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saの音楽感想文 第48回. 挫・人間/「テレポート・ミュージック」

今回は挫・人間(ざ・にんげん)の2ndalbum「テレポート・ミュージック」を紹介します。

サブカルロックを語る上で,挫・人間は外せません。本記事を書いていて,あらためて奇才だと思いました。メロディーはポップなのですが歌詞がサブカルなバンドです。何よりもボーカル下川さんのおどけた歌い方が魅力だと思います。その癖の強さからかなり人を選ぶ音楽ではあると思いますが,アルバムを一周でも聴いたら(聴けるタイプの人)は完全に彼らのトリコになってるはずです。

それでは曲の紹介に入ります。

土曜日の俺はちょっと違う

かわいらしい印象の歌いだし。
何気ないひきこもり主人公の何気なくない土曜日の歌です。

ひきこもりのぼくだから
友達もいませんよ
当然さ 彼女なんてできやしない
ドラクエはレベル80だ
ひのきのぼうで十分だ
ときメモも全パターンを覚えている

歌詞:下川リオ/土曜日の俺はちょっと違う

土曜日の俺はちょっと違う
土曜日の俺はちょっと違う
土曜日の俺はちょっと違う
世界で一人だけ

歌詞:下川リオ/土曜日の俺はちょっと違う

ほんとに「ちょっと」違うだけなんですよね。周りからは気づかれないような心もちの変化。客観的には何も違っていないといえます。仮に本当にちょっと違っていると言えても,そもそも主人公はひきこもりなので,だれにも気づいてもらえません。主人公は「世界で一人だけ」なのです。

可愛い転校生に告白されて付き合おうかと思ったら彼女はなんと狐娘だったので人間のぼくが幸せについて本気出して考えてみた

なろう系小説のような長文タイトルの曲です。タイトルの通りの曲です。
オタクに文学の才能を持たせたら自分でエモい物語を創造してしまうんですよね。そこに音楽の才能があるからこういったものが作れてしまう。ひがしやしきさんの「talking病気がちガールを夏」しかりです。こういったオタクの妄想曲はもっと増えてほしいです。曲を聴くだけでアニメの神madを見たような満足感があります。

とける夏がいますべりこんでゆくよ
君はきつねっこ
笑ったらふいにめくれた
スカートの中にしっぽ

歌詞:下川リオ/可愛い転校生に告白されて付き合おうかと思ったら彼女はなんと狐娘だったので人間のぼくが幸せについて本気出して考えてみた

ちなみに本曲は常盤ゆうさんフィーチャリングverもおすすめです。透き通った歌声が最高です。アニメのEDのよう。ジャケットの狐娘ちゃんも激かわです。宇宙ねこ子さんのアルバムイラストも描かれている大島智子さんのイラストです。


十月の月

挫・人間はまじめな曲も良いのです。平静の中で感情が揺れて,高ぶって,少しだけこぼれ出るような曲です。

あれは十月の月
思い出せば消えるような

歌詞:下川レオ/十月の月

下川VS世間

サブカルで生きていく下川さんの苦悩を歌っています。下川さんと世間(複数人ボーカル)によるラップバトル調の曲です。ネタっぽいし実際面白いのですが,最後は世間の目におびえるグロテスクな展開も。

母親
「もしもしお母さんだけど
さいきんどがんねたべとるね
元気でおったら 母さんよかけど
毎日留守電さみしかです
そうそうあんたの曲ばってん
母さんなんか悲しかばい
でも何を言っても
あなたは私の大事な自慢の息子です」

下川
「やめてくれあなたはもう
僕のことを理解しているつもり
になっているだけであり
模範的な母親を演じ満足しているだけだ
同じように僕も模範的な息子でいたかった
ごめんなさい愛情純度100%の息子は
漫画のデブキャラフグオ同級生を殺す漫画を書く後ろめたさと敗北を誰にも見せたくないのか俺の口から言わせないで
ごめんなさい ごめんなさい
ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい
顔向けできない人生です」

歌詞:下川レオ/下川VS世間

こんな感じのラップバトルを繰り広げます。どの敵(世間)も言葉の火力が高く,下川さんが泣きそうな声で答えます。本当にかわいそう。

どんどん頭が狂っても 
どんどん頭が狂っても
直視しよう はじめまして

歌詞:下川レオ/下川VS世間

時が遅くも早くも感じるようなあの感じ。

ロンググッドバイ

ふんわりと優しい曲です。
10月の月しかりこういった曲が「テレポート・ミュージック」のアルバムとしての魅力を支えていると思います。

ねぇ,ムーミン
こっちを向いてよそっぽを向いても
ねぇ,ムーミン
また観ようよ あの野球中継を

歌詞:下川レオ/ロンググッドバイ

今回は以上です。
ご覧いただきありがとうございました!





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