この数字はどれぐらい?数字の認知能力の発達
3は1より大きい。5は10より小さい。100は1000より小さい。言わずもがなですね。では、1は3より「どれぐらい」大きいでしょうか?5と10は?この文章を読んでいる方にとっては、この問いも馬鹿馬鹿しいものに感じるかもしれません。しかし、実はこの問いは子供の発達段階と密接にかかわっている非常に興味深いテーマなんです。今回は、数字の大小を認識する力が幼少期からどのように発達するのかを研究した論文を紹介します。
キーテーマ
算数・認知発達
結論
数字の大小を判断する能力は子供の成長過程の中で発達していく。
発達初期の段階では、「対数型モデル」(logarithmic model)、「蓄積型モデル」(accumulator model)等、あらゆるモデルを元に数字の大小が認知されている。
成長が進むにつれ、より適切な「数直線型モデル」を元に数字の大小を判断できるようになっていく。
実験デザイン
*読みやすさのために複数の実験結果を要約しています。
正確な実験デザインが気になる方は本文をご参照ください
小学校2年生・4年生・6年生、及び大学生を32人ずつ集め、それぞれ以下の二つの課題に取り組ませた。
①数値設置タスク
与えられた数直線における、提示された数字の適切な場所を答える。
②数値予想タスク
与えられた数直線上の空白に対応した適切な数字を答える。
人によって異なった上限の数直線(0-100、もしくは0-1000)が与えられた。
結果、幼い生徒(特に2年生・4年生)ほど対数型モデル・蓄積型モデルをベースとした回答の傾向が見られた。
この傾向は0-1000の数直線を与えられた生徒群においてより強く見られた。
誤答理由のイメージ:
留意点
米国で行われた研究になります。基礎教育の水準等により、国家間で結果が異なる可能性が考えられます。
エビデンスレベル:実験研究
編集後記
数字が等間隔で並んでいるということは大人になった今では当たり前に思えますが、成長に伴って身に着けていく感覚なのですね。
文責:山根 寛
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過去記事のまとめはこちらから。
Siegler, R. S., & Booth, J. L. (2004). Development of Numerical Estimation in Young Children. Child Development, 75(2), 428–444. https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2004.00684.x