映画名探偵コナンのオープニングがミニマリズムの極地だと思った話。
今年の劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』が、興行収入120億円を突破したそうだ。
そんなコナン映画を毎年観ていて思うのだが、冒頭のオープニングで毎回「俺は高校生探偵工藤新一…」と始まるいつもよ作品紹介があるのだが、
これが無駄なモノが一切無くミニマリズムの極地に達しているなと思ったので紹介と解説をしていきたい。
映画によって時間に多少差はあるが、わずか1分程度で作品の概要を説明し、『コナン映画を初めて観にきた人にも世界観が分かるように説明する』というのがすごい技術だなと思う。
コナン映画を観に来るのは作品を知っている人だけでは無い。子どもの親だったり、友達だったり、原作は良く知らないけど映画だけは観に来る人だったり。
そういった人たちに簡潔に作品の説明ができるからこそ、コナン作品を知らない層にもアプローチができ、最近年々興行収入を上げている1つの要因なのではないか、と考えた。
20年以上映画をやっていて、冒頭の作品紹介は全く変わっていないというのも、洗練された文章だからこそ変える必要がない、美しさを感じる。
そんな冒頭の作品紹介を少し細かく紹介、解説してみた。↓
まずは自己紹介。高校生探偵、と1単語で自分の身分というか、職業を説明しているのが一切無駄が無くて凄い。ここで『高校生でありながら、探偵業もやっていて…』なんてやっている暇はないのだろう。
ここにも情報が詰まっている。
まず前半部分。『幼馴染で同級生の』というセリフから、小さい頃からずっと一緒で、しかも異性。それが遊園地へ遊びに行くというのだから、まぁ大体両想いか付き合ってるくらいの関係やなというのがこのセリフだけで大体想像がつく、というか説明しきってるのが凄い。
そして後半。ここで作品の敵キャラの紹介が入る。ここでも余計な説明は一切せず、『黒ずくめ』『怪しげな取引』という単語だけで細かく説明しなくても大体コイツらが敵キャラなんやなって分かるのが凄い。
というかここまで最初の2文までで主人公とその恋人、更に敵キャラまで説明しきってるのエグくないか??本当に一切の無駄が無い。
そして次。
そしてここから工藤新一が何故やられてしまったのか?の説明に移る。セリフは最小限にとどめ、映像でジンが背後から新一を殴るシーンを見せることで状況を説明している。無駄が無い。
そしてここでタイトル回収というか、どのようにして江戸川コナン(=工藤新一)が生まれたのか、という説明に入る。
当たり前にコナンを観ている人にとっては中々気付きにくいかもしれないが、私自身も小学生でコナンの映画を初めて観に行った時、(原作未読)
あれ?なんでコナン君が主役じゃないの?工藤新一って誰??
って感じたのをうっすら覚えている。
そして、このシーンでその疑問が解けた訳だ。
毒薬で身体が縮んだから、工藤新一=江戸川コナンなんだな、と。
「身体が縮んでしまっていた」で声優さんが変わるのも、聞き慣れすぎているが分かりやすい演出で凄い。
コナンは自分の正体が工藤新一だとバレないようにしている理由の説明。コナンの中ではちょいちょい自分の正体がバレかけて、(特に蘭の前で)慌てるというシーンがあるのだが、それがなんでなのかを理解してもらうための説明。
(最近は赤井さんやら安室さんやら本当に正体隠す気あるのか??というのは一旦スルーさせて下さい。)
ここで、お待たせ「江戸川コナン」の誕生です。
ここもセリフは最小限に抑えられ、映像で「江戸川乱歩」と「コナン・ドイル」を見せることで、あ、ここから取ったんやなというのが伝わるようにできている。
そしてこれで小五郎、蘭、コナンの3人で生活しているいつもの日常パートまで辿り着いた。(この後は映画によって少し変わる)
何気にこの一文で蘭の父親=小五郎の説明も大体できている。普通に考えたら幼馴染とはいえ好きな女の子の家に住み込むというのはどう見てもヤバい状況なのだが、黒ずくめを倒さなければならないことと、父親が探偵であることが、好きな女の子の家に住み込む合理的な理由になっているんですよという説明にもなっていて、何度でも言うがやはり無駄が無い。
何よりここまで大体1分なのが凄い。
余談だが去年SPY×FAMILYの映画を見に行った時に、同じように冒頭で主要キャラとその関係性、行動する動機の説明パートと思われる部分(恐らく作品を良く知らない保護者や連れの人向け)があったのだが、少し長いなーと思ってしまった。
いや、多分あれでも大分削っているのだと思うが、コナンの説明がそれだけ無駄が無くて美しいということなんだな、と思った。
そして最後はいつもの決め台詞を言って終わりとなる。
小さくなっても頭脳は同じ。
迷宮無しの名探偵。
真実は,いつも一つ!!
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?