イングランドに勝つにはどう戦う?
イングランド戦は今日の深夜に迫った。試合前にポイントをいくつか書いておこう。
これまで、ブレイブブロッサムズとイングランドは双方とも1試合ずつ。ブレイブブロッサムズはチリと戦い、42-12で快勝。前半はやや堅さからかややミスも目立ったものの、立て直して6トライ。イングランドはアルゼンチンと戦い、27-10でこちらも快勝。ただしノートライで、得点のすべてがペナルティゴールかドロップゴールという、最近ではあまり見ない形の試合だった。
アルゼンチン戦のイングランドは?
第1戦のイングランドは、前半3分にレッドカードによる退場者を出し、試合のほとんどを1人少ない形で戦わなければならなくなったため、キック中心の非常に手堅い試合運びだった。
自分の気づいた点は以下の3つ。
1.スクラムが強い
アルゼンチンも伝統的にスクラムが強い国だが、イングランドがスクラムでは明らかに優位に立っていた。イングランドボールのスクラムになってしまうと、結局ペナルティになってしまうことが多く、アルゼンチン苦戦の大きな理由になった。
2.アルゼンチンのハンドリングエラー
イングランドのノートライに対し、アルゼンチンは1トライ。ただし後半39分の試合終了間際でのことだった。1人少ない相手にこれは厳しい結末。イングランドが積極的にジャッカルを狙ってきたこともあって、ブレイクダウンでボールを失うこともしばしば。
さらに、連続攻撃の最中にアルゼンチンのハンドリングエラーが多く出ていた。ハンドリングエラー(ノックオンなど)をすると、相手ボールのスクラムからのリスタートとなる。そしてスクラムで劣勢のため、相手ボールのスクラムは高い確率で相手のペナルティとなる。こうなってしまうと、戦いは厳しい。
3.フォードのキック
イングランドのスタンドオフ、フォードのキックについては言われ尽くされているので省略。ハーフラインからでもドロップゴールを、正面だったら自陣からでもペナルティゴールを狙えるというのは大きかった。
ただ、特に前半はイングランドも積極的にボールを動かす局面もあり、フォードのキック頼りではなかったことは指摘しておきたい。
とにもかくにもスクラム
既にメンバーは発表されている。
イングランドと戦う上ではスクラムの安定は死活問題。2019年大会の南アフリカ戦では、後半になってスクラムで圧倒され、相手ボールのスクラムではほぼ確実にペナルティを取られ、ペナルティゴールで小刻みに点差を離されていった。その轍を踏んではならない。
相手ボールのスクラムになる状況はいくつかあるが、最も多いのはノックオンだ。全選手が極限まで集中力を高めて、とにもかくにもノックオンを犯さないことが重要。その上で、フォワード陣にはスクラムで死力を尽くしてもらうことになるだろう。2015年に南アフリカに勝ったときには、相手ボールスクラムも極めて少なかった。あの試合の再現を期待したい。
ドロップゴールには発想を変えて対応しよう
2つめの問題はフォードのドロップゴール。アルゼンチン戦では、ハーフラインから決めている。
もちろん、ブレイクダウンで圧力をかけ、きれいにパスができないようにすることが第1だが、やり過ぎて反則を取られるとペナルティゴールで結局3点を失ってしまう。
ここはある種の発想の転換が必要だろう。もちろん、ドロップゴールを防ぐために、フォワードはブレイクダウンで絡み、バックスはチャージを狙って出足の早いディフェンスを仕掛ける必要がある。ただ、ドロップゴールは所詮3点だ。
3点取られて真ん中からのリスタートになる。このリスタートから改めて攻撃をかけられる、というように問題のフレーミングを変えてみてはどうだろう?だとすると重要なのはリスタートからのボールを何とか獲得することということになる。試合ではこの点も注目したい。
キックだけではないイングランド
3つめの問題はイングランドの通常のアタック。アルゼンチン戦でも、ダブルライン、トリプルラインを披露してアルゼンチンディフェンスを突破していく局面があった。そう考えると、決してフォードのキック頼りのチームではない。
特に目を惹いたのは、ナンバーエイトのベン・アール。パスもキックも高いレベルでこなして、ディフェンスを切り崩していく上で大きな役割を果たした。そのベン・アールはブレイブブロッサムズ戦では7番。このあたりを含め、イングランドの攻撃を抑え込んでいけるかどうかというのもポイントになる。
ただ、非常に質の高いテリトリーキックを蹴ってくるのは確か。それをしっかり処理して、我慢すべき時は我慢して陣地を稼いでいくのは必須。そこでもダイレクトタッチのようなミスは命取りになる。ハンドリングと同様、キックでも高い集中力は必須となる。この点では少しマシレワは心配。。。
日本が勝つには?
そう考えていくと、勝つ試合の展開はこんな感じだろう。まず、ハンドリングエラーを犯さない。その上でスクラムを安定させて、イングランドのダブルライン攻撃も前に出るディフェンスで抑え込みながら、いくつかある攻撃のチャンスでトライを取りきる。
そう考えていくと、スタメンが稲垣・堀江・具というのは納得がいく。現時点でスクラム最強のセットにすることで、まず最初のイングランドの攻勢を凌ごうということだろう。第2列、第3列を見ても、まずはスタメンにベストメンバーをそろえるという考え方が見てとれる。
ただ、私はスクラムハーフは齋藤直人ではないかと思っていた。齋藤は早稲田出身。スクラムが劣勢に立たされる戦いになれているからだ。一方、流はキックの技術が高い。テリトリーの取り合いという局面で積極的にキックを使っていくという意図だろう。
興味深いのは13番に長田智希を入れたこと。長田も早稲田出身だが、狭い間合いでのプレースキルが高い選手。パスをもらうとき、タックルを受ける寸前に少し身体をずらすとか、あるいは接触寸前でパスを通すといった、早稲田の伝統的なスキルを継承している選手だ。そのあたりに期待してのことだろうか。
リザーブにはディラン・ライリーが控えているので、80分の出場は考えられない。前半だけなのか、60分くらいの出場なのかはわからないが、とにかくキックオフから完全燃焼して戦ってほしい。
そしてもう1つの「カギ」は暑さだろう。フランスは(も)未だに暑いようだ。日本でプレイしているブレイブブロッサムズの選手たちにとって、暑いことがマイナスになることはない。天気もまた、勝負を決める大事な要素だ。
天気だけではない。イングランドには出場停止状態の選手も多く、万全ではない。つけいる隙はある。まずは試合の立ち上がり。つまらない失点をして相手を楽にしてはいけない。
さて、どんな試合になるのか。2019年大会の南アフリカ戦の悔しさを晴らすことができるか。あと少しでそれがわかる。
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