銀河英雄伝説で学んだ組織論
仕事を五年十年二十年と、会社組織で仕事をしていると、
若い頃に読んだ銀河英雄伝説が勉強になると都度都度感じる。
銀英伝?あぁ銀河声優世説っていわれた?なんて反応してくれるのはヲタクだけで、若いアニメファン層は知る由もなかったけれど、最近は藤崎竜先生の漫画が出たり、アニメもリメイクされたりと現代風に刷新されて多少の知名度は増したかもしれない。
それはさておき、身近で感じる銀英伝。
部活の時もそうだったけど、やっぱり
・十年以上先輩がいる
・連綿と受け継がれた歴史や作業の経緯が確固として存在する
・今は良くても五年後十年後の関係も左右する
という点で、社会人になると銀英伝の知識が疑似経験となってはっと気付かされるシーンが増えていく。
どんなことがあるか。5つほど紹介してみる。
○人は組織につかず人につく
○明確な敵対対象がいる時は、人がまとまる
○2人いると真逆。3人いるとその真ん中。人の意見は食い違う
○民主主義はバカを納得させる制度
○組織が大きくなるほど他人の意見が権力を持つ
です。一つずつ説明していくと
○ 人は組織につかず人につく
考えて良い組織、チーム、環境を作れば作るほど、後進は長く所属して活躍してくれる。と思うのは組織の創造主の思い、願うところ。
ただ、残念ながら、人間というのは、誰も知り合いがいない組織に入ったとしても、誰かとの縁で結ばれている。それが採用担当か、経営者か、部署の上長かはわからないが、誰かに「へその緒」が着いている。
そのへそとなるキーマンの成果・不遇・離反などがあると、条件で抑えようと人の心は不思議と離れていく。役立たずだと思っている人が、案外会社の主砲となる人材のメンターだったりキャリア目標だったりするとこの影響は大きい。キルヒアイスやロイエンタールが組織ではなくラインハルトに仕えたように、ヤンウェンリーの役職や立場どうあれ人が追付いしたように、人は組織に属しているようで人に属している。逆に捉えるとだから親愛なる上司がパワハラで離職になったからといって、感情にまかせて離反や逆襲を考えるのは性急である。
○ 明確な敵対対象がいる時は、人がまとまる
「ゴールデンバウム王朝と貴族の体制」「自由惑星同盟」「イゼルローン要塞」と明確な敵対対象がいる時は人の心は揃い易い。扱い易いとも言える。だからさまざまな組織や国家は仮想敵国、ベンチマーク企業を置くことで、社員の対抗意識、より上回るぞという意識に集中させ内部の不満への目をそらす。
逆に大きな目標を達成し、次の目標までの踊り場の時期は要注意。
敵がいない状態になると、内部の課題、改善ポイント(敵)を探すのが、仕事のできるオスの習性。小さな疑惑、憶測からの仮説で身内に敵を見出す。
オーベルシュタインもロイエンタールもそういう動きから。
○2人いると真逆。3人いるとその真ん中。
組織を作っていくとロイエンタールとミッターマイヤーのように気が合う仲間がいる人が出世していくことが多い。相談することでお互いのリソースや欠点を補完・拡張しているから。ただ不思議なことに気の合う人間同士というのは、磁石のように、身近な人間は根本は気が合うが、考え方や大事なもの優先順位が真逆なことが多い。組織のNo.2層が2名いると全く逆の意見になることが多い。スピードと品質、サービスとコスト。攻撃と守り。
元からそうなのか、そうなっていくのかはわからないが根っこが一緒で枝葉が真逆という感じになる。
そして二人が反対なので組織にもう1名追加すると何故か不思議三者三様になる。
○民主主義はバカを納得させる制度
銀英伝のテーマの一つが、一人の優秀なリーダーが率いる専制政治が優秀か、多くの人の意見が反映される民主主義が優秀か、というもの。
専制政治は、ややパワハラ気味になるが、スピードや推進力に優れるが、優秀なリーダーがどこまで牽引できるか、その成長に着いて行き引き継げる後継者を作り出せるかが課題となる。リーダーが愚かだと生産性も効率も落ち、無駄や不公平ということが起こる。民主主義は多くの意見を取り入れて一人の暴走での変化を防ぐ、平和な決定機関と感じるが、実質は判断の正誤にかかわらず、人数が多い意見に流されていく。なので民主主義は投票権を持つものが勉強していかないといけないのだが、「わかり易い」説明をする人間の意見に流されていくのが自由惑星同盟の状態だ。
2:6:2 の6割が賢者であるかバカであるか。そこがネックとなる。
チームで投票制、合議制を利用するか、責任と権利という観点でリーダーの決定にしたがっていくか、どちらを選んでいくかという問題が常につきまとう。
○組織が大きくなるほど他人の意見が権力を持つ
組織は一人の人間が見える範囲というのが限られる。小学校のクラスがそうであるように、目的やカリキュラムがしっかりしていても教師が見える範囲というのは、30名あたりが限界。実質深く接すると3〜5が限界。
組織の構成員の数がここを超えてくると、サブリーダーをつくっていくことになる。単純に5人組制で5の倍数でいうと5名25名125名625名と増えていく。125名の組織になると、圧倒的にTOPが見えない範囲が増えてくる。そこで聞かれるのが25名のサブリーダーの意見だ。
まだ末端は、サブリーダーが直接見る意見やプロセスも確認できるので実力主義として明確にしていける。ただ、サブリーダーの査定というのは、行動の中身よりも「結果+評判」を中心に判断される。ここの評判がいいか悪いか。管理職になると人の査定は好き嫌いが6割、部長以上だと8割と言われるのがここの部分。
そのサブリーダーが抜けていくとその下の評判が削られるということ。
そして組織内の作業や調整役に光があたらず、縁の下の力持ちより、目立つ動きが頭角を表す。声の大きいサブリーダの下にいるかその逆か。
そんなに、仕組みがあろうとも、査定は、人の力の限界があり、人数が増えると他人の噂が評価や承認の大きなファクターとなっていく。
無理やり紐づけ?かもしれませんが、感情の動物人間を、理性や理屈だけでまとめていくというのは、難しいということなのかもしれません。
これは後世の学者が評価するところです。