サザンオールスターズ-無観客ライブ配信-ちょっとだけ配信目線のライブレポ
観ようかどうしようか迷っていたサザンオールスターズの無観客ライブ。
オンタイムで観れそうになかったのでやめとこうかと思ってたのですが、いろいろあってリアタイできることになったので、開始15分前に購入。
無事、視聴できました。
楽しかった!
楽曲についてのライブレポは、詳しいファンのかたが書いてくださると思うので、ライブ配信エンジニアになりつつある、配信技術目線でのレポを書いておこうと思いました。
もちろんライブの楽曲の数々も楽しく聴きました。
演出も含めて、ライブとして成立させるという面、あと配信について、私の思ったことを書きます。
※私は37インチの液晶テレビで、プラットフォームはAbemaTVで観ました。
止まらないか、遅れないか
いちばん気になっていたところ。
画が止まらないか、音は切れないか、気になるというより、心配してました。
だって、たぶん10万人とかがチケット買ってます。
自分が配信担当だったら…考えただけで恐ろしいです。
さっき見た人に教えてもらったところによると、18万人が買ったそう。
18万人!!
配信プラットフォームが8つあるとはいえ、18万人が同時視聴しようと待ち構えてるライブ配信、って…。
IT系のインタビューの仕事で、サーバの同時アクセスで遅延が起きないようにしたり、アクセスを弾かないようにしたりという技術について、何度か取材しているのですが、そのときうかがった話を思い出しても、18万かぁ…ってなります。
しかし、さすがの配信。
受ける側の回線の太さにもよるし、時間帯とかいろんな条件で回線の状態は変わるので、どうしようもない。
でも、スタートからときどき、映像がコマ落ちした感じになることはあっても、一度も止まることはなく。
音声は途切れず最後までとてもきれいでした。
みんなで手拍子したりしているところでは、音に対する映像の遅れが分かるので、ああやっぱり遅れるんだ、というのを確認。
だからといって、ライブの楽しさが減る、とかいうわけではなく。
逆に言うと、これくらいの遅延があっても許容されるんだ、という感じがしました。
配信だもの。
自分の配信では、あとで映像確認して、ああ画が遅れてるなぁ…って、落ち込んだりするんですけど、勇気づけられたくらいです…笑
画面内のデータ量
遅延と関係しますが、画面内のデータ量が増えるとカクカクする率が上がるので、画面内のデータ量が気になりました。
画面のなかに動きの激しい人物や、細かな絵を表示しているバックのスクリーンなどが大きく映り込んだりすると、一画面のなかで送らなくてはいけない情報量が増えます。
それを圧縮して送るのに、画面内の情報量が多いと圧縮率が落ちるので、圧縮データが小さくならず、結果、こぼれる情報があるので、コマ落ちしてカクカクしてしまう。
なので、通常のライブと同じ演出をするにしても、バックのスクリーンに表示する映像の色数を減らしたり、そもそもスクリーンをなくしたりすれば、ダンサーの動きなどもコマ落ちしないで遅れるのかなと思いました。
画面の情報量を減らしたら、スムーズに流れる配信に近づくと思うけれど、それをどこまで考えてやるのか、というと、ちょっと無駄な気もします。
バックボーンの回線とサーバが知りたい
今回、8つのプラットフォームでのチケット販売だったそうですが、さっき教えてもらったところによると、18万人が配信チケットを買ったそう。
18万人がいっぺんにアクセスしてくる配信って、過去最大数なんじゃないかと思います。
各プラットフォームがどんな対策をしたのか、すごく知りたいです。
純粋に興味があります。
あと、あれだけの情報量の映像、音声を送り出すのに、どんな回線を現場まで引いたのか、こっちも知りたい。
現場の映像はたぶん4Kで撮っているので、そうとうデータ量が大きいはず。
それをどこでエンコードしたのか。
現場にサーバ持ち込み? 送り出してからサーバ?
どこのメーカーのどんなサーバだろうね、エンドロールのメイキングで出してほしかったなーと言ったら、絵面が面白くないから誰も喜ばないよ、と家のひとに言われました…。
圧縮にどんなソフトウェアを使ったのか。
どんな設定で撮影したのか。
二重化は? どんな設計のシステムになっていたのか。
エンコードしたデータを、各視聴プラットフォームにどう送ったのか。
気になることいっぱい。
自分が配信チームの一員だったら、無事に配信が終わるまで、祈るような気持ちだったんじゃないかな…。
ぜひITメディアあたりで読みたいです。
チケット価格
チケット価格は、私が買ったAbemaTVでは3600円でした。
ライブチケットと比べたら驚きの安さですが、配信では高いほうじゃないかと思います。
横浜アリーナであれだけの演出をしてのライブで、2時間半たっぷりの内容で、家族とかいて一緒に観たら、たぶん安い。
この先、これがもしかしたら、ひとつの基準になるんじゃないかと思って見ていました。
アリーナでやらなくても、もう少し小さいホールを使って、演出も抑えめになるかもしれないけれど、だいたいこれくらい、っていう基準。
無観客ならではかもしれないドローン撮影
カメラがものすごく多かったですが、ドローンを飛ばしてましたね。
客席に人がいたらたぶん飛ばせないけれど、いないから飛ばせる。
前半、ステージ上のキャットウォーク越しの映像がありましたが、あれもたぶん小型のドローンかなと思いました。映像が移動していたので。
ふだんだったらあり得ない角度から撮ったり寄ったりできるのは、映像的にはとても面白いし、無観客だからこそできる工夫だと思いました。
空いているからできる演出
客席の背中にライトをおいて、コントロールして色を変えての演出をしていましたが、お客様がいたら、きっと手に付けたりしたんだろうなぁ…。
これはちょっと切ないけれど、美しかったです。
アリーナの客席のあいだの通路にも、たくさんライティング機器が仕込まれていて、そこから光の柱を出したりしていたのが印象的でした。
お客様が座っていたら、たぶん置けないのでは。
空いているから使える場所がある、だからできる演出もあり、それを工夫してやる。プロの仕事を見た思いです。
新しいライブへの変化
小さい規模の配信はたくさんのアーティストさんがやっているけれど、サザンオールスターズが18万人が見る規模でやった配信は、間違いなく配信史(そんなものがあれば)に残るライブ。
ライブの現場で体感する音楽はすばらしいし、私も早くまたライブに行きたいけれど、それが次、いつかなうか分からないいま、あの規模でも技術的に配信が可能なんだ、ということを、ある意味、証明したライブだったと思います。
アリーナツアーが中止になったアーティストが、同じ規模とはいかないまでも、ライブ配信でコンサートをするのが、いつのまにかあたりまえになるんじゃないかと感じています。
一緒に楽しむ形が、もう変わり始めている
私の友人は、Zoomのような会議室アプリを使って会議室を立ち上げ、それぞれが家でライブを見ながら、一緒に楽しむそうです。
また別の友人は、今日は家で見たけれど、録画が見られる二日間のうちに、友達と一緒に見ると言っていました。
一度それぞれが観たものを、「ここよかったよね!」等々、話しながら一緒に観るのは、オフラインではもちろん、オンラインでも成立しそうです。
私は配信が終わったあと、応援しているアーティストさんが、ツイキャスを始めたのでそこへ。
それぞれで観ていた人が集まって、アーティストさんがサザンのカバーを歌うのをみんなで聴きながらコメント欄で盛り上がる、延長戦みたいなツイキャスを始めてくれて、ものすごく楽しかったです。
こちらの声は届かないので、サビで手の絵文字を並べて書き込んだり(手拍子)、歌詞に音符の絵文字をつけたり(一緒に歌ってるてい)、本家越えの3時間…笑。盛り上がりました。
ライブの形が変わっていく
ソーシャルディスタンスを考慮すると、今までと同じ人数は入れられない。
そうなったとき、どんなライブをするのか。
演出も含めてどうするのか。
まったくの無観客にして有料配信するか、少人数を入れたうえであとは配信チケットを販売する、どちらかになるんじゃないかと思います。
たくさんのライブハウスが危機と言われていますが、そこで配信ができる、できないがあると思っています。
ひとりでiPhoneで行う配信もあれば、小さいWebカメラを使ったり、配信する側もいろんな工夫をしています。
そんななかで、自分が配信をすること、三カメをひとり、あるいはふたりで回す配信をすることは、意味があると思っています。
ダンピングするわけじゃないけれど、できるだけコストを下げた配信にすること。でも質は落とさないこと。これを目標に、来週もまた配信ライブを行います。
ぐちゃぐちゃになってしまったけれど、もう寝ます。
とりあえず、技術的な関心の覚え書きとして。
【2020年6月28日追記】
いま、もう一度見ながら。
SE
会場の完成や拍手をSEで入れていましたね。
私が持っている設備での配信でもSEを入れることは可能なので、会場の大小やライブの規模にかかわらず、SEでの演出はできるけれど、ここはライブの性質によって変わってくるだろうなと思います。
カメラ
カメラ位置については、小型化しているのでいくらでもステージに立てられますが、観客がいないので、カメラを手持ちでステージに持ち込むのも、見ている人を気にしなくていいからいくらでもできそうです。
視聴環境について
私は37インチのテレビ画面で見たので、テレビの音楽番組的な映像の作り方で、引きや寄りの絵を十分楽しめましたが、スマホやタブレット、PCなど、それぞれのデバイスでの視聴割合が知りたいなと思いました。
スマホやタブレットなど、画面が小さいデバイスが多いなら、それに合わせた画面構成を考える必要が出てくるというか、それを想定した画面作りをすると喜ばれるのかなと思ったので、自分の行う配信で今後試してみます。
絵のスイッチングの凄さ
改めて見返しながら、スイッチャーを担当しているかたの技術がすごいなと思いました
収録の番組なら、あとでいくらでもつなげるけれど、楽曲を、楽器の構成まで含めて覚えていないと、的確な絵をはめられないと思うところがいくつもありました。
生放送でこれだけのカメラ数を操るのは大変なことです。
ドローンなども含めて、プランを作ってあったのだろうと思うけれど、これを演出した人の話を聞きたいです。
というか、もう、裏側のドキュメンタリーがあったらぜひ見たいです。
「匂艶 THE NIGHT CLUB」の始まる直前、ステージに置いてあったポンプ式の容器で、手を消毒する桑田さんの姿をカメラが捉えていて、きっちりそこに切り替わってたのすごいなと思いました。
ほんの一瞬の映像です。
それを背後からのカメラで撮っているところへきちんとスイッチングしているの、映像のプロすごい、って思いました。
意味のない映像を撮ってもしょうがないですね。
私の配信は、いまは3カメで、それを基本的にひとりでコントロールするので、すべて位置を固定、1つだけズームで寄ったり、画角の切り替えをしていますが、もっと考えた画作りをしていこうと思います。