『冷めた串銀杏』
舞神光泰
居酒屋には様々な客がひしめいている、男達は笑い合い酒を飲み交わし、若者はスマホを見せ合い楽しみを共有する。年長者は思い出話に花を咲かせ、辛い事があった人には励ましの言葉を贈っている。どこにでもあるような光景の中で、ただ1つ銀杏だけは皿の上でポツンとつまらなさそうにしていた。
銀杏はヒマで仕方がなかったので客を見ていた。鍋を看板にしている居酒屋で、机に置かれて30分は経っているから、おそらく存在すら忘れられているだろう。出された瞬間が一番の旬だから、銀杏はやる気と旨味を失