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始まりの丘 No.4【小説】
僕は携挙の時期について、正確な情報を掴もうとしていた。
パソコンの電源を付けてYouTubeを開いた僕は、いつもの通り、リサーチを開始していた。
携挙の日について、関係しそうな動画をあらかた検索する。
僕はこういう時、探すのに工夫を凝らしている。信仰が深そうな、あるいは心が綺麗な人物がアップした動画を探すのだ。
そういう人の動画は非常に説得力がある。参考になる以外にも、その人の考え方が入ってくる。結局はこれが、一番、為になることが多いのだ。
探してみると結構ある。その人に信仰があるとか、心が綺麗な人をどうやって見つければいいのかは、個人の判断に委ねるが……。
僕はそういったことを研究会のメンバーにも伝えてある。そうやってリサーチをして来いと命令している。これで結構、たくさんの良い情報が集まってくる。
そうしたことを僕はこうしてノートに纏めている。僕は今まで書き記して来たノートを見直してみた。
【携挙ノート】
救いの日は、今年にでもやってくる可能性があるから、いつでも準備を万全にして、目を覚ましていた方が良い。これらのことを実践すれば、あなたは救われる様になる。
あなたの聖徒とは、心で繋がっているものだから、あなたと縁がある人と側にいなさい。聖徒の交わりが一番大事な時期でもあるから。
家に鍵を掛けて閉じこもっていた方がいい。たくさんの反キリストが出てきているからである。反キリストとは、霊でも人でもある。
これらが、正しい聖徒を迫害しようとしているから注意していなさい。
これらのことがわかったら、悪い影響があるものを見るのを辞めて、良いものだけを見ていなさい。良いものは探せばたくさんあるから、それを探してみること……など。
「ちょっと探しただけで、これくらいの情報は溜まったけれど、まだまだ情報が足りないなあ」
果たして、携挙とはどの様な方法で来るのだろうか?
「明日、メンバーにも聞いてみようか」
僕は、いつもの日課を終えて、パソコンの電源を落とした。
汗を掻いたのでシャワーを浴びる。最近は、エアコンを部屋に効かせていても、本当に部屋が暑く感じる。エアコンの不調だろうか? 高級な物に買い替えた方がいいのかなと僕は自分と相談する。
シャワーを浴び終えて、僕は就寝の準備をした。
「おやすみなさい」
僕は電気を消した。
……。
「お前はキリストの謎を解き明かそうとしている者なのか?」
……。
「だが、そうさせはしまい、必ずお前を妨害してやる」
「大体、信仰も無いのに、ここまでの研究を進めるのは、烏滸がましいとは思わないかな?」
「信仰も持たないくせにねえ」
……。
……妙な悪夢を見た気がする。
そうして、新しい朝がやってきた。
今日は研究会のメンバーに電話をしてみることにした。
今は、自分のできることをやることにしよう。