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【日記】しごとやめますと言えた日

上司に退職を伝えた。言う2,3分前が一番緊張した。本当に言うの?明日じゃだめ?と引き留められる声が聞こえる。しかし、そちらには戻れない。
次の会社のことやそれに伴う引っ越し。なるべく決定して早く手を打たないといけない。

そもそも今日をのがしたら、明日はもっとタイミングが掴みづらい。
言え、言うんだ、言うしかないんだ。と別の声が駆り立てる。
心が決まりきったわけではない、伝えることに100パーセント前向きではない。
そんな自分でありながら、立ち上がり上司の近くに行き「すみません、今よろしいですか?」と声をかける。歩いている間、何も音が聞こえなくなる。

退職、という言葉を出す前に自分の脳内でいくつか反芻させる。
はっきり伝えないといけない。そう思って。
口から出してしまえば、それは、普通の言葉と変わりない、路傍の石のような、ありきたりな、ただの音の塊。

それを吐き出すとすっと静寂が訪れた。
相手の反応を確かめる。表情、姿勢、言葉。体から発せれるものをぼんやり観察する。
怒ったり嘆いたり引き留められたり、そういったことはなかった。
「そうか、」と受け止めてくれた。
その瞬間、相手に私の伝えたいものは伝わったのだと、安心した。

「退職 伝え方」と何度も検索して出てきた言葉を相手に合わせて引き出そうとする。立つ鳥跡を濁さず。何も聞かないでくれよ。きれいなままで触れられないままでここから立ち去りたいんだ。

私の苦しい苦しいこの道の一歩。
この人生を生きるために必要だったもの。
後悔は死ぬほどあるけど自分を窮屈なことに閉じ込めておけなかった。
とどまるしかできないならしんだ方がまし。
お前はお前で生きろよ。

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