始まりの丘 No.11【小説】
聖書に記載されている、巨大な穴というのがどこかで出来るらしく、そこからイナゴの大軍勢が世界中を覆う……。
霊的な隕石の様なものがどこかで落ちるのだろうか。聖書に寄ると北の方面かららしいが、宇宙から来るという可能性もある。
「全く想像できない……匠たちの行った世界は一体どこなんだろう?」
「分からないわ……」
僕も星羅さんもお手上げだった。つまり、裏の世界がテレビと繋がっていて、そこに匠たちが行ったことで、苦しんでいるとしたら、向こう側の世界はどうなっているんだろう? もしかしたら、これがあの有名なダークサイドなのか?
彼らを引き戻す方法は何か無いのだろうか? まさか、こちらもテレビからダークサイドに墜ちる訳にも行かないし……そうだとしたら、このまま黙って見ているだけで、何もできないということか。
「乃夜くん……」
「大丈夫だよ、星羅さん。皆の意識が無事に戻るように祈っていよう」
「うん……」
それにしても、何てテレビなんだ。ただ向こう側の世界に行くだけじゃなくて、その先で苦しむ様になっているなんて。これからは怖くて、テレビを見つめてなんかいられないな。
僕たちは手がかりが掴めないまま、解散となった。
だが、帰り道に心霊現象と思える様な出来事が、僕の身に起こる。
「助けてくれよ……乃夜……助けてくれよ」
!!
僕の耳に囁き声が聞こえる。いや、呻き声にも似ていた、それは僕に助けを求めている。
「匠か? 賢一? それとも裕太? 大丈夫なのか!?」
「……裕太だよ。こちらは地獄みたいな世界だ。俺は逃げ出そうとしていて……でも捕まりそうなんだ。うわ、また悪魔が襲ってきた!」
……ザー。
雨が降ってきた。裕太の最後のその言葉は雨の音と共に消えていった。
一体……どうなっているんだ。
僕は家に帰り着いた後、疲れて、ただ眠ることしかできなかった。
……とても暗い風景が見える。
ここはどこだろう? また、霊界の夢だろうか? 最近は見ることが無かったのに。
何やら遠くに、銃を持って立っている人間が見える。
こちらに向けて撃って来ないだろうか?
その人間はどうも笑って居るようだ。
これは、撃たれるパターンなのではないか……? と一抹の不安を抱えたまま、僕はゆっくりと移動していく。
何か、痩せ細った犬が、こちらに向かってすり寄って来た。
「可哀想に……確か、骨付き肉を持っていたはず」
これをお食べ……と僕はその犬の地面に置いてやった。
「クーン……」
犬は匂いを嗅いでいたが、食べる気配が一向に無いまま、ただこちらに甘えて来ている。
どういうこと? お腹が空いていないのかな?
「誰も可愛がってくれる人がいないの?」
僕がそう話かけると、次の瞬間、とんでもないことが起こった。
バー―ーン。
……撃たれた。
撃ったのは、あの笑っていた人間か!?
僕は、条件反射で、銃弾を避けてしまっていた。
僕の代わりに撃たれたのか……? な、なんて奴らなんだ。
さっきの人間がいた方を見ると、その犬を撃った犯人たちは、笑っているだけだった。果たしてあいつらは人間なのか……?
そうして悪夢が覚めた。
……。
「何だったんだ、今の夢は……夢で良かった」
そうしているうちに、スマホから着信が来ていた。
なんだろう? 星羅さんだ。
「大変なの、裕太くんが、裕太くんが……」
「……どうしたの?」
「今、病院で亡くなったって」