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隅田川を見ながら一人で泣く日があってもいい

こんなはずじゃ、なかった。オフィスビルを出て空が暗くなるまで、隅田川を見ながら泣いていた。

「営業兼販売員」という肩書き

3か月間の新入社員研修を終えて出た辞令は、憧れのコレクションブランド、の営業「兼販売員」だった。内定時の採用職種は営業職だったけど、「店頭経験が大事だから」ということだった(実際は人出不足の穴埋めもあったと思う)。

同期がみんな営業の仕事の難しさに悩む中、私は営業も販売も中途半端な自分の立ち位置に悩んでいた。週の半分は店頭販売で、残り半分は本社での営業。どちらの仕事も全然できなかったけど、どこから手を付ければいいのか、どうしたらいいのか分からなかった。

会社の営業会議で、自分が店頭に立っていた日の売上げ0(ゼロ)報告をすることは苦しかった。原因も、店頭に来店する人の状況報告も、改善策も、自分起点で自分のせいで自分の役割。全ての言葉が重くのしかかる。

店頭では、せめて掃除をと鏡を拭けば汚くて拭き直され、コミュニケーションを取ろうとスタッフに話し掛ければ話し声がうるさいと注意される。完全にお荷物となり、ついには仕事仲間に「もう一緒に働きたくない」と言われた。

週5でやっても大変なことを、それぞれ週2とか3の半分の時間でマスターできるわけないじゃん。しかも一年目、覚えることは山のようにある。社会人としての会社内のマナー、商業施設の従業員通用口から店までの迷路のようなルート、原価と売価とセール価格の関係、在庫問題……。

何かをうまくやろうとしては、何もできない自分がいた。やれば「やり方が違う」と言われ、やらなければ「自分で考えて動け」と言われ、どうしたらいいかわからない。

会社なんて、いつどうなるか誰にも分からない

そうか、辛かったね。ちょっと先の話をすると、今あなたは上司にも同期にも理解されないで孤独かも知れない。けどその担当ブランド、もうすぐなくなっちゃうんだ。それどころか、100社以上の面接を受けてようやく入ったその会社も、一年足らずで潰れてしまう。

残念ながらあなたの仕事人生は、世間から見ると『中の下』だと思う。なぜかあんまりうまくいかない。カオスも、絶望も感じる。給与を始め、頑張っても報われないこと、どうしようもできないことも世の中にはある。

でも、だからこそ寄り道のようにたまーにとびっきりのいいこともある。ずっと憧れていた著名人に仕事を褒めてもらえたり、新しい商業施設を関係者枠で一足先に体験したり、どの会社でも上司運だけは割かし良かったり。

普通のサラリーマン人生と比べると波乱万丈な分、ピンチをチャンスに変える度胸は付く。不向きな仕事が多いけど、向いている仕事ではちゃんと力を発揮する。

ヤケ酒を飲んで居酒屋でグチグチと管を巻くんじゃなくて、どうせならやり切ったと達成感溢れるお酒を飲めるような仕事をしよう。何か起こったときは、楽しい、好きだと思える方へ少しずつ近付いていけばいいと思うよ。私はそう思う。

世界は広がるし、その涙は無駄じゃない

ねぇ、隅田川を見て一人泣いている、社会人1年目の私みたいな君へ。働き続ける限り、「誰にも自分の気持ちなんて理解ってもらえない」という孤独はきっと埋まらないと思う。だけど周りの誰もがそうで、みんなもがき、苦しみ、現実と折り合いを付けながら自分の孤独と日々向き合って働いている。

2019年、紆余曲折の果てに何も持たない状態でフリーランスを始めた私は、働き方はすごく自由だと思う。一年目は一度しか来ないから、どうしても気負ってあれも、これも、と前のめりに頑張りがちだけれど、社会人人生は止めない限り、その先も続く。

私だけじゃない。周りの友達だけでも、大企業を辞めてベンチャーに入社する人、仕事をしないで休止期間を経験する人、日本を飛び出す人、起業する人、畑違いの仕事に就く人がいる。社会人も長年やれば、自分の居場所が見つかって色々あるものだ。

今流している涙は、無駄じゃない。だから感じた違和感を、ぼんやり浮かぶ不安を、誰にも理解されない悔しさを、不条理な社会への怒りを、押さえつけず、抱え込まず、ただひっそりと覚えていてほしい。その気持ちは、社会人としての大切な基礎となる。働き続けて形こそ変わるかも知れないけれど、その感情はあなたの仕事への指針となる。

そうそう、もう一ついいことを教えておくね。流した辛い涙は、自分の仕事で「ありがとう」というお礼になって返ってくる。仕事のミスは、いつか誰かに別の仕事で返せる日がくる。嘘みたいだけど、本当だよ。

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秋元沙織
サポートは、私がこれからもおごり高ぶらず、普通の人の視点を持ち続けるための活動費に充てたいと考えています。