福井聖地巡り旅行2021【1日目】
そうだ、一乗谷へ行こう
「一乗谷に行け」「オススメだから」「とにかく行け」
ドラマや映画、マンガに小説などなど…戦国時代モノに触れるようになってから一乗谷のことがずっと気になっていた。福井在住or出身の方々から何度もオススメされていたのだ。何がどういいか、というのは具体的に説明されないのだが、とにかくいい所らしい。ただ、当時の私は一乗谷を治めていた朝倉氏に関する知識が無く、写真だけ見てもだだっ広い何か…という印象でしかなかった。
ちょうど大河ドラマ『麒麟がくる』で越前朝倉氏にドハマリしたので、これは行くしかない!と、思った矢先にまさかのコロナ禍。いつ行けるのかすらわからない不可能任務となってしまった。人生何があるか分からなすぎる、ノートルダムも焼ける21世紀だもの。
人は抑圧されると逆に燃えてしまうもので、日に日に増していく一乗谷への想い。越前朝倉氏に関しては出版されてる資料も少ないのですぐに読み終わってしまう。飢えが止まらない。そんなゾンビ化していたところでようやく行ける目処が立ち、人間に戻ることができた。
さて、関東から福井に行くのは何通りかある。私がピックアップしたのは以下のルート(バスは体力的に無理でめんご)。
①北陸新幹線で東京~金沢経由でのかちこみ!一向一揆ルート
②東海道新幹線で東京~米原経由での退却!刀禰坂ルート
③空路で羽田~小松経由での突撃!一向一揆ルート
予算を抑えるべく行きは割引で取れた①、帰りは③を選択。JR+ホテルのセットプランによっては②が一番安いことも記しておく。どれも片道3~4時間はかかるのでなかなかの道のりである。
かちこみ!一向一揆ルートで東京~金沢~福井
「一乗谷に行くんだ、絶対に死ねない」、と地獄のようなコロナのワクチン副作用にも耐え、迎えた出立の日。11月初旬・早朝の東京駅、同行のSさんと合流。Sさんはいつも無茶な旅程にも関わらず、この世のでっかいアドベンチャーを共に冒険してくださる女神のような方である。今回もお世話になります。久々の新幹線…コロナのおかげで遠方への旅行もままならない日々だったので、アナウンスも座席もテーブルも何もかしこも愛おしい。
いつもなら上田で降りて「美味だれ焼き鳥ヒャッハー!」とするはずのところを通過、金沢で途中下車し市場で寿司を食べる。金沢は朝倉氏的には宿敵・加賀一向一揆の地でもある。つまりここは敵地、浮かれている場合ではない。だがしかしのどぐろは旨い、マジで旨い。
無節操に選んだSUSHI、そう、私はサーモン大好きオンナである。
金沢でJR北陸本線に乗り換え福井を目指す。日本海沿岸部の走行はトンネルが多い。英国の過激車番組『トップギア』がロケで日本に来た時、毒舌英国60歳児ジェレミー・クラークソンが北陸~長野~関東間のトンネルの多さを皮肉っていたのを思い出す。観光客らしき乗客は途中の温泉地でガンガン降りて行き、福井まで行く人はあまり多くないようだ。目的地の芦原温泉で降車したのはほぼ我々くらいしかいなかった。
我、越前朝倉氏の地に降り立つ
ついに私たちは朝倉氏の領内に踏み込んだ。芦原温泉駅前の謎の恐竜オブジェに突っ込みが止まらないものの、今は石につまずいても嬉しいテンションである。箸が転んでもおかしい年ごろなんてとっくに過ぎてるのに、いや、心だけはいつでもナウでヤングな青春まっしぐらだ。
生きるべきか死ぬべきか、と言い出しそうなオブジェである。
迎えのバスに乗り込み宿へ向かう。20分程度だからすぐ着くよね~と余裕をかましていたが、このバスがどえらいかっ飛ばす。バスの走行距離やスピードが、私の地元の感覚とはかなり違うとしばらくして気づくことになる。同行のSさんが酔ってしまわれないかずっと気になっていた。宿に一旦荷物だけ置いて、日が暮れる前に雄島に向かう。
雄島、推しが見た(であろう)景色
一乗谷にいきなり行く前に挨拶廻り(?)である。やはりかっ飛ばす京福バスに揺られること30分、東尋坊の先にある小さな島を目指す。昭和の風情たっぷりの駐車場から赤い橋がかかり、その先に見えるのが「雄島」。この島には朝倉氏が祈願所と定めた大湊神社があるのだ。間違いなく推しも眺めた日本海の景色。ここまで来ましたよ推し…!
ご覧の通りの素敵な橋、ナウなヤングが映え写真を撮っていた。
荘厳な雰囲気の島内に足を踏み入れ、神社へ続く階段を昇る。気のせいだろうか、背筋がひんやりとする。地元に人にとっては心霊スポットとして有名…なんだとか。この近寄りがたい雰囲気、納得である。
異世界への入り口のような鳥居。
階段はそこそこの段数ェ。
島内の案内板に「朝倉義景」の文字を発見。この地を踏んでから初めて見つけた推しの名前!感じるぞ、推しの息吹を!!
三行目、六文字目から。
境内には海を臨む位置に鳥居があり、そこから東尋坊方面を臨むことができる。逆に東尋坊側から見たらここはお立ち台のようにも見えるのではなかろうか。演劇的にも感じるこの景観、そういえば当時の越前は猿楽が盛んだったとか。大湊神社も信長の手によって焼かれ、のちに再建されるもそれなりの寂れ方をしているが、このドラマチックな景色は今も昔も変わっていないはずだ。
この景色ったら、大湊神社を祈願所に定めた推しのセンスの良さに惚れ惚れする。
神社から臨む日本海、向かいに見えるのが東尋坊。
やや寂しげながら威厳のある本殿。
一周するのに1時間もかからないような小さな島なのに、途中で方向感覚を失い、道に迷って半べそをかきそうになってしまった。マジで怖かった。雲の流れが速く、何度か通り雨に見舞われる。ここは…本当に独特の空気が漂っている…。
荒涼たる風景、不思議と魅了される。
惚れ惚れする柱状節理の美しさ。伏線だが、この周辺にある石(流紋岩の一種・安島石)は一乗谷でも出現する。
街灯も無いので日が暮れると真っ暗になるのだが、それにも関わらず島に向かっていくヤングなカップルを見かけた。気がする。
崖っぷちのアットホーム!夕暮れの東尋坊
雄島からちょっと南へ移動して東尋坊へ。商店街には色褪せた看板と押しの強い蛍光色のディスプレイが乱立し、昭和のまま令和を突き進む観光地である。閑散としており、秋の涼しげな潮風も相まって哀愁が漂う。
コロナ禍ゆえか、シャッターも多い。
このけたたましいディスプレイ、もはやアートの領域である。
2時間ドラマの犯人が自白する場所の代名詞的存在、東尋坊。当然ながらテレビで見るよりもずっと迫力のある崖っぷちである。これは落ちたら死ぬ、と予期不安が押し寄せる。中国人YouTuberらしき人々が際どい崖に立ち、己の勇敢さを見せつける。その勇ましさは足を滑らせたら無謀に変り果てるのでは、と思ってしまう自分は老いたのだろうか。若い頃なら彼らに続いて崖に立ち、アヒル口の上目遣いで己の存在を世界に向かってアピールできただろうか。
圧倒的存在感の岩々、カッコイイ。左奥に見えるのがさきほどの雄島。
ちょうどここで日の入りの時間になったので夕暮れを観測。しっかりと分厚い雲がかかっていたものの、雲間や水平線の隙間から差し込むオレンジ色の光が美しい。
「西の海入日の色も紅に寄来る波や糸崎の浦」
義景さんが棗庄大窪の浜(現福井市三里浜の南部)で大規模な犬追物興行を行った際、ここからちょっと南のほうにある糸崎寺で詠んだ和歌である。こうやって感動した気持ちをサラッと歌に詠めるってオサレ。推しもこの美しい日本海の夕暮れを見たのか、と思うとニヤけてしまう。マスクがあって良かった、とこの旅では何度思ったことだろう。日本海に沈む夕日の見事さは何世紀経っても変わらないのね…。
自〇の名所、と言われている地なので多少身構えてしまったが、人も多くパトロールも巡回しているので、不思議とアットホーム感があった。地元の警察やボランティアが思い悩んでいそうな人には声をかけているらしい、そんな優しい取り組みがあったんですね…。
コロナ憎し!人影まばらな温泉街・あわら
小雨が降る中、京福バスで東尋坊から宿のある芦原温泉へ移動。東尋坊同様にどことなく寂しい雰囲気が漂うものの、コロナ前は賑わっていたのではないか…と、かつての賑わいが陽炎のように見える温泉街である。歴史は意外と浅く、明治ごろに温泉が見つかったんだとか。じゃあ推しは入ってないか~()。
駅近くにオシャレな足湯無料開放があり、地元民らしき方々で賑わっていた。これはうちの地元にも欲しい施設だわ…。
Sさんと旅行に行くときは、私が勝手に旅程を決めてしまうので、ご飯のチョイスはSさんにお願いしている。何よりもSさんは美味しいものを見つける嗅覚が非常に鋭いのだ。
今回も見つけて下さった定食屋さんが素晴らしく、どれを食べても絶品。【福井で食べるものリスト】へしこ・焼き鯖・黒龍をクリア!ガサエビの唐揚げが名物らしいので注文。ちなみに私は軽度のエビカニアレルギー持ち、新鮮なものでないと大量には食べられない。が、そんなアレルギーをも乗り越えるほどの絶品!心地よいサクサク感、絶妙な塩加減、最強じゃん~!?アルコールがすすむやつ~!その割にあまり飲めなくてサーセン!
シンプルながらどれもひとつひとつ美味しい。
画像を見るだけで涎が出ますわい。
お店の女将さんは一見ぶっきらぼうに見えて、細かく気を遣ってくださる。あくまで個人的な意見だが、シャイで壁があると見せかけて、実はフレンドリーという接客スタイルが福井では多い気がする。話していると少しずつ心を開いてくれる。
宿へ向かう帰路、Sさんと「一乗谷では天の川が見えるんですってね」と話していたところ…雨上がりの空に一筋の明かりが。「今あそこを流れ星が!」「ええ~!」と焦っていると、さらに明るく追い流れ星。目の錯覚か、信号が反射したのか、と半信半疑になってしまったが、Sさんも間違いなく見たと仰るので夢では無い。この地に歓迎されているのだろうか、あまりに素敵な偶然じゃないか、福井に胸キュンが止まらない。忘れられない夜空をありがとう。
とはいえ…果たして一乗谷で天の川を見ることができるだろうか…。
…そして興奮の一日目の夜は更ける。
【怒涛の二日目へ続く】
帰りのバスの車窓から取った日が暮れた後の雄島。ここは再訪したい。