ローソンPB商品のデザインはタスク完了の効率が悪い
ローソンのPB商品についてはかなり前から話題になっていましたが、ローソンの社長がPB商品について「ご不便をおかけしてしまった。真摯に反省します。」とコメントし、一部商品についてデザイン修正を行うという事で一旦節目を迎えたのかなと思いずっと感じていた事をnoteに書きます。
デザインとは何か
ローソンのPB商品について評価をする場合、最も忘れてはいけないのがデザインとは何かです。
デザインは日本語では図案や意匠と訳されるため、見た目を良くするものと勘違いされがちですが、本来は課題の本質を見抜いて解決方法を導き出す事を指します。
ローソンのPB商品のデザイン変更はかなり大きなプロジェクト。ローソンにとって重要な何かしらの課題を解決するために行われたはずです。
ただ、個人的に評価できないなと思うのは、今回のデザイン変更によってその重要な課題は解決出来たのかもしれませんが、本来コンビニPB商品として最低限クリアしておくべき課題をなおざりにしている点です。
社会インフラとしてのコンビニ
既に生活者にとって必要不可欠なコンビニは社会インフラとして機能しているため、当然ながら公共性を担っています。
ターゲットを特定せず、多くの方が問題なく利用できるというクリア基準が存在するわけですね。
そのためPB商品であれば「ローソンらしさ」「生活に馴染む」「インスタ映えする」といった要素の前に最低限クリアしなければいけない課題が存在します。
それはもちろん効率よくタスクを完了させる事が出来るかどうかです。
ユーザー視点から見るタスクとは
例えば食品類のPB商品がお店から家に持ち込まれて食べるまでの間には、いくつものタスクが存在します。
ざっと挙げるとこんな感じでしょうか。
・探す
・内容を確認する
・購入する
・持ち帰る
・保管する
・準備する
・食べる
・破棄する
デザイナーはユーザーが行う各タスクに対して、効率よく行えるかを考える必要があります。
例えば「持ち帰る」というタスクに対しては「持ち帰りやすいか」を考えるという事ですね。
コンビニでのレジ袋有料化も来月から開始します。パッケージ自体に取手をつけてそのまま持ち帰れるようにデザインすれば、1つタスクの効率化が完了するわけです。
ただしパッケージに取手をつけると、陳列した際に取手が邪魔をして「探しやすさ」「内容の確認しやすさ」が低下します。
価格に跳ね返るため「購入しやすさ」が失われ、かさばる事から「保管しやすさ」も失われます。
全ての項目を100点にしつつ、その他の付加価値的な要素についても追求できるデザインはそうあるものではありません。
そのためデザイナーはタスクごとの優先度を考慮しつつ、全体的なバランスを調整する仕事でもあるのです。
そして今回のPB商品に対する批判は、明らかにこうしたタスクを効率よく行えず、全体的なバランスが取れていないデザインになってしまっている点に他なりません。
探しづらい
こちらは以前バズったものですが、パッと見てどちらが辛口かを判別するのは難しいでしょう。
「日本語で書いてるんだから読めばわかる」という意見もあります。
ただ、人は行動の95%を過去の経験をもとに無意識で行っています。
全てに対してしっかり見て考えて判断する事は脳の仕組み上不可能ですし、それをユーザーに期待するのは問題外です。
豆腐と納豆のパッケージが酷似しているため、店員ですら間違える事態も発生しています。
では最後に。下の写真が何か分かりますか?
マーガリンです。
内容が確認しづらい
新しいPB商品では写真を使わず、小さくイラストが描かれています。見つけた後も実際の商品をイメージしづらいでしょう。
このツイートを見れば明らかですが、どのような商品なのかが分かるという点においては旧パッケージの方が優れています。
今回のデザインを肯定する意見の中に「他言語の商品名も書かれておりグローバル」というのを見かけましたが果たしてそうでしょうか?
初めて入った飲食店のメニューに写真がなく、商品名だけで困惑した経験はありませんか。
百聞は一見にしかず。どの国の人であっても商品名よりも写真で見せた方が内容を理解するのに効果的です。
準備しづらい
私も拡大して探してみましたが、どこに点線があるのかが分からず、リプライにある解説を読んでようやく点線を見つけられました。
ちょうど中段の玉ねぎと豚のイラストの間に横に走る白い点線があります。
これは色覚異常者や高齢者だけでなく、すべてのユーザーに対して負担を強いるのを理解しつつ、見た目を優先したという明確な意志が感じ取れるデザインです。
デザイナーとして非常に不快な気分になりました。
Instagramでは好評
Twitterでは不評だがインスタでは好評という意見もありますが、実際にインスタではTwitterと比較できるほどバズってはいません。
またこうした批判的なバズりはローソンの期待するものではなかったでしょうから、バズったのでOKという考え方はデザイナーとしては「なし」だと思います。
無印良品との提携
つい先日、ローソンと無印良品との提携が報道されました。
デザインの簡略化はその布石だったのではという意見も見かけますが、無印良品の食品コーナーを見た事はありますか?
間違えて別の商品を買ってしまうデザインにはなっていませんね。
デザインはただ真似たりシンプルにするだけではなく、その意図を理解した上で落とし込む必要があります。
まとめ
あれほど大きな企業の大きな決断です。もちろん様々な意見が出るのはある程度覚悟の上で行ったプロジェクトでしょう。
そしてこれほど大きなデザイン変更というのはあまり例がなく、挑戦する姿勢は企業として素晴らしいですし担当したデザイナーは挑戦しがいのある仕事だとも感じたはずです。
ただし、最初にも挙げたようにコンビニはすでに社会インフラとして機能しており、色覚異常者や高齢者といった社会的弱者の存在にも目を向ける必要があります。
ユーザーの意見を真摯に受け止め、ローソンとしての個性を保ちつつデザインがより良い形にブラッシュアップされていくのを期待しています。