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子どもの嘘① 幼児はいつから嘘をつく?

犬や猫は嘘をつきませんが(多分つきませんよね?)それは彼らが正直だからというよりも、嘘をつくほどの知能がないからです。嘘をつくには、本当のことを言うと都合が悪いと言うことを理解し、偽のストーリーをつくりあげ、演技までしないといけないわけですからそれなりに高度な技術が必要です。

では、人間はいつ頃から嘘をつく能力が身に付くのでしょうか?今回は、マシュマロ実験にも似た、おもちゃを使った実験を紹介します。

実験

  • 2~3才の子ども65人を対象に、おもちゃ当てクイズを行う

(子どもの後ろ側におもちゃを置き、声でどんなおもちゃか当てる)
例)アヒルのぬいぐるみ、ヒント:ぐわっぐわっ

  • クイズを2回行ったあと、実験者は1分間、子どもに背中を向けて、部屋の隅にあるおもちゃ箱でおもちゃを探すフリをする

  • 実験者は「私が探し物をしている間に、うしろのおもちゃを覗き見してはいけないよ」と指示する(その間別の実験者がカメラで幼児を観察する)

  • 戻ってきた実験者が子どもに「おもちゃを見た?」と聞く

  • おもちゃを見たのに「見ていない」と嘘をついた子どもには追加で「おもちゃはなんだと思う?」と質問する



結果

  • 2~3歳の子ども65人を対象に、実験者が見ていない間におもちゃ当てクイズの答えを見ないように指示したところ、大多数(80%)の子どもが指示を守れず、クイズの答えをのぞき見した。そして「おもちゃを見た?」と質問すると、指示を守れなかった子どもの半数弱(40%)が「見ていない」と嘘をついた

  • 年齢が上がるにつれて、嘘をつく割合が増加した

  • 但し、嘘を維持する能力を評価する追加の質問を受けた際、嘘をついた多くの子ども(76%)が嘘を隠し通すことに失敗し、おもちゃの正体を知らないふりをすることができなかった

  • 年齢の影響をコントロールした後でも、子どもの実行機能(executive functioning)の能力が嘘をつく傾向を有意に予測することが示された

分析手法

観察実験

編集後記

道徳的に良いかどうかは別にして、こんな小さい頃から嘘をつくことができる人間の能力ってすごいですね。しかし実際の子育てでは感心している場合ではありません。子どもに嘘をつかれた時、保護者や教師はどのように接したらよいのでしょうか?

また「早く寝ないとオバケが来るよ」「いい子にしてるとサンタさんが来てくれるよ」など案外大人も子育てに嘘を使うことがあります。このような大人の嘘は子どもにどんな影響を与えるのでしょうか?

奥が深い「嘘と子育て問題」。また他にもいくつか論文を紹介しますね。

参考文献

Evans, A. D., & Lee, K. (2013). Emergence of lying in very young children. Developmental Psychology, 49(10), 1958–1963. https://doi.org/10.1037/a0031409

文責

識名由佳
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