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fetishismⅤ 匂い
まだ、誰にも言っていない話をする。
匂い、ていうのは割と重要だと思う。
本能的に好き嫌いが決まるものだと思うし、どれだけ色々な条件が当てはまっていたとして、受け付けない匂いをこよなく愛する人だったら相容れないだろう。もっと言うと、「肌の匂い」のようなものがあると思う。汗の匂いとも違う。柔軟剤の匂いも混ざるかもしれないがそれだけじゃない。お風呂上がりの匂いや香水の匂いというわけでもない。
首筋に鼻
fetishismⅣ 手
中学生の時、ひどく中性的な手をした同級生がいた。
大きくて、サイズで言うと間違いなく男性の手なのに、細い指ときれいな爪。水泳部でよく灼けていたのに、何でか手は白かったのもあるかも知れない。何となく触りたくなったのを、覚えている。思春期なのもあったし、関係性もあって、そんな気軽に触れるものではなかったけれど。
以来、人の手に視線を走らせることが多くなった。
どちらかというと、鑑賞目的だ。あまり触れた
fetishismⅢ 声
聞いた瞬間、稲妻が走るとか、そういう衝撃的なものがあったわけではない。通話が終わったスマホをしばし眺める。名残惜しいのは、話している内容が楽しかったから、だけではないようで。
―――「ずっと聞いていたい」と思ったのは、どうやら初めてだった。
「イイ声」と「好きな声」が両立した瞬間である。
* * *
「イイ声」には、種類がある。
かっこいい声。きれいな声。かわいい声。
ただ、基本的に「特化」
fetishismⅡ 眼鏡
ガラス越しに見る、人間の瞳。
虹がかかるような彩に、数秒時が止まった―――なんて。
小学生の時の初恋の話だ。思い出補正が入っているだろうと思う。それでもそのガラス越しの彩は強烈な印象を僕に残した。
皮肉な話だけれど、裸眼よりも眼鏡をかけている方がきれいな瞳に見える。
と、思っていた。
* * *
気付いているのかいないのか、多分この人の癖だと思う。
大多数の人の距離感よりも、一歩―――いや、半
fetishismⅠ 煙草
久しく吸っていなかった煙草を咥え、カチリと風情のない音を立てて電子ライターで火を点ける。
口の中だけに煙を含み、苦みが鼻に抜けると共に吐き出す。
”ふかす”くらいならやめておけばとよく言われたが、口に広がる苦みが好きだった。
* * *
あの人が煙草を吸うことは知っていたけれど、実際に見たのは二回目に会った時だった。ゆったりと煙を燻らす姿を見て、ぼんやりと―――キスがしたいな、と思った。
健