【観劇】ロックミュージカル「MARS RED」感想

【公演】
ロックミュージカル「MARS RED」
【公演日程】
2021年6月24日(木)~2021年7月1日(木)
【会場】
天王洲 銀河劇場
【公式HP】
https://worldcode.co.jp/marsred_musical/index.html
【配信】
https://live.nicovideo.jp/watch/lv332237123
※アーカイブ配信もあり

【あらすじ】
時は大正十二年。第一次世界大戦後、近代化する日本。
政府陸軍・栗栖秀太郎は、出征先のシベリアでヴァンパイアに噛まれ、
自らも”感染”しヴァンパイアとなってしまう。
帰国後、ヴァンパイアを中心に創設された「第十六特務隊」(通称:零機関)に所属することになった栗栖は、
前田義信、スワ、山上徳一、タケウチと共に、彷徨えるヴァンパイア達を勧誘または捕縛する任務にあたるのだった。
新しく仲間となったナンバの計画により、零機関の運命は思わぬ方向に動き始める。
一方、栗栖の帰りを待つ幼馴染の白瀬葵は、突然届いた死亡通知を信じられず自ら軍部を調べ始める。
もう人としては生きられない。
ヴァンパイアと人間の間で葛藤する栗栖がたどり着いた答えとは―――。
朗読劇から始まりアニメ、コミックと展開する「MARS RED」をベースに、
オリジナルエピソードとキャラクターを加えた大迫力の生バンドで送るロックミュージカル!

【CAST】
太田基裕(栗栖秀太郎 役)
中村誠治郎(前田義信 役)
糸川耀士郎(スワ 役)
柳瀬大輔(山上徳一 役)
山本一慶(ナンバ 役)
七木奏音(白瀬葵 役)
松井勇歩(天満屋慎之助 役)
KIMERU(デフロット 役)
萩野崇(中島宗之助 役)
平野良(タケウチ 役)
泉見洋平(平沼 役)

〈アンサンブル〉
夢月せら、大塚杏奈、櫻井太郎、 島田連矢、伊坂光由、鈴木遼太、本間健大、書川勇輝

〈バンドメンバー〉
Drums:佐小田亘 / Bass:池尻晴乃介 / Guitar:イトウ・マサキ / Keyboard:ハナブサユウキ、おかじま沙予

【STAFF】
原作 藤沢文翁(「MARS RED」/SIGNAL.MD)
脚本・演出 西田大輔
音楽 YOSHIZUMI
振付 良知真次
舞台監督 清水スミカ
美術 乘峯雅寛
照明 大波多秀起
音響 柳浦康史
衣裳 瓢子ちあき
ヘアメイク 車谷 結
特殊造形 林屋陽二
歌唱指導 柳瀬大輔
演出助手 荻原秋裕
制作 World Code、アズプロジェクト
宣伝写真 大柳玲於
宣伝美術 尾花龍一


■全体の感想
ロックミュージカルと名がつくだけに、歌唱と劇伴のダイナミックさは凄まじかったです。最初はメロディーが馴染まず違和感があった楽曲も、何度か聴くうちにすっかり楽しめるようになりました。
ふっとした時に思い出すのは、「歯車」タケウチのパート(♪知りたいことがあります〜から始まる)。アクション含めて癖になるんですよね。

2幕開始の底から響くような音、堪らなかった〜!
ドキドキしました。最高です、生バンド。

最初からそれぞれ際立っていましたが、初日から2日目までは音響の調子や照明と殺陣のタイミングがもう少しな印象でした。中盤には全てのテンポが揃って、一段と盛り上がるように。その後は、どんどん熱気が増していったのではないでしょうか。
振付が良知さん、歌唱指導に柳瀬さん、殺陣は西田さんと補助で誠治郎さんが担当されるという盤石の布陣です。音楽、殺陣、キャラクターの再現性の高さが魅力の舞台でした。

以下、キャスト・脚本演出・スタッフの順に思うがままの雑感です。(推しの平野良くんがちょっと長めなのはご容赦ください。)
メディアミックスほぼ網羅していったので、そこに触れた感想も含みます。

■ネタバレありの感想
もっくん(太田元基さん)の好青年だけど少し影のある雰囲気が、ヴァンパイアになってしまった栗栖役に似合っていました。悩む姿は色気があり、山上さんと話してる時の笑顔はあどけない。
スッと伸びやかな歌声もよくて、もっくんの声色に近い人がいないので、全体歌唱の時にくっきりと浮かびあがってくる響きが心地よかったです。

奏音ちゃんは、表情から発声まで演じ分けが素晴らしかったです!
葵ちゃんは可愛くて、岬さんは艶かしい。サロメの衣装で踊るシーンは、身体のしなやかさに見惚れてました。とても綺麗でした。
劇中に何度もウィッグと衣装(岬さんは2着もある)を変えて、メイクも変えて(たと思う)ので大変だったと思いますが、涼しい顔でやってのけてしまう凄さをひしひしと感じました。
ミュージカル(以下、ミュと略します)の葵ちゃんも可憐で可愛いですが、美波さん演じる朗読劇(初演)の葵ちゃんも好きです。リアルにいそうな女の子なのがいい。


誠治郎さんの前田大佐は、実に格好いいです。あの長い足から繰り出される回し蹴り、2回もあって大変嬉しい。左腕の殺陣もきれっきれ。拳で殴るアクションまで入れてきた時は心の中で歓喜してました。ザ・誠治郎さんを観れたおかげで、スワピリ(*1)中止の悲しみが少し癒されました。
岬さんとのシーンは切ない。けれど、ドラマチックな展開が多いです。前田と岬の身長差だったり、デュエットの声の響きが結構好きです。

多分、一番好きなキャラクターの山上さん。柳瀬さんの茶目っ気ある山上さんが大好き。前田が大佐だと知った時のぐにゃぐにゃとした表情、ミュで好きな表情ベスト3です。
富子さんを想って歌う「夢枕で」は、歌い出しから完全に心を掴まれました。山上さんと富子のシーンが私の中のクライマックスで、照明の光に漫画版の情景も思い浮かべながら、劇場に響く歌声に心を寄せていました。
山上さんのアクスタめちゃくちゃ欲しかった。零機関で並べたかったのになんで無いんだ、悲しい。
朗読劇の山上さんも格好いいのでお勧めです。前田と山上のシーンに泣かされるので、観てない人はぜひ観ていただきたい。公式で初演版も再演版も購入できます。(→https://ahava-store.futureartist.net/store


見事なまでのタケウチ。
さすが信頼の平野良くんです。
ミュのタケウチは、活躍ぶりが半端なかった。非戦闘要員の肩書きどこいった?ばりに闘って、みんながピンチの時にさっと駆けつけてくれます。そして、ナンバの最後を見届ける重要な役割もある美味しい役どころです。あそこのソロナンバー(跡形もなく)が、温かさに溢れていて大好きです。なんでしょうね、寺坂(*2)の歌でも思いましたが、温かさと哀愁が滲む良くんのバラードが一等好きみたいです。
それにしてもタケウチのナンバーは、アップテンポからスローテンポまで多種多様です。良くんの歌を堪能できて感動してしまいました。
こんなにも万能なタケウチになったのは、演じる人の影響だったのかもしれないと少し思ったり。
日替わりコーナー(タケウチが山上さんを銃で撃ちまくる場面)も作ってくれて楽しかった。柳瀬さんはノリノリでいじられてくれるし、もっくんは基本眺めて楽しんでるのに、たまに参加し出すのがツボです。(観た回の日替わりは後述)
ガンアクションが格好よすぎるので、タケウチの出番を納めた平野良詰合せをください。延々と観ていたい。


スワさんもスワさんでしたね。本当にキャラクター再現度が高い。
彼のソロナンバー(暁-スワver.)が、イメージするロックに近い曲だった気がします。糸川くんの歌声はマスク越しでもよく通っていてすごい。
スワと明里のシーンは、ミュ版も胸が切なくなりました。

天満屋さんもいい味出してました。淡々とした語り口の中に感情を込めるのが上手で、天満屋さんが目の前にいるー!でした。勇歩くんは眼鏡がよく似合う。初ミュージカルだったらしいので、これからどんどん歌もよくなっていきますね。
2.5次元ナビのナビ隊もされてるので、MC良くんとの共演が嬉しかったです。


デフロットは、少年らしい可愛さと長く生きたヴァンパイアたる重厚感、両方を魅せてくれるのが流石でした。低音の歌声だけで既に強そうです。KIMERUさん、カテコでもデフロットの動きで捌けてくから可愛すぎてどうしようと思いました。

話は逸れますが、カテコで思い出すのは、アンコールで袖から出てくる時にいつも笑いあってた誠治郎さんと良くん。何をお話ししてるのか、毎回同じように笑って出てくるのが面白かったです。

萩野さんの中島中将は、台詞回しが独特でした。白髪でお髭のある役をされてるのは初めて見たので新鮮。最近観た役は、ダンディで落ち着きのある役だったので新たな一面を知ることが出来ました。

ミュオリジナルキャラ1人目の一慶くん演じるナンバさん。このキャラも美味しい役どころ。2幕開始、アクリル板に囲まれての登場シーンはゾクッとします。一慶くんが刀を扱っている所を初めて観ましたが、踏み込みが強くて刀の振り方もいいので、誠治郎さんと殺陣のやり合いしてほしい!
主人公と対峙する役所としても魅力たっぷりでしたし、顔をぐしゃぐしゃにしながら父の無念を晴らしたかったと言うシーンの表情には震えるものがありました。


オリジナルキャラ2人目を演じた泉見さん、圧巻の歌声でした。赤い旗と革命と言えば、な要素をたっぷり詰めこむのが西田さんらしいです。
あんなにダイナミックに演出されるなら、主人公側とメインで対立する立場が相応しかったと思うのですが...。平沼を新キャラで登場させた割には、あっさりしていて勿体ない感じです。中将が歌わない分、歌を一手に引き受けてくれた平沼さんでした。

ヴァンサンブル(*3)さんもダンス、ヴァンパイア役、他何役もこなしていて凄かったです。
公演を重ねる度に、ダンスのキレも迫力もどんどん増していって感動しました。アンサンブルの1人である夢月さんは、文ステ(*4)の紅葉役で知った方。スラリとした美人さんで美しいだけでなく、男性キャストと一緒に山上さんを持ち上げたり、燕尾服で踊ったりされていて格好よかったです。


脚本演出については、各メディアから選ぶシーンもオリジナルもよかったのですが、2時間半でなぜ全て詰め込めると思ってしまったの...!?キャラクターの見せ場は凄くいいです。物語のバックボーンが劇中でしっかり描かれない+時系列を細かく切り貼りしてるので感情の導線が分かりづらいのが難点。(なので時折り演出にモヤっとしちゃう)
西田演出が光るだろう要素が随所にあったのに、勿体ないなという印象です。


最後に、スタッフさんにもちょっと触れたいと思います。
お衣装、小道具、ウィッグ、どれも作り込まれていて素敵でした。
Twitterにも書きましたが、特にウィッグの色味やカットが大好きで。
担当されたのは車谷さんという方なんですね。ちょっと調べてみると、舞台「幽遊白書」や「血界戦線」も担当されてたようで、なるほど好きなわけだと納得。今まではヘアメイクを意識して観たことがなかったのですが、これからはチェックしたくなりそうです。

■総評
演劇作品としては微妙な点も多いですが、キャストの魅力を十分に魅せてくれるパフォーマンス性は◎でした。堪能しました。BDも予約済みなので11月に届くのが楽しみです。

とりとめのない感想となりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。


■日替わりシーン(ニュアンスで)
①山上さんを撃ちながら、「このまま2時間続けましょうか〜?」

② 山上さんを撃ちながら、「山下さん、山内さん、山田さん...」と名前をわざと間違えていく。
栗栖も何故か応戦。タケウチが「山下さん」と言えば「や...山下さん」と若干ぎこちなく一緒になって間違える。(笑顔で間違えにいく栗栖がツボ。)

③ タケウチ「何か言いたいことはありますか?」
山上「亜鉛が足りないと、会いたい人にも会えんぞ」と栗栖に向かって、お茶目にオヤジギャグ。
タケウチ「弾が尽きるまで撃ちたかった」

④ 山上さんを撃つと見せかけて宙に向けて発砲。撃たれた時と同じように身体を跳ねさせる山上さんに、タケウチ「撃ってませんよ〜」
山上さん、盛り癖あるんだからと諭される。


■注釈
 (*1)...公演「swallow period」の略称。今年5月に上演予定だったが中止になった。
 (*2)...チャオ!明治座祭10周年記念特別公演『忠臣蔵討入・る祭』で演じた役名。
 (*3)...マズミュでヴァンパイアを演じたアンサンブルのこと。夢月さんがTwitterの投稿で命名。気に入ったので使わせてもらいました。
 (*4)...舞台「文豪ストレイドッグス」の略称。

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