A-SPICEの紛らわしい用語たち

A-SPICEはもともとドイツで作られていて、その後英語→日本語となっている(と推測される)ため、結構日本語が判りづらいです。なので聞いた話と自分の理解で解釈を残しておきます。

トレーサビリティと一貫性

A-SPICEでは双方向トレーサビリティと一貫性が別の言葉で定義されています。A-SPICEの評定において中心的な考え方であるBP(基本プラクティス)でも別で定められています。それだけ分けることが重要だということですね。意味の違いについては、わかりづらいということがVDAにも認識されているようで、D.4で説明が追加されています。

>トレーサビリティは、参照先または作業成果物間のリンクを指し~追跡等に役立てられる

>一貫性は内容及び意味について扱う

ということです。端的に言うと、トレーサビリティはただのリンクで、一貫性は意味的な話です。意味的な話でもリンクが張れていないとたどれないので、トレーサビリティが一貫性のベースになる、という説明もあります。別の言葉でいうとトレーサビリティは追跡性で、一貫性は妥当性、ぐらいでしょうか。

VDAスコープ

A-SPICEのプロセスの中で、VDAスコープというスコープが定義されています。16個のプロセスが該当します。↓ではHISスコープと記載されているものです。

これを正しく理解するには、A-SPICEの成り立ちを理解する必要があります。A-SPICEを作ったVDA(昔はHIS)はドイツのOEM(カーメーカー)が中心になっています。つまり、OEMたちがサプライヤを監視するために作ったプロセスアセスメントの体系です。よって、OEM自身が実施すべきプロセスについては、特に重要ではない、と判断されています。例えば、SYS.1要件抽出などはVDAスコープから外れています。

なので、OEMも含めたプロセスを考える際には、VDAスコープを外して検討する必要があるといえます。

標準プロセス

A-SPICEの能力レベル3では「標準プロセス」について言及されています。標準プロセスを定義して、展開しなさい、という内容です。ここで疑問がわきます。A-SPICE自身が標準プロセスなのではないか、と。これについては、A-SPICEはプロセスの箱だけ用意しているだけで、詳細の中身については定義していないため、別途具体化した標準プロセスが必要、ということだそうです。A-SPICEでは同じような記述がたくさん出てきたり、循環参照しているようなところがあったりするのですが、まぁ頑張って理解するしかなさそうです。


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