仮住まいの日々 本当の豊かさとはなんだろう
実家を建て替える時に住んだ仮住まいの家のことを思い出します。
元々、祖父と両親と三姉妹で祖父が建てた家に住んでいましたが、父がローンを組んで新築にすることになりました。
私が小学校4年生の頃です。新しい家になることが楽しみで仕方ありませんでした。
建て替えの間、歩いて3分ほどの場所にある借家に移り住みました。期間は2ヶ月くらいだったと記憶しています。
祖父はその仮住まいが嫌だったのか、親戚の家に居候していました。
私たちが移り住んだ借家は、元の家よりも古く、6畳の部屋が2つと台所があるだけの小さなものでした。
となりのトトロでサツキとメイが引っ越してきた家に初めて行った時の「ぼろーっ」という感覚、その気持ちに私はわくわくして共感していました。
家族5人で布団を並べて寝て、大きい食卓は預けていたので、丈夫な段ボールを並べて布をかけてテーブル代わりにしていました。非日常で毎日がピクニックみたいでした。
小さな庭もありました。母が買い物に出かけている間に雨が降ってきて、妹と一緒に笑いながら、でも背が届かない洗濯物を取り込んだことを覚えています。
新しい家に引っ越して素敵なことが起こる予感とタイムスリップしたかのような日々にうきうきして過ごしました。
新しい家が建って引っ越しました。壁紙もシンプルだけど上品で、リビングのランプも凝ったデザインで、同級生が憧れるような家でした。
しかし、それから色々なことが起こりました。思い出したくない出来事ばかりです。
親は離婚し、母は家を出て行き、姉妹も次々と家を離れました。私は半ば勘当されてしまいました。(冠婚葬祭の時だけ帰ってこいと言われました。)
それ以来、私は実家にはほとんど寄りつかなくなりました。
豊かさは金銭的なものではなく、心の豊かさだと仮住まいの日々を思い出して感じます。
でもそして同時に、私はただのお嬢さんなのかもしれないとも思います。古い借家に長く住んだ経験がないため、実際のところは中年になった今も分かりません。期間限定の夢だったのかもしれません。
思い返せば、あの時の仮住まいの日々が、私の中で心豊かな時間のひとつです。