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他人の花束《翠曜日》vol.13

今日の予定は夕方からだったので、16:00を過ぎてから電車にゆられている。

だいぶ日が短くなったことを実感する時期に来た。西陽が容赦ない。乗車時、車両は適度な混み具合で、今降りた人の分の空席がいくつかあったので右側か左側か0.7秒くらい悩んだ挙句近い方に座った。

発車

駅の近くは建物が多いので陰になっていたが、動き出すと西陽の本領が明らかになる。「おっ運がいい席かも」と思った。私が座った側は残念ながら窓越しに光をもろに受ける東側だったようだが、、日が差す角度の問題で私は大した被害を被らなかった。
眩しい人たちは、眩しい席に座った後悔を顔に出すことすらちょっと悔しいからか、スマホを弄る手を諦めて眠るという選択をする。本当に眠かったのか、少しでも目を瞑りたかった結果なのか。

おっと

こんなことを言っている間に、電車がカーブでもしたらしい。私にも直射日光が。
変な意地が発動して「私は絶対に目を閉じない」と思った。外が明るすぎて、スマホの画面が少し暗く感じる。たまたま見てる時色が暗かっただけか。

でも、西陽に照らされ、スマホに映し出された私の顔は、さっき塗ったばかりのラメがめちゃくちゃ反射していて、少しだけ楽しくなった。
建物の陰で光が途切れると、映るキラキラも終わってしまうのがちょっと寂しい。

さあ、もう降りる駅がすぐそこに来ている。

───

第2部

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そして、予定が終わった帰り道、21:30。
途中の駅で乗車して、座っている私の前を横切った男の人は、とっても可愛らしい大きな花束を抱えて乗ってきた。色白の肌とメガネと、優しそうな雰囲気。黒いポロシャツと、スラッとした長い脚には黒ジーンズ。大きな荷物も黒い。花束と顔だけがカラフルで、花束を持って乗ることにちょっと照れているようだった。何を終えて受け取った花束なのかわかんないけど、この人は幸せそうなので、贈った人の気持ちは伝わっていそうだった。

他人が他人に贈った花束で、私もちょっと幸せになった。

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