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"我らは言葉にあやつられた幻" 「ううん......」 アリスが目を覚ますと、辺り一面真っ暗になっていました。目を擦りながら空へ目を向けるときれいな星々と美しく輝く月が見えました。 「ようやく起きましたか」 何も気配がなかったのに、いきなり男の声がしたのでアリスはビクッと体を震わせます。 「怯えることはありませんアリスさん。話は翁の猫から聞かせていただきました。今日はやけに困った日だ」 そう言うと、男は自分の肩に乗った猫の頭を撫
”神の目をもって家を建て 御仏の心をもって森を識る" 森の中を虫虫から貰った簡単な方位磁石を頼りに、北の喫茶店を目指して歩いていたアリスですが、お昼からなにも食べていなかったのでとうとう空腹に耐えられず道端にあった切り株に座り込んでしまいました。アリスがぼうっと遠くを眺めていると、何か声が聞えてきます。 「ぎっこーんっ」 「ばっこーんっ」 おじいさんのような声が二人聞えてきます。 「おや翁あんなとこに女の子がいるよ?」 「こんな時
"彼は、お茶を淹れるのが上手かった。 だが、彼の悲しみまで味わう者はいなかった" アリスが森の中をしばらく歩いていると、水の音が微かに聞えてきました。背の高い草むらの中を歩き続けたせいで喉がカラカラです。音がして来る方へアリスは足を速めます。急に森が開けたと思ったら、とても美しい湖が目に入ってきました。鏡のように空の色を映した湖に花の匂いを乗せたやわらかい風が吹き抜けています。アリスはしばらく呆けたように湖を眺めていました。「やあ、おじょうさんいい
❤3 ”おさかな おさかな おさかなさん” アリスが悲しそうに涙をこぼしていると子供のトマト人間が不思議そうな顔をして覗き込んできました。 「ふむふむ、これが人間というものか?おまえ変わったにおいをしてるな?顔も腐った野菜みたいにぶにぶにしてるし。」 そう言って子供のトマト人間は容赦なくアリスの顔を両方の手で潰すように触ってきます。 「それに頭に付いてるそれはなんだ?トウモロコシたちとのは違うようだが?」 今度はアリスの髪を左右上下に引っ張って遊びだしました。子供のトマ
”あれらはそれらがあると上機嫌で語りだし、それらが去るとやけに不親切だった” ある良く晴れた朝に、庭で遊んでいたアリスは母親に呼ばれて、台所に向かいました。 「どうしたのお母さん?。」 アリスが聞くと、アリスの母親はお昼の準備をしながらこうこたえました。 「近所のマギーおばさんがまた新しい調味料を分けてくださるって言うから、アリスに取りに行って来て欲しいのだけど、おつかい頼めるかしら?。」 マギーおばさんというのは、近所でも有名な調味料収集家で、家の留守を旦那にまかせて世