見出し画像

30年継続できる事業をつくる、そのために必要なものとは。

時代の変化、新技術の台頭、予測できない世界情勢。未来が予測できた時代などこれまで一度もありませんでしたが、それでも、現代社会の変化のスピード、そして、予測の難しさは、異常にすら感じてしまいます。

この先どのように事業を展開していけばいいのか。この課題は、すべての企業が抱えているものでしょう。それは企業の大小にも、事業内容にも関わらず。

そんな混沌とした時代の中、大阪のとある企業が未来への新しい挑戦に、それも30年先を見据えた挑戦に、いままさに取り組んでいます。創業100年を迎える大阪の老舗電気機器メーカーの、未来への挑戦がどのように進んでいったのか、それは、いま未来を見据えて挑戦しようとしている多くの企業にとっても、勇気になるものです。

今回お話を伺ってきたのは、大阪市鶴見区に本社を構える株式会社oneAという会社です。現在は、アミューズメント機器の製造を主力事業としている電気機器メーカーです。

そして、今回の新しい挑戦というのがヘルスケア機器。パチンコなどの周辺機器を開発・製造している会社がなぜヘルスケアを? その秘密を、ウェルネス事業部・開発担当の大越さんに聞いてきました。



30年サイクルで発明を生み出せ

株式会社oneAが誕生したのはいまから100年前、大正12年のことでした。日本で初めてアルミファンを扇風機に採用した朝日電工所がその前身となります。

この扇風機を皮切りに、次々と新しい製品を、開発、製造していきます。アルミファンの扇風機、映写機、撮影機、緊急車両などに取り付けられているモーターサイレン、ジューサー、ミキサーなどなど。

そこから、パナソニックの前身である松下電器の下請けメーカーとして活躍する時代、そして、産業機器やアミューズメント機器の開発製造をする時代と、株式会社oneAは、時代の荒波を乗り越えながら、事業を成長させ続けていきます。

この経験から、30年サイクル説というものが持論としてあるそうです。それは、回転・モーターを使った製品を軸とした創業からの30年、松下電器の下請けとして高度経済成長の波に乗った30年、産業機械やアミューズメント機器など新しいニーズに応え続けた30年。このように、振り返ってみると、およそ30年ごとに主力事業が変化してきたのです。

そんなoneAにとっての課題は、この次の30年を託す製品の開発でした。この途方もない難題に取り組んだのが、当時はアミューズメント機器の開発を担当していた大越さんでした。

指示された内容は、とてもシンプル。「次の30年を担える新しい事業をつくれ、分野は問わない」


手探りの日々と一筋の光

この指示を受けた大越さんは、一体どうしたらいいのだろう、と頭を抱えてしまいます。というのも、新規事業の開発などこれまでやったことがなく、とりあえず、インターネットで調べてみるものの、手に入る情報はあやふやなものばかり。

どうしたらいいのだろうと悩みながら出した結論が、自分の足で情報を手に入れようというものでした。

今後の30年を担えるというところから、サービス業や飲食業、介護業界など、可能性のあるところを絞り込んでいきます。そして、そこからは、知り合いのつてなどを頼りながら、実際に現場を訪問することにしたのです。

介護施設を訪れては、何か困ったことがないか、電気機器で介護施設の課題を解決できないか。本当に泥臭く、地道なところからはじめて行ったのでした。

そんな手探りの日々の中、大越さんにある出会いが訪れます。それは、oneAを退職したのちに、KONAMIスポーツの社長を経て、大阪電気通信大学の教授へと転身し、その後学長(現在は理事長)にまでなった大石先生という方です。

新規事業での調査に難航していると相談したところ、大学との共同研究のような形で、考えてみたらどうだろうかという提案を受けることができたのです。

この話を受けて、おぼろげにしか見えなかった新規事業がだんだんと形を成していくことになります。


新規事業は、睡眠サポートへ

大石先生との話と前後して、新規事業はヘルスケア、それも睡眠に関するものという方向性へと進みはじめました。

それを後押ししてくれたのが、大石先生との出会いであり、また当時見つけたある研究結果でした。それは、日本で2000万人がいびきをかいており、そのうちの300万人ほどが無呼吸症候群であるというものでした。

意外と知られていない、もしくは気づいていない人が多いかもしれませんが、睡眠という分野はまだまだ課題が山積みだということを発見したのです。この睡眠の課題を解消するために、新規事業が役に立つのではないかと考えるようになったのです。

これを形にするために、株式会社oneAと大阪電気通信大学との共同研究がスタートしました。

この共同研究の狙いが、睡眠時の呼吸音を分析することで、その人が呼吸レスの状態なのか、いびきをかいているのか、もしくは、正常な睡眠なのかを判断しようというものです。

仕組みはとてもシンプルです。首のところにマイクのついたネックバンドを装着します。すると、マイクが寝ている間の呼吸音を収集しながら分析をしてくれます。その音の種類によって、正常、いびき、呼吸レスの3つのどの状態かを判断できるというものです。

この呼吸音を分析できるアルゴリズムをもとに開発されたのが、睡眠サポートのウェアラブルデバイス「Sleeim(スリーム)」です。


Sleeim 2021年モデル


快眠サポート「Sleeim」のすごさ

このSleeimに求められるのは、アルゴリズムの正確さもさることながら、つけていても気にならないつけ心地というものも重視されました。

正確なデータを取るためには、マイクが動かないようにしなければいけないのですが、その一方で強く締めたり、固くしてしまうと睡眠をサポートするどころか妨げることになってしまいます。

「Sleeim」使用イメージ

マイクを正確な位置に当て続ける精巧さと、付けているのが気にならない心地よさ。この全く正反対のものを両立させるために、大越さんは、部品選び、機構の変更など、何度も試作品を作りながら、徐々に現在の形へと近づいていきました。

このような試行錯誤を繰り返しながら、思えば、30年先を見据えた新規事業を作れという指示を受けてから、およそ5年半の時を経て、2020年10月「Sleeim」はついに商品化にたどり着きました。

この商品化という1つのゴールを達成した後も、大越さんはその手を休めることなく、より使い勝手の良い「Sleeim」を求めて、すでにハード・ソフトともに3度のバージョンアップを行なっています。


もっと睡眠をサポートしたい

現在、Sleeimのアプリには、34万回以上の睡眠データが集まっています。言い換えるならば、34万以上の睡眠をサポートしてきたということです。しかし、まだまだやらなければいけないことがあると考えています。

それは、より広い意味での睡眠のサポートです。

現在はまだ呼吸レスやいびきの睡眠データしか取れていませんが、睡眠の課題はそれだけではないはずです。よりたくさんの、より多様な睡眠のサポートを実現するためにも、大越さんはこの次を、「Sleeim2(仮)」を見据えています。

その具体的な形はまだありませんが、この絶え間ない挑戦が、株式会社oneAの30年先を支えることは間違いなさそうです。


中小企業が変われば、日本が変わる。その思いをもとに、今まさに変わろうとしている、新しい挑戦に取り組んでいる、チャレンジしている中小企業をご紹介しました。

株式会社oneAのSleeimが、あなたの明日の睡眠を変えるかもしれません。
それでは、次回のnoteもお楽しみに。




株式会社oneAのSleeimは、睡眠状態測定装置として、特許を取得しています。
■特許番号:第7222509号
■特許登録日:2023年2月7日
■発明の名称:睡眠状態測定装置
■特許権者:株式会社oneA