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教育エビデンス:教員の自己効力感・性格特性の影響

日本では教員研修のあり方が再検討されていますが、どのようなスキルを育むのかという点が議論の中心となっているようです。
一方で、国内外の研究では、教員が力を発揮するには「自己効力感(※1)」も重要なポイントであると指摘されています。
今回は、教員の「自己効力感」が教員のパフォーマンスや生徒の学力向上へもたらす影響について、「性格特性(※2)」と共に検討したメタアナリシスをご紹介します。

※1 自己効力感:自分がある状況において力を発揮できると信じている状態
※2 性格特性:開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向(Big Five)や外向型・内向型、感覚型・直観型、思考型・感情型、判断型・認知型(MBIT)などをもとにした性格の分類

キーテーマ

教員の自己効力感・性格特性・メタアナリシス

結論

教員の性格特性より自己効力感の方が、教員のパフォーマンスに大きな影響を与える。
教員の自己効力感は生徒の学力にも弱い影響がある。

実験デザイン

43の研究より、教員の自己効力感または性格特性が、教員のパフォーマンスまたは生徒の学力にどのような影響を与えるのかを分析した。

結果

  1. 教員の自己効力感が高いほど、教員のパフォーマンス(生徒・校長・監督者が評価したもの)が向上する(中程度の影響)。

  2. 教員の性格特性も、教員のパフォーマンスを影響を与えているが、影響度合いは自己効力感よりも小さい。

  3. 教員の自己効力感が高いほど、生徒の学力(テストで測定されたもの)も向上するが、影響度合いは教員のパフォーマンスに対するものより小さい。

留意点

「性格特性」に関しては幾つかの特性がまとめて分析されています。そのため、個々の性格特性(e.g. 開放性)で検討すると、異なる結果が得られる可能性があります。
また、「自己効力感」や「性格特性」の定義が研究によって異なることにも留意が必要です。
最後に、英語で書かれた全ての論文が検討対象となっていますが、研究が実施された国は検討されていません。
特定の国に結果を応用する際は上記の点を考慮する必要があるでしょう。

エビデンスレベル:メタアナリシス

編集後記

教員の自己効力感が教員のパフォーマンスや生徒の学力へ与える影響は、小~中程度ということで、一見してあまり大きくはありません。しかし、筆者は、教員が生徒に与える影響は年々積み重なっていく(年度が変わると前年度の影響がゼロになるわけではない)ことを鑑みると、小~中程度の影響でも中長期的には大きな影響になると述べています。

また、仕事環境に関係なく一般化された「性格特性」よりも、仕事環境の影響を受けやすい「自己効力感」の方がパフォーマンスへの正の影響が大きいことを踏まえ、”Teachers are made, not born”(教員は生まれ持って教員なのではなく、成長することで教員となる)とも述べられています。

当論文は教員個人の特性に着目したものですが、自己効力感が高い教員が良い・悪いではなく、教員の自己効力感を高められる環境をどう設計するべきかといった議論に繋げることが重要でしょう。

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過去記事のまとめはこちら

文責:井澤 萌

Klassen, R. M., & Tze, V. M. C. (2014). Teachers’ self-efficacy, personality, and teaching effectiveness: A meta-analysis. Educational Research Review, 12, 59–76. https://doi.org/10.1016/j.edurev.2014.06.001

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