冷蔵庫にある三ツ矢サイダー、もらってもいいですか?
カフェイン。
ああ、気分転換したい。
職場で頭がボーッとしてきた。
朝から急な仕事が重なり、
意義の見いだせないPC作業を心を無にして処理し、
モヤモヤがつのって効率が落ちてきた。
コーヒーを飲めばきっともう少しがんばれる、と思う。
ただ、すきっ腹でカフェインをとると、
おなかが痛くなってしまう仕様で設計されてしまったため、
コーヒーをがぶ飲みできない。
セミが近くで鳴いている。
ミーンミンミン。シュワシュワシュワシュワ。
集中力はもうどこかへ遊びにいってしまった。
このままの状態で帰ってきてくれる気配はない。
きっと自宅に帰ってしまったんだろう。
「そうだ、気分転換に冷蔵庫の掃除しよう。
賞味期限切れのもの、けっこう溜まってたもんな」
目頭を親指と人差し指でマッサージしながら、
歩いて10歩の職場の黒い冷蔵庫へ向かう。
開けると、「三ツ矢サイダー」が冷えている。
それは、先週も置いてあったものだ。
きっと誰かが入れて忘れているものだろう。
私の目は「三ツ矢サイダー」にくぎ付けだった。
このまま忘れ去られて、
賞味期限がきて、捨てられてしまうのかもしれない。
私は思わず口にした。
「この三ツ矢サイダーって誰のですか?」
事務所のメンバーは全員揃っていたけれど、
全員が首をふる。
「もう忘れられてますよ」
なぜ、そんなことをするのか。
私だったら絶対に忘れたりしない。
「冷蔵庫にある三ツ矢サイダー、もらってもいいですか?」
なんでもない夏の日。
心地いい結露、澄んでいく爽快感。
シュワシュワシュワシュワ。
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