
あなたの身の回りに、こわいひとはいるだろうか。
いつも機嫌が悪そうな大学の教授、人間の嫌な所を煮詰めたようなサークルの後輩の女性、勝手に話しかけてきて無限にカードゲームの話をしてくるTSUTAYAの店員さん……。
挙げると正直キリがない。
というか、ぶっちゃけどれだけ仲がいい人に対しても若干の怖さを感じているのだ。
今現在でめちゃくちゃ仲がいい友人がいる。
その友人とはよく一緒に外食に行くし、ゲームもよく遊ぶ仲の友人だが、怒った時が本当に怖い。
私に対して怒りをあらわにしたことはまだないのだが、対戦ゲームの味方にであったり、インターネットでの悪質な投稿に対してたまに怒っているが、めちゃくちゃ怖い。
と言っても、身近な例として親友を挙げただけで、私はすべての人間の怒りがとても恐ろしく感じている。
私の両親がよく怒る人間で、怒りに任せて物にあたるとか体罰をするほどではないのだが、大声で怒鳴りつけるので、幼少期から他人の"怒り"に対してひどく敏感になってしまった。
そんな両親を見て育ったからか、私は感情を表に出すのがなかなか苦手になってしまい、他人に対して怒りの感情が湧かない体質になったのだ。
私がそんな人間であるため、怒りというものに過剰な恐怖心を抱くようになった。
私は他人の感情の変化に敏感な方だと思う。
敏感でないにしても、「今、怒ってるだろうな」という予想でビクビクしてしまう。
感情の変化を気にしてしまうのは、知人に留まらない。
例えば、飲食店の店員に対してもビクビクしている。
「お飲み物はどちらになさいますか?」という店員の問いかけに対し、私はコミュ障なので相手が言い切る前に食い気味に答えてしまう時がある。
こういうやらかしをしたときに、「あ、今、店員の俺の好感度下がったな」と感じる。
この瞬間が本当に恐ろしい。
勿論店員はそれを表には出さない。ほとんどの店員はちゃんと大人だからだ。
でも、その内心で絶対私の事を蔑んでたに違いないのだ。
この店員の中で、私の地位が下げられている音が聞こえる気がするのである。
過去に、床屋で順番待ちをしていた時に、スマホで調べものをするのに集中しすぎていて、「次の方~」みたいな店員の呼びかけを1回わざとではないにしろ無視してしまったのだ。
この瞬間、店員の中で私は「嫌な客」としてラベリングされてしまったに違いない。
この瞬間非常に恐ろしい。
一度私が粗相をしてしまった人間は、私の事を「嫌な人」として接してくるに違いない。
私は非常に阿呆で馬鹿のドジであるため、普通に生活をしているだけでありえんレベルの失敗、失態を晒してしまう。
そのため、私の身の回りのすべての人間は、私の事を「嫌な人」として見ているに違いないのだ。
だから私はすべての人間が「こわいひと」なのだ。
こわいひとは、いつ私の事を見限って来るかわからない。
こわいひとは、いつ私に対して危害を加えてくるかわからない。
だから私はすべての人間に対して怯えている。
渡る世間は鬼ばかりである。